MAG2 NEWS MENU

もう後戻りはできない。北朝鮮の挑発で米国は「全面戦争」の構え

おおよそ一般の国であれば、戦争やミサイル発射の是非について「民意」が反映されますが、こちらの記事でもお伝えしたように北朝鮮では一切「民意」を介さず、金正恩氏がすべての決定権を握っていると言われています。その北朝鮮が遂に「グアムに弾道ミサイルを撃つ」と宣言。さらに緊迫度を増した北朝鮮危機について、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者で世界情勢に精通する北野幸伯さんが分析しています。

北朝鮮、「グアムに弾道ミサイルを撃つ!」と宣言

北朝鮮問題が、ものすごいスピードで動いています。まず、簡単に復習を。

北朝鮮問題は、2017年7月から新しい次元に入っています。まず、北は7月4日、初めてICBM実験を成功させた。これは、「ハワイ、アラスカが射程に入る」と言われた。

7月28日、2回目のICBM実験が行われた。今回は、「ニューヨーク、シカゴ、ボストン、ロサンゼルスなどが射程に入った」と言われた。

すでに、アメリカ国民の過半数が朝鮮戦争に賛成。共和党員に限れば、7割が賛成している。

ここまでは、すでにお伝えしました。その後何が起こったのでしょうか?

国連安保理、北朝鮮制裁を強化

まず、ICBM発射を受け、国連安保理は、北朝鮮制裁を強化しました。

国連安保理、北朝鮮制裁決議を採択 石炭や鉄などの輸出を全面禁止

8/6(日)10:35配信

 

【AFP=時事】国連安全保障理事会(UN Security Council)は5日、北朝鮮の石炭や鉄などの輸出を全面的に禁止する米国提案の制裁決議を全会一致で採択した。決議は北朝鮮の石炭、鉄、鉄鉱石、鉛、鉛鉱石、海産物の輸出を例外なく禁止する内容。30億ドル(約3,300億円)と推定される北朝鮮の年間輸出収入の3分の1を減らす効果があるとされている。

北朝鮮は、石炭、鉄、鉄鉱石、鉛、鉛鉱石、海産物の輸出ができなくなる。それで、年間輸出収入が3分の1減るそうです。

今回は、北朝鮮に甘い中国やロシアも支持したのですね。ICBMを発射した後ですから、両国とも国際的孤立を恐れたのでしょう。しかし中国は、条件を出し、ある重要な文言を削除させていました

しかし米国が当初提案し、実現すれば北朝鮮経済に深刻な打撃を与えるとみられていた北朝鮮への原油輸出制限は盛り込まれなかった。
(同上)

北朝鮮は、まだ原油を買うことはできると。

制裁が完全に実施されれば、ミサイルや核兵器の開発を推進する北朝鮮の経済に対する締め付け効果が期待される。
(同上)

「制裁が完全に実施されれば」。そうなんです。北朝鮮の貿易は90%が対中国。この制裁がうまくいくかどうかは、中国の「誠実さ」にかかっています。中国は、誠実でしょうか??? 皆さん、ご存知ですね。

それでも、中国がやる!といってやらなければ今度はアメリカが中国を制裁する理由ができます。「中国がウソをついているせいで、アメリカの安全が脅かされている!」と。

北朝鮮、「グアムに弾道ミサイルを撃つ!」と宣言

北朝鮮は報復に出ます。なんと、「グアムに弾道ミサイルを撃つ!」と宣言した。

米に警告「グアムへ弾道ミサイル検討」…北声明

読売新聞 8/9(水)12:13配信

 

【ソウル=中島健太郎】北朝鮮の朝鮮人民軍戦略軍報道官は8日、「米国に重大な警告信号を送るために中長距離戦略弾道ロケット(ミサイル)『火星12』でグアム島周辺への包囲射撃を断行するための作戦方案を慎重に検討している」とする声明を発表した。朝鮮中央通信が9日に報じた。

