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客に「感動」をゴリ押しする、呆れた日本企業のカン違い

「おもてなし」というキーワードが広がり、「お客様に感動を与える」をスローガンに掲げる企業も増えてきています。しかし、無料メルマガ『ビジネス真実践』の著者でマーケティング戦略コンサルタントの中久保浩平さんはこうした昨今の「感動ブーム」を一刀両断、そもそも感動は「与えるもの」ではなく「して貰うもの」、ましてや押し付けるなどもってのほか、と断言しています。

感動は与えるものではない

東京オリンピックを4年後に控え、「おもてなし」という文化が1つのキーワードとなり、「お客様に感動を!」「満足を超えるサービスを!」などというスローガンを掲げる企業や店舗が、接客やサービス業を中心に拡がりをみせています。ドンドンとサービスの向上、接客対応のレベルや品質の向上が促進することは非常に素晴らしいことですよね。

ですが一方で、どうも最近それらの言葉だけが1人歩きしているように違和感を覚えたりすることもあります。理由は…、より良いもの、より良いサービスというのは、見渡せばいくらでもあるわけで…言うなれば、横一線に並んでいる。つまり、消費者ニーズの多様化や顧客の本物志向が根付いた昨今、多少の良いモノや良いサービスでは感動できない、そんな状況であるのにも関わらず、わざわざ感動を売りにして、その店の価値を落としてしまうことがあるのです。

たとえば…「お客様に感動していただくことが当店のモットーです」というレストランに出かけたとして、確かに料理はとっても美味しいし、接客も良いとは思うけど「感動」までには至らない。恐らくそんな経験、1度や2度あるのではないでしょうか? だったら、「お客様に感動を!」なんて言わなきゃいいのにってなりませんか。

感動して貰うことの本質をきちんと理解しておかないと、お客様へ期待感を抱かせるだけで終わってしまう、というものになりかねません。

良いもの、良い商品が溢れ、横一線であるならば、他社には負けないさらに良いものを超えるサービスを! なんて事を考えてしまうかも知れませんが、そんなことでは決してお客様は感動しません。結局「感動を与える」という売り手都合の押し付けであり、そのためのテクニックやノウハウをサービスに応用しようとしているだけのことです。

感動とは与えるものでなくして貰うもの」です。ましてや押し付けるものでも煽るものでもありません。

アーティストなら「感動を与える」という売りがいえるかも知れませんが、ビジネスとしての場合「感動を与える」ではなく「感動して貰うが前提でなくてはいけません。もう少しわかりやすく言うと、「お店・会社としては当たり前のおもてなしをしているつもりなのに、なぜだかお客様はいつも感動してくれる」といった感じです。

では、お客さんに感動してもらうにはどうすればよいのか? ってことを思われるかも知れませんがそれを考えるのが、真のビジネスマンでありサービスマンです。そもそも感動とはどういったときにするものなのか? 満足を超えるってどんな状況なら感じるのか? このことを知ることが最も重要です。それらは、決してリッツカールトンやディズニーランドの本から学ぶものではありません(ライバルもやっていますから結局横一線)。また、他社の成功事例を学ぶといっても、そこは詰まるところ、なぞらえたものに依存するだけです。

実は、お客様に感動して貰えるということは、一朝一夕で出来ることではありません。日々のお客様とのコミュニケーションの積み重ねであったり、お客様にとって役立つ情報を常々提供していくことが、思わぬ感動を呼ぶことになるのです。狙ったり、奇をてらったりして「感動させる」なんてことはスグに見抜かれてしまい逆に安っぽくなるだけです。

たとえば、野球やサッカー、なんでもいいですが、スポーツは筋書きの無いドラマだと言われます。そんな筋書きの無いドラマだから、心底感動したり、夢中になります。つまり、思っても見なかったところに感動がある、ってことです。

この「思ってもみなかったという所」がポイントで、日々、お客様とコミュニケーションを取り続けるからこそ、この筋書きの無いドラマを演出する、思っても見なかった、をさりげなく演出することができる、ということです。

たとえば…、何気に月に数回通っている居酒屋のお客さんがいたしとします。「そろそろ顔は覚えてもらったかなぁ~」程度に思っていたら、ある日突然、急に「○○さん、今日はお早いんですね」と名前を言ってもらえる、とか。そんなさり気ないところに感動があったりするもんなんです(すいません、安直過ぎる例え話で)。

要は、無理に何かを付け加えてとか、感動して貰うために新しいことを始めようとかせずとも感動してもらえたり、満足を超えてもらう場面はある、ということです。そのことすらきちんと理解できていないのに感動を与えるとか、感動を売りに…なんてことをやっても無駄なのです。

普段の現場のなかで、あなたが、目の前にいるお客様とコミュニケーションをきちんと取りさり気なく気配り・心配りをするということです。そういったことを常々取り組むからこそ、いざイベントをしたりキャンペーンをしたりすると喜んでもらえるものなのです。

最後にくれぐれも注意して頂きたいことだけお伝えしておきます。

それは、お客様の誕生日。ここぞとばかりに…、お客様にバースデーカードを送ったりする会社やお店がありますが、そのほとんどが「○○様、お誕生日おめでとうございます。尽きましてはこのカードご持参で50%OFFとなります。ご来店、スタッフ一同お待ち申し上げております」的なDMやチラシ。これは、ここぞとばかりに売り込んでいるだけ。そんなものは特典であっても魅力は感じません。そして、感動も何もありません。

本当に感動してもらいたいと思うのであれば、常々のご愛顧いただいている感謝の気持ちと心を込めて書いた「お誕生日おめでとうございます」のバースデーカードを送る。それ以上も以下も無い。まだ、こちらの方がはるかに感動してもらえます。

■今日のまとめ

『感動は「して貰う。」こと』

image by: Shutterstock

 

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