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結局、日本はドゥテルテ大統領と米国のどちらを大切にすべきか?

25日から来日しているフィリピンのドゥテルテ大統領が、米オバマ大統領に暴言を吐き、現在アメリカとフィリピンの関係が急速に悪化していると伝えられています。アメリカがドゥテルテ大統領の行う過激な「麻薬取締法」について意見しようとした事がその発端となったようですが、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さんは、アメリカはフィリピンを非難できるほど「反独裁主義の国」ではないとチクリ。一体どういうことなのでしょうか?

戦略と倫理~日本はドゥテルテ大統領を大切にするべきか?

フィリピンのドゥテルテ大統領、この方、「麻薬撲滅戦争すでに3,700人を殺したと言われています。オバマさんは、彼を嫌悪しているそうで、アメリカとフィリピンの関係は非常に悪化しています。

これをもって、「さすがアメリカは人権を重視する国だ! やはり日本は、人権軽視でダメだ!」という意見もあるそうです。日本は、麻薬売買に絡んでいたとはいえ、裁判せずにいきなり殺してしまうような大統領を大切にすべきなのでしょうか?

「アメリカ=人権重視」は、幻想

オバマさんは、ドゥテルテさんと仲が悪い。これをもって「アメリカは、人権重視の国だ!」。この結論は、少々ナイーブ過ぎます

振り返ってみましょう。アメリカは第2次大戦中、日本、ドイツを倒すために、自国民を大量虐殺した男スターリンのソ連と組みました。戦争が終わると、今度はソ連に対抗するために、かつての敵日本、ドイツ(西ドイツ)を自陣営に引き入れた。それでもソ連に押され気味だったので、1970年代初め、今度は毛沢東の中国と組んだ。毛沢東は、スターリン同様、自国民を大量虐殺したことで知られています。

アメリカは、スターリン、毛沢東という、人類史に残る大量虐殺者と組んだ過去がある

アメリカは、反独裁???

「アメリカは自由と民主主義を重んじる国で、反独裁だ!」と言われます。確かに、アメリカは、イラクの独裁者フセイン、リビアの独裁者カダフィを殺しました。今も、シリアの独裁者アサド政権を崩壊させるために、「反アサド派」への支援をつづけている。

しかし、アメリカがいつも「反独裁」かというとそんなことはありません。既述のように、アメリカは、超独裁者であるスターリンや毛沢東と結託していた。

今も、アメリカの「ダブルスタンダードは変わっていません。例えばアメリカは、「イランは独裁だからダメだ!」といいます。一方で、絶対君主制の独裁国家サウジアラビアを保護している。結局アメリカにとっては、「独裁か? 民主主義か?」より、「親米か?反米か?のほうが重要なのです。

さらに「アメリカの戦略に合致するかしないか?も大事。そういう意味で、「戦略的重要国家」フィリピンのドゥテルテ大統領を遠ざけるオバマさんの「潔癖」な言動は、「アメリカの国益を損なっている」と言えるでしょう。(もちろん、「オバマは売春婦の子」というドゥテルテさんに問題があることは、言うまでもありませんが。ちなみに、先日来日し安倍総理に会った大戦略家ルトワックさんは、BSフジの番組で、オバマのフィリピン政策を批判していました)。

国民は、「内に厳しく、外に優しく」で

日本は、政治家のモラルについて非常に厳しい国です。不倫や金銭問題で失脚する人が後を絶ちません。それは、とてもよいことだろうと思います。しかし、国内と同じ基準で外国と接すれば、付き合える国がなくなってしまいます。日本国民から見ると、

は、倫理的に「どっちもダメでしょ!」と思います。しかし、アメリカとの関係が切れれば、中国が尖閣を奪いに来る。ドゥテルテさんのフィリピンも、対中国で大事。そう考えると、相手国の倫理面より戦略面を優先して、付き合い方を決める必要があることに気が付きます。悲しいことではありますが、日本を守るために仕方ないですね。

 

ロシア政治経済ジャーナル
著者/北野幸伯
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