グアムは、フィリピンとハワイの間にある火山島。人口は16万3,000人。島の4分の1をアメリカ軍基地が締め、6,000人が配備されています。

アメリカ軍の非常に重要な拠点。北朝鮮は、そこに向けて弾道ミサイルを撃つという。北朝鮮は10日、もっと具体的な情報を出してきました。

北朝鮮、グアム攻撃計画「8月半ばまでに用意」

BBC News 8/10(木)10:48配信

 

北朝鮮の国営・朝鮮中央通信(KCNA)は10日、中距離弾道ミサイル「火星12」4基を米領グアム付近に発射する準備を今月半ばまでに完了すると伝えた。軍幹部は、ミサイルが「日本の島根、広島、高知各県の上空を飛ぶ」ことになると警告したという。

8月中に実施される可能性が高いということですね。

トランプ激怒、全面戦争を警告

当然、トランプは激怒しました。曰く

北朝鮮は、これ以上アメリカを脅さないほうがいい。世界が見たこともないような、炎と激怒で対抗する。(中略)率直にいって、力で対抗する。

これは、「戦争するぞ!」と言っているわけです。気になるのは、これまで戦争に反対してきたマティス国防相の言葉が、はっきりと変化してきたこと。

<米国>北朝鮮に警告「体制崩壊につながる行動考えるな」

毎日新聞 8/10(木)11:17配信

 

【ワシントン会川晴之】マティス米国防長官は9日、北朝鮮に関する声明を発表し、「体制の崩壊や国民の破滅につながるような行動を考えるべきではない」と警告した。

声明は、北朝鮮が弾道ミサイルで米領グアムを攻撃する用意があると表明したことを受けたもの。マティス氏は声明の冒頭で、米国と同盟国は「世界で最も精密で、強力な防衛力と攻撃力を持っている」として、北朝鮮のミサイル攻撃から米国民や同盟国を守る能力を整えていると誇示。さらに「北朝鮮が何をしても米国にはかなわず、軍拡競争や軍事紛争にも勝てないだろう」とけん制した。

慎重だったマティスさんも、「このままでは、開戦に反対できなくなる」と危機感をもっているようです。

また戦争に近づく世界

私は、意識してアメリカのテレビを見ていました。トランプに「フェイクニュース」とバカにされるCNNでさえ、「北朝鮮がグアムを攻撃すると警告した」と、大々的に報じていた。「ずっとこの話ばかり」という感じでした。「米軍は、北朝鮮のどこを空爆するのか?」という話も、ニュースで解説されています。

「北がグアムにミサイルを撃つ」。この報道に接したアメリカ国民は、おそらく「戦争は不可避だ」と考えるでしょう。アメリカは、新世紀に入ってから

をしています。日本人と違って、「戦争慣れしている。つまり、「戦争アレルギー」がない。しかも、今回の場合、「大量破壊兵器がなかったイラクを攻めた」「インチキ戦争」とは違う。北朝鮮は、アメリカにとって「リアルな脅威」である。というわけで、今月の世論調査では、「北朝鮮攻撃支持」がかなり増加することでしょう。トランプは勇気を得て戦争に向かっていきます

対立が激化していく中で、「戦争が始まれば、韓国人が100万人犠牲になる」といった話、アメリカではあまり聞かれなくなってきました。「アメリカ・ファースト」。アメリカが危機にさらされている時に、韓国のことは構っていられないということですね。

誰も戦争を望みませんが、「後戻りできないポイントにアメリカも北朝鮮も向かっているようです。

 

北野幸伯この著者の記事一覧

日本のエリートがこっそり読んでいる秘伝のメルマガ。驚愕の予測的中率に、問合わせが殺到中。わけのわからない世界情勢を、世界一わかりやすく解説しています。まぐまぐ殿堂入り!まぐまぐ大賞2015年・総合大賞一位の実力!

無料メルマガ好評配信中

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ロシア政治経済ジャーナル 』

【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け