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トランプの顧問で超反日。キッシンジャー氏が掲げる新世界秩序

先日掲載の「裏切られる米国民。弾劾を免れても変わらぬ窮地のトランプ大統領」でも詳しくお伝えしたように、米国内で厳しい立場に置かれるトランプ大統領。無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』によると、そんなトランプ大統領を変わらず支える重要人物のひとりが、政界の大物キッシンジャー氏だとか。メルマガ著者の北野幸伯さんは、同氏が未だに日本を許さない理由と、彼の掲げる「新世界秩序」について記しています。

「トランプの外交顧問」キッシンジャーが目指す新世界秩序とは?

敵の多いトランプさん。しかし、超大物キッシンジャーさんはトランプさんを支持しています。

トランプさんが勝った最大の理由は、「FBIが、大統領選直前にヒラリーのメール問題捜査を再開したこと」とされています。そのとおり。

しかし、その前に「流れを変えた出来事」がありました。そう、2016年5月に、キッシンジャーがトランプに会った。以後、キッシンジャーは、トランプの外交顧問」のような役割をしています。例えば、ごく最近も、トランプに会っています。

<キッシンジャー氏>トランプ氏に外交政策指南

毎日新聞5/11(木)21:44配信

 

【ワシントン高本耕太】トランプ米大統領は10日、キッシンジャー元国務長官とホワイトハウスで会談し、対ロシア政策やシリア情勢など米国が直面する困難な外交問題について意見を交わした。キッシンジャー氏はトランプ政権の外交顧問役とみられており、今月末にイタリアで開かれる主要7カ国首脳会議(G7サミット)への出席や中東諸国歴訪など、トランプ氏の外遊デビューを前に指南した模様だ。

アメリカ政界の怪物キッシンジャー。1923年生まれの93歳(5月27日で94歳に)。1960年代末から70年代前半、米中の和解を主導した(まず大統領補佐官、後国務長官として)。ニクソンの訪中から45年が過ぎ、キッシンジャーは、いまだ現役しかも影響力を保持したまま。彼がロシアにいけば、プーチンが会う。中国にいけば、習近平が会う。すごいことです。私たちも、キッシンジャーを見習って、「生涯現役」で行きたいですね。

ところで、トランプに大きな影響を与えているキッシンジャーさん。彼は、何を考えているのでしょうか? そして、何を目指しているのでしょうか? このことを知っておくことは、非常に重要なことです。なぜなら、キッシンジャーは、トランプに大きな影響を与えている。

今回は、「キッシンジャー自身」に語ってもらいます。テキストは、『キッシンジャー回顧録 中国 上・下』。これ、ホント、驚愕物の事実がバンバン出てきます。世界の裏事情を知りたい方は、是非ご一読ください。

キッシンジャーの「中国愛」は、本物

キッシンジャーとニクソンは、なぜ共産党の一党独裁国家中国と和解したのか? ソ連に対抗するためです。ソ連は60年代非常に強力で、アメリカは押され気味だった。アメリカには、日本や西欧といった強力な同盟国(同盟地域)がある。それでも不安なので、中国と組むことにした。こういう「リアリズム的発想」から、アメリカと中国は60年代末、和解に向かいます。

キッシンジャーは1971年1月、初めて北京に行きました。そして、周恩来首相に会った。感想がものすごいです。

およそ60年間にわたる公人としての生活の中で、私は周恩来よりも人の心をつかんで離さない人物に会ったことはない。

 

彼は小柄で気品があり、聡明な目をした印象的な顔立ちで、相対する人物の心の中の見えない部分をも直感する、けた外れの知性と能力によって他を圧倒した。

まさに、「大絶賛」ですね。キッシンジャーは、「リアリズム的目的」で中国との和解を目指した。それで、北京に行って周恩来に会った。そして、中国の印象は極めて良かったのです。後述しますが、キッシンジャーの「中国愛」は、以後46年間揺らぐことがありません

