セミナーや講演に行くと必ずと言っていいほど「レジュメ」が配られます。しかし、自身も登壇する機会の多い無料メルマガ『ビジネス真実践』の著者で戦略コンサルタントの中久保浩平さんは「参加者のためにもレジュメは配布しない」と断言。その理由についても詳述しています。
アウトプット力を高める
これまでにセミナーや講演で登壇させていただく機会が幾度となくありました。その際に「レジュメ」などの類を参加者に配布することはありませんでした。これには理由がありまして…、レジュメを準備し参加者に配布してしまうことで、聴講頂いた内容を参加者自身が考え、それをまとめる時間を奪ってしまうからです。
しかし過去に一度、受講者の方から、「レジュメか何かあると助かるんですけど…、今日は、ないんですか?」という質問がありましたので、趣旨を説明しレジュメは用意していませんと伝えると納得してくださいました。
おそらく、ほとんどのセミナーや講演などでは、レジュメはあらかじめ準備され、配布されるものだと思うのですが、実は、受講者・参加者のことを考えるとそのような必要はないというのが、私の考えです。
と、こうしたことを言うと、「受講者・参加者に冷たいんじゃない?」「お金を払って受講するんだから、それくらい準備するのが当たり前じゃない?」なんて反発されそうですが、それでも、必要ないと思っています。セミナーや講演での話に対して、考えまとめることが、受講する人、参加する人にとって、最も意義のあることだと思うからです。
もし、あらかじめ参加人数分のレジュメを用意したとすれば、それを読んでもらえば別に話を聴く必要も無いので、講演・セミナーをする意味すらありません。それでも「レジュメがあった方がいい」という人は、レジュメに頼ることで、自分で考え、まとめる力を奪っていくようなものです。誤解を恐れず極端にいうと、話を聴いていなくてもレジュメを見て、話を聴いた気になっている、というだけのことです。つまり、レジュメを用意し配布してしまうことで、その場の参加意識を下げてしまうことになりかねないのです。
「受講者のみなさんそれぞれで内容をまとめて下さい」というようなことを言うと、きちんとまとめる人もいれば、まとまらない人もいます。でも、参加する受講料は同額です。同じ受講料を払うくらいだったら、きちんとまとめることが出来る力を身につけていくほうが、はるかに価値があります。そして、それは、講師でも講演内容でもなく受講する参加者の意識次第でどうにでもなるのです。
よく「情報や話を聴けば、アウトプットすることが大切だ」と言いますが、セミナーや講演で聴いた話を考えまとめることでアウトプットしたことにはなるでしょうが、ほんとのビジネス能力が養われるってことにはなりません。身になるアウトプットは、自身でそのテーマについて考え、まとめたものを第三者に伝えた時です。
例えば、スタッフ教育の一環で研修をしたとします。そして、研修終了後、スタッフに研修内容をまとめてもらい、発表してもらうようにします。まとめて発表するといっても「勉強になった」とか「とてもやる気が出た」とか「意識が高まった」なんていう小学生レベルの感想ではなく、どういう内容だったのか? がきちんと第三者に理解し伝わるようにまとめ、発表してもらうようにします。そうすると、主観的な感覚だけでは伝わらないので、きっちりと話を聴いて、理解しておく必要が出て来るし、発表する為には分かり易くまとめ、伝える技術も必要となってきます。こうしたことで、本当に有意義なセミナーや講演に参加したことになり、アウトプットの意味があるのです。
また、セミナーや講演、研修などの類だけでなく、会議やミーティングなどでもいえることです。
ちゃんと、内容を理解しているか? ほんとに会議に参加しているか? ぜひ内容を発表する場を設けてみて下さい。それで、参加意識が分かりますし、伝える技術を養うことができます。
どんな話や情報であっても、それを瞬時にまとめることができていくと、要点を的確に伝えていく力が身につくので、プレゼンもきっと今より楽しくなってくるはずです。そして何より分かり易く伝える力がドンドンと身についてくるので、市場やお客様へもメッセージを伝える力が自然と身についていきます。
御社では、アウトプットする力をスタッフに身に付けてもらうようにするにはどのような工夫ができますか?
■今日のまとめ
『アウトプットする力を身につける。』
- 会議やミーティング終了時、参加者が内容について発表する。
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