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現実味を帯びてきた、中国「爆買い」による日本製アニメの「終焉」

アニメーターを中国人が爆買い!? 国内では原画単価1カット4,000円前後が相場とのことですが、最近では中国が日本人アニメーターに対して高額のギャラを提示してくるとか。一見、アニメーターの地位向上のようにも思えますが、数々の人気アニメの総作画監督を務めるふくだのりゆきさんはメルマガ『アニメーターとして生きる』の中で、この状況を「日本の国力低下に繋がる」と警鐘を鳴らしています。

日本アニメ界を取り巻く危機

現在、アニメーション作画においての原画料単価は4,000円前後が相場ですが、最近になって単価5,000円以上のTVシリーズという仕事が以前より多く現れ始めました。この仕事の着目すべき点は、そのクライアントの多くが「中国である」という点です。

10年前JAniCA設立の際、その当時の代表であり発起人の芦田豐雄さんはこう言いました。

「日本のアニメーターのギャラは安過ぎる、この値段ではレートの低い東アジア諸国からでも簡単に買い上げられる」

この言葉の意味するところは、「ゆくゆくは日本人アニメーターの雇い主の多くが中国人になるだろう」という事です。

その当時、40代を越えるアニメーターや制作にはそういう共通認識はありましたが、「とは言えあと20年はそうならない」とも思っていました。

そうやって、うかうかしている間に10年経ってしまいました。

芦田さんの予見は着々とリアリティーを増し始めたのです。

その当時から、私は「そうなったらそれでもいい、自分を高く買ってくれる者が正義だ」と思っていました。それは強がりとかではなく、本気でそう思っていました。何故なら自分がアニメーターになった目的が「自分が見て大きな影響を受けたアニメ作品のようなものを作り出したい」と思ったからであり、「国内出資」とか「日本で」という縛りはなかったからです。

中国産アニメで非常に面白く、日本国内でブームになるぐらいの作品が現れるのなら、それに加担するのも「あり」だと思っているからです。

しかし、国内には「中国人の下で働くのはまっぴらゴメンだ」という価値観の人が少なくありません。そういう抵抗勢力があるなかで、芦田さんの予見が着々と進行していくと、いかに日本のアニメ界が国内アニメーター達を低く見ているかがわかります。

中国産アニメが世界的に大ヒットする可能性が低いという読みをする方々の理論は「共産党に睨まれている製作者に、世界的大ヒットする作品、脚本など作れるわけがない」というものですが、最初から中国国内向けではなく、中国内放送を視野に入れない、外貨集めのために制作スタッフ全員日本人の「中国産アニメ」を作らないとは、誰が言えるでしょうか。

実際、私達に作画依頼が来ている中国作品のなかには、ややもすると全世界的ヒットになるかも知れないと思える作品もあります。

制作したのが全て日本人でも、権利等すべては中国という事になれば、売り上げは全て中国に計上され、日本の国力が下がって行く流れは歯痒い事この上ありません。

そして悲しむべきは、いとも容易く国内単価より高いギャラを提示しているという事です。いわゆる「爆買い」が、アニメーターにまでも及んで来る可能性が出てきたのです。

その流れで日本国内のアニメーターの収入が上がったとしても、手放しで喜べるものではありません。

円安などの影響なのでしょうが、恐らくこれからは国内単価の倍も出してくるのではないかと、私は思います。

そしてつい最近「海外におけるクリエイター人材育成スクール事業へ出資」というニュースが流れました。

これを見て色めき立った人達も多いようですが、実情は「現地に特化したスタッフ(宗教の配慮とか)と現地の言葉を話す声優の育成であり、国内のアニメーター育成とは趣旨が異なる」ということらしく、ひとまずは安心なのですが、これを皮切りに我が国がアジア圏アニメーター育成にも乗り出す可能性は高いです。

そうなったら最後、「アニメ制作トップリーダーである日本」という看板は下ろさざるをえないでしょう。

加えてCG技術の向上や低価格化はどんどん手描きアニメーターにプレッシャーをかけて来ています。

常にポジティブシンキングな私ですら、すこし不安を抱いてしまいます。

次回は、その解決策というかポジティブな方向にシフトするための方策を考えたいと思います。

image by: Shutterstock

 

アニメーターとして生きる』より一部抜粋

著者/ふくだのりゆき
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