キッシンジャーは、日本嫌い

日中の首脳が相互訪問呼びかけへ。二階氏の訪中は正解と言えるのか?」でも書きましたが、ニクソンは1972年2月、中国を訪問した。そして、米中和解の大きな一歩を踏み出しました。

日本では、72年7月、田中角栄さんが総理になっています。彼は、同年9月訪中し、「アッ」という間に「日中国交正常化」を成し遂げてしまいます(ちなみに、米中国交正常化は、1979年)。

アメリカを出し抜こうとする田中総理に、キッシンジャーは大激怒。「ジャップは最悪の裏切り者!」と絶叫したことが、明らかになっています。共同通信2006年5月26日から。

「ジャップは最悪の裏切り者」(解禁された米公文書より)
72年にキッシンジャー氏

 

【ワシントン26日共同】ニクソン米大統領の中国訪問など1970年代の米外交政策を主導したキッシンジャー大統領補佐官(後に国務長官)が72年夏、田中角栄首相が訪中して日中国交正常化を図る計画を知り「ジャップ(日本人への蔑称)」との表現を使って日本を「最悪の裏切り者」と非難していたことが、26日までに解禁された米公文書で分かった。

ちなみに、キッシンジャーは、この時の恨みをその後も忘れていなかったようです。アメリカ在住政治アナリスト伊藤貫氏の名著『中国の「核」が世界を制す』に、キッシンジャーと直接会った時の感想が出ています。

キッシンジャーは、日本人に対して鋭い敵意と嫌悪感を抱いている。

キッシンジャーからは不快なものを感じた。彼が、日本人をほとんど生理的に嫌悪・軽蔑していることが感じられたからである。

なにはともあれ、田中総理は、アメリカを出し抜いた。それで、キッシンジャーは激怒していた。私たちは、事実として、「中国を愛し日本を嫌っているキッシンジャーがトランプに大きな影響を与えていること」を知っている必要があります。

キッシンジャーが目指す「新世界秩序」とは?

さて、こんなキッシンジャーは、何を目指しているのでしょうか? 『キッシンジャー回顧録 中国 下』の一番最後は、「大平洋共同体にむけて」となっています。「大平洋共同体」とは、要するに、アメリカと中国で仲良く世界を支配しましょうということです。

周恩来首相と私が秘密訪問を発表するコミュニケで意見の一致をみた時、彼は「これは世界を揺るがすだろう」と言った。40年の時を経て、米国と中国が世界を揺るがすのではなく、世界を構築する努力に一緒に取り組めるようになれば、なんと素晴らしいことだろう。

この「大平洋共同体」、別の言葉で「G2」、中国式にいえば、「新型大国関係」といいます。

習近平がしばしば使っている「新型大国関係」という言葉。これは、キッシンジャーが発案したのですね。世界一の戦略家ルトワックさんの名著『中国4.0』には、

キッシンジャーが売り込んだG2論

とあり、キッシンジャーを厳しく批判しています。皆さんご存知のように、ルトワックさんは、「アメリカはロシアと和解し中国に勝つべし!」という立場。一方、キッシンジャーは、「アメリカと中国が世界を支配する」という立場。

トランプは当初、ルトワック寄りでしたが、徐々にキッシンジャーの影響が強くなっているようです。日本人は、このことをはっきり知っておく必要があります。

今回の話、あまりに「ザックリ」しているので、「あんまり説得力ないな」と思うかもしれません。しかし、メルマガという媒体では、これ以上詳細に書くことは難しいです。「ホントかな~~~」と思われた方は、『キッシンジャー回顧録 中国 上・下』をご一読ください。日本人は、アメリカの日本観、中国観について、

「日本は民主主義国家で、アメリカの忠実な同盟国。中国は、共産党の一党独裁国で、アメリカの敵」

と信じているでしょう? しかし、トランプの外交顧問であるキッシンジャーは、

日本は最悪の裏切り者。絶対信用できない国。中国については、『共同で世界を統治できる国』」

と考えていることがはっきりわかります。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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