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中国から台湾へのサイバー攻撃が5倍に激増。標的は日本の企業にも

2015年、米中首脳会談の翌日にアメリカにサイバー攻撃を仕掛け非難を浴びた中国ですが、現在もその攻撃の手を緩めることはなく、各国政府機関・大企業のみならず個人にまで標的を拡げています。中国の狙いはどこにあるのでしょうか。台湾出身の評論家・黄文雄さんが自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』でその真意を推測するとともに、個人レベルでの情報防衛の必要性を説いています。

【中国】台湾へのサイバー攻撃を激化する中国の時代錯誤

蔡英文政権発足後、台湾を襲うサイバー攻撃の回数激増 中国大陸の仕業か

台湾の最新ニュースを配信している「フォーカス台湾」の記事を以下に引用します。

国家安全局が立法院(国会)に提出した来年度の予算書の統計によると、同局が2016年に受けたサイバー攻撃の回数は63万1,448回だった。特に台湾独立志向を持つ蔡英文政権が同年5月20日に発足した後、激増した。2016年下半期の回数は61万3,789回と上半期で受けた1万7,659回の約35倍に相当。月平均では10万2,298回となり、2015年の1年間で受けた攻撃回数の約5倍に当たる回数だった。

台湾の国家安全局にサイバー攻撃をしているのは、中国ではないかと推測されています。台湾に蔡政権が発足して依頼、中国によるいやがらせは加速しています。人民解放軍機が遠洋訓練でと称して、台湾の防空識別圏に進入してくるのは常態化しているし、国防部(国防省)の「5カ年兵力整備および施政計画報告」によると、人民解放軍は台湾に対し、統合軍事威嚇や統合封鎖作戦、統合火力打撃を行う能力をすでに有しているといいます。

国防部「高度な警戒維持」=中国大陸軍機、台湾の防空識別圏進入で
国防部、中国大陸軍の脅威を指摘「台湾を封鎖、打撃する能力有している」

台湾の蔡政権は、中国が強く要求している「ひとつの中国を認めないことにより、様々な攻撃を受けています。中国からの攻撃は主に三つあって、ひとつは台湾の呼称です。国際社会では「台湾」という名前を使わず、「中華台北」することを強要。ふたつ目は、軍事的圧力です。海軍や空軍による台湾領域内への侵入です。三つ目は、目下更新中のサイバーウォーです。

中国の人民軍のサイバー部隊は、国家機関企業個人のほかにマスメディアも攻撃します。国内での言論統制も、この部隊によるものです。私のジャーナリストの友人は、常に複数のパソコンを持っています。万が一、パソコンが破壊されても困らないための対策だそうです。

中国は台湾の蔡政権を目の敵にしていますが、もはや蔡政権をつぶしても台湾は中国の言いなりにはなりません。台湾国民の絶対多数が中国との統一には反対しているからです。暴力では、台湾の若者世代である「天然独」(生まれながらの独立派)をコントロールすることはできません。

中国の五胡十六国時代は、長らく、その混乱した社会情勢から「五胡乱華」とも呼ばれていました。この「五胡乱華」をもじって「五独乱華」という言葉が生まれました。「五独」とは、チベットウイグルモンゴル香港台湾の独立派勢力を指しています。習近平がいくらチャイナドリームをアピールしても、暴力だけの中国に魅力を感じる者はいません。中国自身が発想を変えて、パラダイムシフトをしなければ、人心はついてきません。

一昔前の中国は、北朝鮮も真っ青になるくらいのスパイ大国で、アメリカやロシア、ヨーロッパ、日本などの先進各国にスパイを派遣して、政府の重要機密を盗み放題だったことは有名ですが、近年はスパイは時代遅れとなり、サイバー攻撃に切り替えています。中国の人民解放軍内にはサイバー軍があり、表向きはネット防衛訓練機関となっていますが、その実は世界各国のサイバー攻撃部隊です。

ただ、中国の場合、表面化していない共産党内での内ゲバが外に向く傾向があるため、サイバー攻撃を仕掛けているのが習近平であると断定できないところがあります。指示しているのは共産党の幹部なのですが、それぞれが権力争いのために各自指示を出しているため、習近平の知らぬところで誰かがサイバー攻撃を世界各国に仕掛けている可能性は多いにあります。

