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堤防決壊で注目のメガソーラー。住民は設置を差し止めできるのか?

先日の「鬼怒川堤防決壊」の際にも、その遠因のひとつではないかと取り沙汰されたメガソーラー。人気の法律相談メルマガ『知らなきゃ損する面白法律講座』にも、お住まいの近くで建設計画が進んでいるメガソーラーが心配だという方からの相談のお便りが届いたようですが……。

近所にメガソーラー……法的に異を唱えられるのか?

相談□

我々の住宅の裏に8800平米メガソーラーが出来ることになり、設置場所の樹木が伐採されます。これによって気温上昇などによる環境変化から生じる被害規制する法律などがあれば教えてください。(60代:男性)

回答□

環境を保全するために、さまざまな法律があります。中心となるものとしては、環境基本法があり、森林の伐採については森林法などにおいて伐採の計画などを策定し、当該計画にそって森林を保全するように規律されています。また、各自治体で環境関連のさまざまな条例も制定されています。

例えば、「計画の範囲を超えて森林を伐採して太陽光発電設備を設置している」というような点があれば、違法性を問うことはできうるかもしれません。

しかしながら、漠然と「木が減って気温が上がった」ということだけで違法性を問うのは難しいと思われます。

また、今回のご相談のようにメガソーラーの設置ということであれば、通常は大規模な事業者が各種法令をチェックした上で、法的に問題のない設置を行うものと考えられます。その点からも、具体的な環境関連の法律に照らして違法性を問うのは難しいのではないかと考えられます。

それでも、「なんとかメガソーラー設置に法的に異を唱えたい」ということであれば、次のような方法が考えられなくはないです。

メガソーラーが設置されることで、居宅の日照・通風など快適で健康な生活に必要な利益(最判昭和47年6月27日で、前述の利益が言及されています)が侵害されたことを理由に、建築の差止請求(建築工事禁止の仮処分申請)をする方法はありえます(差止請求がどのような法的根拠に基づくかは、さまざまな見解がありますが、実務上取りえる手段としては知られています)。

差止請求とは、文字通り建築をストップさせる法的手段です。ただ、これを行うには前述の利益が住人側に認められ、メガソーラーの設置によって当該利益が受忍限度(社会生活上一般に受任すべき限度)を超えた場合に認められるものです。

受忍限度を超えたかどうかの判断においては、多くの要素が考慮されますが、わかりやすい基準としては何がしかの法律違反しているかどうかが挙げられます。

たとえば、建築物に関していえば、建築基準法に違反した高さの建物が建築され、その結果日影になり困っているということなどです。

今回のケースでは明確な法令違反はわかりませんが、平地に太陽光パネルをズラリと設置するメガソーラーの場合、日照は悪くなることが考えづらく、騒音や振動なども高層建築物と比べて気にならないのではないかと推認します。ご指摘のような「気温上昇」に伴う快適さの低下や、景観の変化程度では受忍限度超えたとはいいづらいのではないかと思われます。

実際の裁判例においても、景観侵害での差止では住民側に厳しい判断が下されています(参考として、建築基準法違反ではあるものの住民に環境や景観に関する利益は差止の根拠はないとした国立マンション訴訟における差止請求:東京高決平成12年12月22日など)。

一方、前述の生活に必要な利益が侵害されたとして不法行為に基づく損害賠償請求を行うことも手法としてはありえます(民法709条)。しかしながら、こちらの場合も、メガソーラー設置によって住民にどのような損害が生じたかを観念しづらいため、請求は認められないのではないかと思われます。

したがって、法的手段はありますが、今回のケースではこれらを活用してメガソーラー設置に対して異を唱えるのは難しいのではないかと考えます。

[関連情報]

・自宅の横にマンション建設!日照権侵害にはならないの?

image by:Shutterstock

 

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