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習近平が李克強に報復開始。中国「ゾンビ企業」倒産に見る権力闘争

もはや死に体と化しているにもかかわらず、雇用維持の観点から延命が図られてきた中国の「ゾンビ企業」のひとつである国有鉄鋼王手がついに経営破綻しました。メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では、この企業が習近平氏のライバル・李克強氏と深い関わりのある土地の会社であることから、来年秋の中国共産党大会に向けた権力闘争がいよいよ本格化してきたのではと分析、「今後も経済改革や政治改革が相次ぐ」との見方を示しています。

【中国】遼寧省の国有大手企業破綻の裏に権力闘争の本格化

中国の国有特殊鋼大手が経営破綻 債務不履行9回

中国の国有鉄鋼大手である東北特殊鋼集団が、経営破綻しました。これまで9回も債務不履行を繰り返していたため、債権者やサプライヤーから破産処理申請が裁判所に提起され、それが受理されたということです。

東北特殊鋼集団は、いわゆる「ゾンビ企業の代表格で、いつ潰れてもおかしくない状況にありましたが、国有企業ということでさまざまな支援によって生き延びてきました。しかし、今年3月の全人代で政府がゾンビ企業の整理を進めるということを決めたことで、破綻は免れられなかったということです。3月末には、同社のトップが自殺しています。

中国・特殊鋼大手、利息支払えぬ恐れ

さて、注目なのはこの東北特殊鋼集団は、遼寧省大連市の会社であるということです。遼寧省は2004年から李克強が党委書記を務めた地です。先日も、全人代常務委員会が遼寧省選出の代表45人を選挙違反を理由に当選無効だと発表しました。この当選無効となった代表者たちの多くは地元国有企業のトップなどの財界関係者だったといいます。李克強とも交流関係があったとされています。それだけに、このような事件は、暗に李克強の責任を追及することになります。

習近平国家主席VS李克強首相 権力闘争激化 首相「地元」で45人資格剥奪、習氏側近失脚で反撃か

この事件は、先に習近平の側近だった天津市の黄興国党委書記代理が失脚させられたことへの報復だという見方も出ていました。このメルマガでもたびたびお伝えしてきましたが、習近平政権の権力闘争が激化しており、とくに李克強首相の団派(共産主義青年団)との戦いは熾烈化していました。

それだけに、今回の東北特殊鋼集団の破綻も、たんなるゾンビ企業の整理ということではなく、習近平と李克強の権力闘争の結果として見ることもできます。もちろん、中国の鉄鋼は依然として供給過剰で、世界の鉄鋼価格の脅威となっていますから、ゾンビ企業の淘汰で生産調整が進むことは世界にとっても喜ばしいことです。

しかし、これが単なる権力闘争の結果であるならば、今後も国有企業の整理はそれほど進まず、お茶を濁す程度に終わるでしょう。

習近平は新シルクロード構想(一帯一路)とAIIBを、過剰生産のゾンビ企業の起死回生の策としたものの、たとえば鉄鋼などは日米欧などの先進国からダンピングを非難、阻止されて、まったくうまくいっていません。もはや国営企業を潰すしかない段階に来ているわけですが、まずは団派の地盤から行うことで、責任転嫁を狙っているふしもあります。

来年の秋には党大会が開かれ、そこで習近平が自分の思う通りの人事ができるかどうか、つまり権力を完全掌握できるか否かが決まります。現在、とくに中国の最高意思決定機関である党中央政治局常務委員の7人については、現在の江沢民派が引退し、代わりに団派が過半数を占めると見られており、習近平はそれを必死に阻止しようとしているとも言われています。

習近平には支持母体となるような派閥もなく、「操りやすい新米」だからということで、総書記に選ばれた経緯があります。自らを守るために習近平は汚職追放という大義名分で、上海閥を切り崩してきました。権力を一手に牛耳らなければ、中国政界では生き残れなかいからです。

習近平は太子党」(共産党幹部の子弟)とは言われますが、太子党はそれほど結束力が強くありません。権力やカネでつながりのある江沢民派のほうがよほど結束力があります。もちろん、江沢民派の太子党もたくさんいます。

そのために習近平はエリート集団の集まりである団派の協力を得て、江沢民派を攻撃してきたわけですが、胡錦濤派の令計画の逮捕や、共産党内に「小組」(委員会)を乱造して自らそのトップになり、経済問題でも李克強から実権を奪うなど、やりすぎたために、団派まで敵に回すような動きをしたために、かなり団派ともぎくしゃくしています

これから習・李連合がなんとか続くのか、それとも反習近平の江・李連合までいくのか。今後、来年の党大会までに権力闘争としての経済改革や政治改革が相次ぐと見られています。中国はすべてが「政治」です。ですから、今回の国有企業破綻も、さまざまな側面から考察する必要があるのです。

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黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』より一部抜粋

著者/黄文雄
台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!
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