2015年、アメリカの人事管理局からも連邦職員2,210万人分の個人情報が中国のサイバー攻撃によって盗まれています。また、アメリカの鉄鋼や太陽光などの一般企業からは、組合組織などの内部情報も盗まれています。また同年、日本年金機構から125万人分の個人情報が盗まれました。これらは中国によるサイバー攻撃なのは明らかで、背後には中国軍がいるとみられています。

東日本大震災のときに中国が日本人に対してサイバー攻撃を仕掛けてきたこともありました。東洋経済オンラインに詳細が載っているので以下に一部を引用しましょう。

震災から3週間ほど経過した頃、警察や一部企業に一斉メールが届きました。そこには、「3月30日放射線量の状況」という名前の文書ファイルが添付されていました。当時、日本中が福島第一原発事故によって大混乱に陥っており、公的機関だけではなく民間企業でもさまざまな情報収集を行っていましたので、そのたぐいの重要情報かと思って、受け取った側は大きな疑念を抱かずに、そのファイルを開いてしまいます。もうお気づきでしょうが、これが「サイバー攻撃」だったのです。

 

ファイルを開くと、攻撃者のパソコンに接続され、「COMMAND:」という指示を求めるメッセージが表示されます。あとは、そこに簡単な文字を打ち込むだけで、文書ファイルを開いたパソコンを乗っ取ることができるというわけです。そうなれば、そのパソコンにある情報をごそっと盗み出すことができてしまいます。

 

文書ファイルは日本語で書かれていましたが、その中には日本国内でほとんど使われない中国語の漢字フォントが見つかりました。加えて、中国で偽造されたデジタル署名が見つかった点から、この攻撃はほぼ間違いなく中国からのものだと断定されています。

中国のサイバー攻撃は「全日本企業」が標的だ

相手が弱っているときこそが攻撃の時というのは戦術の基本です。中国はこの基本にのっとって日本にサイバー攻撃をしかけてきました。ここでひとつ疑問が沸いてきます。東日本大震災の際に攻撃されたのは、政府機関ではなく民間企業ばかりです。もしかしたら個人にもこの怪しいメールは届いていたかもしれません。

民間企業や個人にサイバー攻撃を仕掛け、ハッキングをかけたところで国家機密は出てきません。上記の年金情報もそうです。しかし、中国はターゲットを国家機関に絞らず、やみくもに攻撃しているのです。ここにデジタル時代の落とし穴と、それを利用しつくそうとする中国の下心が見えてきます

サイバー攻撃を仕掛ければ、中国にいながら仮想敵国とする日本やアメリカの民間企業における組織編成や事業内容、取引内容、社員の個人情報など、あらゆる情報を盗み出すことは可能です。これまでのようにスパイが命がけで情報を盗もうとしなくても済むわけです。

万が一、尻尾をつかまれたところで、サイバー攻撃なら現行犯逮捕というわけにはいきません。その利便性もあって、中国の情報窃盗はどんどんエスカレートしており、民間の零細企業にまでその魔手は及んでいます。盗まれる側が、うちの情報を盗んだって何の役にもたたないと思っているようなものでさえ盗んでいくのです。

中国は手当たり次第盗んで、いざというときのためにストックしているのではないかというのが、専らの推測です。これだけ情報を持っていれば、例えば、中国が仮想敵国の原子力発電所を攻撃してどこかの企業を犯人に仕立て上げることもできます。現実の攻撃や被害の裏には、情報操作の頭脳戦があります。それが現代社会の闇であり、デジタル時代の落とし穴でもあるのです。

こうしたサイバー攻撃やハッキングから情報を守るために、データの書き換えや漏洩が不可能と言われるブロックチェーンといった技術も登場していますが、中国からの攻撃にどこまで対処できるのかは不透明です。ただ、自分、自社、自国の情報はしっかり守るという意識を持つことは絶対に必要です。うちには利用価値のある情報なんてないから大丈夫と言わず、どんな情報でもしっかりと守ることが必要です。

image by: 360b / Shutterstock.com

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