「世界初」と聞くと否が応でもちょっと気になってしまう、それが人間の心理というものですよね。そこに実用性とユニークな売り方があると爆発的に注目を集めることを証明した商品があります。今回の無料メルマガ『MBAが教える企業分析』では、元三洋電機のメンバーで設立された「シリウス」という家電メーカーから発売された世界初の「水洗いクリーナー」をチェック。クラウドファンディングや消臭試験など話題性を高め人気となっているその戦略が紹介されています。
「世界初」のインパクト
世界初の「家庭用掃除機に装着する」水洗いクリーナーで人気の企業を分析します。
● シリウス(元三洋電機のメンバーで設立した家電メーカー)
今回はシリウスの「switle(スイトル)」にフォーカスをあてます
戦略ショートストーリー
ペットを飼育している方をターゲットに「特許取得済の技術」と「開発チーム」に支えらえた「がんこな汚れもしつこいシミも、すっきりキレイになる」などの強みで差別化しています。
家庭用としては世界で初めての水洗いクリーナーヘッドを「クラウドファンディング」や「消臭試験」などのエビデンスなどで話題性を高めることで、認知度を高めています。
分析のポイント
「世界初」のインパクト
掃除機は、ほとんどの家庭に普及している家電です。2台目需要はあるものの、基本的に買い替え需要に応える形ですので、需要に大きな変化はないようです。つまり、限られたパイを取り合うような競争が激しい市場といえるでしょう。
掃除機がほとんどの家庭に普及しているということは「スイトル」にとって大きな意味があります。
日本だけで考えても、平成27年の国勢調査によると5,340万世帯ありまして、半分の世帯が掃除機(サイクロン式などのキャニスタータイプ)を持っているとしても、2,670万世帯が「スイトル」を購入する可能性があるわけです。
ちなみに犬と猫はそれぞれ、国内に1,000万匹近く飼育されているようですから、犬と猫を飼育している方に限っても、相当な数の方がターゲットとなる可能性があるということです。
また、「スイトル」は携帯電話でいうアクセサリーのようなものだと言えそうです。例えば、iPhoneであればiPhoneがなければ、iPhone用のアクセサリーは存在することができないものです。
「スイトル」も掃除機がなければ存在することはできません。ですから、iPhoneのアクセサリーがiPhoneの普及状況に依存するように、スイトルも同じように掃除機の普及状況に依存します。
しかし、スイトルが携帯のアクセサリーと決定的に異なる点はiPhoneのアクセサリーであれば、カバーひとつとっても、様々企業から様々な商品が出ていますから激しい競争にさらされます。一方で、「スイトル」の場合、世界初の商品ですから、競合企業は見当たりませんし、特許で技術が守られていて、簡単には他社が参入できません。
iPhoneに置き換えれば、iPhoneのカバーを一社で独占して販売するようなものです。つまり、「スイトル」の「世界初」は非常に大きな市場において、「独占販売権」を手にしたようなものということです。
掃除機の場合、一人一台というわけにはいきませんが、ほとんどの世帯をカバーするとなると大きなインパクトのあるものだと思います。それだけ可能性のある商品だということです。
このような状況(大きな市場を独占できる可能性がある)は、非常に大きな機会だと言えますし、今後、世界初の商品「スイトル」がこの大きな機会をつかみ、どのような成長を遂げるのか非常に楽しみです。
◆戦略分析
■戦場・競合
- 戦場(顧客視点での自社の事業領域):掃除機用水洗いクリーナーヘッド
- 競合(お客様の選択肢)
雑巾や掃除機などで自分で掃除する
→経験ある方もいると思いますが、カーペットなどのシミをきれいにすることは雑巾や掃除機などでは難しいです。
その他の選択肢は、ハウスクリーニング業者など
→きれいにはしてくれますが、即時対応は難しいです。カップラーメンをカーペットにこぼした時にすぐに頼んで、来てもらうことは現実的ではないですよね。
⇒現状、同じような価値を提供している代替品はないと思われます - 状況:世界初の製品ですので、市場規模はわかりませんが、4/21の発売前の事前受注が5,000台を超えていたそうです。
■強み
1.がんこな汚れもしつこいシミも、すっきりキレイに
- カーペット、畳、マットレスなど従来の掃除機などでは難しかった汚れやしつこいシミなどを部分洗いして、きれいに吸い取ります。
- 水分も固形物も吸い取ります。
2.ニオイや雑菌もきれいに消臭、除菌できます
※同梱されている「除菌水の素」を併用した場合
★上記の強みを支えるコア・コンピタンス
「特許取得済の技術と開発チーム」
- 有限会社川本技術研究所が開発した「アクアサイクロン技術」を搭載(日本・中国・米国特許を取得済み)
- 「スイトル」開発チーム(開発から製造まで完全な日本製)
→企画は「シリウス(三洋電機OBが設立)」、技術発明は「川本研究所」の川本栄一氏、プロダクトデザインは「イクシ─」のCCO小西氏、製造設計は「ユウキ産業」、コンセプト開発・ブランディングは「未来予報」
上記のような「技術」と「開発チーム」が強みを支えています。
■顧客ターゲット
- ペットを飼育している方
- 小さな子どもがいる方
- 介護をされている方
◆戦術分析
■売り物
「掃除機用水洗いクリーナーヘッド 「『Switle(スイトル)』」
- 水を噴射させながら吸い取ることを可能にした新しい掃除用具
→家庭用掃除機に取り付けるだけで、自動的に水を噴射しながら汚れやシミ・ニオイも吸い取る、家庭用としては世界で初めての水洗いクリーナーヘッド - 使用方法
1.スイトルのタンクに水を入れ、自宅の掃除機のホースの先に取り付けます
2.掃除機の電源を入れれば、自動的に「水洗い運転」を開始
3.掃除の後は、カバーを開けて汚水を捨てるだけです(丸ごと水洗いも可能)
■売り値
- 1万9,800円(税抜き)
■売り方
- クラウドファンディング
→2016 年10月に実施したクラウドファンディングでは、募集開始後、一日で目標金額100万円に到達し、終了時には1,160万円を調達 - 臭気判定士築城博士と消臭試験を実施
→アンモニアは消臭率 100%(除菌水を使用の場合)
※除菌水とはスイトルに同梱されている「除菌水の素」を水道水に溶かして生成する弱酸性次亜塩素酸水のこと
■売り場
- 直営ECサイト「シリウスストア」
- カタログハウス 「通販生活」
- 二子玉川 蔦屋家電 等
※売り値や売り物などは調査時の情報です。最新の情報を知りたい場合は、企業HPなどをご確認ください。
image by: シリウス 公式ホームページ