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竹原慎二氏も見落とされた「膀胱がん」とタバコの密接な関係

最先端の治療法や予防法が絶えず更新されている医療業界でも未だ防ぐことができない病気、「がん」。そんな「がん」の中でも、元WBAチャンピオンの竹原慎二さんが『見落とされた癌』という本を執筆したことで、その危険性が知られるようになったのが「膀胱がん」です。今回のメルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』では、現役医師の徳田先生が、膀胱がんになる最大のリスクは「タバコ」と指摘しています。

見落とされたがん

元WBA世界ミドル級チャンピオンの竹原慎二さんは40歳代になってから頻尿を感じるようになりました。かかりつけ医のA先生の内科クリニックを受診し、膀胱炎や前立腺肥大などと診断され経過観察されていました。

ところが、約一年後に血尿を自覚、総合病院の泌尿器科に紹介されました。その泌尿器科のB先生のところで検査を受けたところ、2.5センチの膀胱がんがみつかりました。膀胱の壁の筋層にも達した大きながんでした。

竹原さんは、B医師の態度に満足できなかったために、別の病院に紹介してもらい、そこで手術を受けました。手術から2年が経過した時点では、幸い再発をみていないとのことです。竹原さんはそれまでの経過を本にまとめて出版しました。本のタイトルは「見落とされた癌」です。がんの見逃しを恐れる医師にとっては衝撃的なタイトルです。

膀胱がんの症状に注意しましょう

当初、竹原さんは膀胱炎と診断されていました。女性と比べて、男性の膀胱炎は稀です。女性の尿道は短いので、大腸菌などの菌が侵入しやすいからです。しかし、男性の尿道は長いので、簡単には侵入できないからです。

男性の膀胱炎または膀胱炎様の症状を感じた場合には、膀胱がんの検査をすることをお勧めします。除外のためには、尿の細胞診検査、膀胱のエコー検査、そして膀胱鏡検査を受けることをお勧めします。

また、竹原さんは前立腺肥大症とも診断されていました。しかし、当時の竹原さんは40歳代になったばかりでした。前立腺肥大症は基本的に高齢者の病気です。65歳未満の男性で、排尿困難があれば膀胱がんの検査を受けることをお勧めします。

排尿困難は、排尿後の尿漏れ(排尿後滴下)とは違います。排尿後滴下は40歳代からみられる生理的な現象です。これは、尿道の周りの筋肉がゆるくなるために尿道内に尿がわずかに残るために起こります。排尿そのものがしにくくなるものではありません。

そして、血尿です。血尿には、目で見て赤い肉眼血尿と、尿検査でわかる顕微鏡的血尿があります。顕微鏡的血尿では約1%でがんが原因です。しかしながら、肉眼血尿では、約10%でがんが原因です。約10倍も可能性が異なります。いずれにしても、血尿では検査をお勧めします。

膀胱がんのリスク

膀胱がんになる最大のリスクはタバコです。膀胱がん患者全体のうち、約半数にタバコが原因となります。タバコは大部分のがんの最大のリスクであるだけでなく、心筋梗塞や脳梗塞などの血管の病気や慢性閉塞性肺疾患の最大のリスクでもあります。

世界的にみると膀胱がんは増えています。アジア各国で喫煙者が爆発的に増えているからです。喫煙している人には、タバコを止めるための禁煙治療を受けることをお勧めします。

膀胱がんの次のリスクは化学物質への曝露です。塗装業、金属業、運送業などの職業の人でリスクが少し高くなります。ベンゼンなどの芳香族化合物やディーゼルなどの吸入などはリスクが高くなります。

タバコと化学物質以外には、寄生虫(日本住血吸虫)、遺伝的体質やその他の要因が関係していますが、一つ一つのリスクはあまり大きくはありません。膀胱がんの予防では、やはりタバコを吸わないことがもっとも重要と思います。特に、塗装業、金属業、運送業などの職業の人ではタバコを吸わないようにしましょう。

文献
Antoni S, Ferlay J, Soerjomataram I, Znaor A, Jemal A, Bray F. Bladder Cancer Incidence and Mortality: A Global Overview and Recent Trends. Eur Urol. 2017 Jan;71(1):96-108. doi: 10.1016/j.eururo.2016.06.010. Epub 2016 Jun 28. Review.

image by: Shutterstock

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