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世界恐慌よりもひどい…ブルームバーグ「最終バブル崩壊論」の真意

先日掲載の「世界3大投資家ジム・ロジャーズも危機感を示す株価の異常事態」では、世界的投資家による今回の株価暴落の「見立て」を紹介した、無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』の著者・北野幸伯さん。今回はブルームバーグ・ニュース・ワシントン支局エディターの山広恒夫氏による記事を引きながら、今後の世界の行く末を占っています。

最終バブル崩壊論

前号は、「世界三大投資家」のジム・ロジャーズさんが、「弱気相場に入る時は、人生最悪のものとなろう」と語っているというお話でした。「人生最悪」ということは、当然「リーマン・ショックよりも悪い

今日は、ブルームバーグ2月9日に掲載されていた、「最終バブル崩壊論」をご紹介します。「最終バブル崩壊論」というのは、私が勝手に名づけました。記事の題名は、

近代資本主義を襲う異次元の「最終バブル」崩壊

といいます。「北野がメチャクチャ大げさにした!」と批判されることはないでしょう。筆者は山広恒夫先生。何が書いてあるのでしょうか?

実は、「世界恐慌時」よりもひどい今回の暴落

トランプ第45代大統領は今世紀最悪のバブル崩壊に見舞われるリスクが高くなってきたようだ。

いきなり「今世紀最悪のバブル崩壊に見舞われる」ときました。つまり、「ITバブル崩壊」よりも「リーマン・ショック」よりもひどいと。筆者の山広恒夫先生は、今回の暴落と、1929年の「世界恐慌を比較します。

「トランプ相場」と呼ばれるトランプ大統領就任に伴う株高は、フーバー大統領の就任後の株高と非常によく似ている。今年1月26日に株価がピークを付けた後、9営業日の下げとしては、1929年9月3日にピークアウトした当時よりも急激だ。下記のチャートはダウ工業株30種平均が29年9月3日に記録したピークと同指数が今年1月26日につけたピークを重ねたものである。ピークを付けた後の切り込みは今回の方が急激だ。
(同上)

今回の暴落、実は「世界恐慌時よりもひどい」と。あまりそういう指摘がないのは、一般的に「アメリカの景気は非常にいい」と思われているからでしょう。
さて、1929年は、その後どうなったのでしょうか?

1929年当時は株価のピークアウトと同時に景気縮小期(赤の縦じま)に入り、大恐慌へと沈んでいく。株価は同年10月24日の「暗黒の木曜日」などを経て、下げを加速した。
(同上)

1929年は、そのまま下げつづけ、ついに世界恐慌に入っていきました。

1929年と現在、世界情勢の類似点

次に山広先生は、1929年と現在の、世界情勢に目をむけます。

独立戦争、南北戦争、さらに29年の株価暴落とそれに続く大恐慌と、米国はおよそ70年の周期で大きな危機を克服して、これまで発展してきた。大恐慌は大英帝国の力が衰え、覇権国交代期の不安定な状況の下で発生している。米国はまだ、覇権国としての意識も能力も持っていなかった。
(同上)

1929年当時、イギリスの覇権は衰えていたアメリカは、覇権国になる準備ができていなかったと。そのとおりですね。

その後、米国はニューディール(新規まき直し策)の成功と第2次世界大戦で勝利を収めて、覇権国に成長。パクスアメリカーナ、つまり米国の覇権による世界の平和を謳歌(おうか)する。

 

しかし、終戦から70余年経過して、米国型資本主義が限界に近づく中で、再び覇権国交代の時期に差し掛かってきた。だが、新たな覇権国がまだ十分に育っていないところは、大恐慌の時とよく似ている。
(同上)

前回は、イギリスの覇権がゆらいでいた。今回は、アメリカの覇権がゆらいでいる。前回、アメリカは覇権国になる準備ができていなかった。今回、次の覇権国になる準備ができている国はない。似てるよねと。これもその通りですね。

「最終バブル」の意味

しかし、山広先生は、1929年と今回では、意味が全然違うのだよという話をします。

ただし、大きく異なる点がある。それは、大恐慌は米国資本主義経済が大きく飛躍する直前の準備期間だったことだ。一方、これから始まる覇権国の交代は、米国資本主義が衰退に向かう中で起こる。つまり、米国の建国以来230年余にわたり発展してきた米国型近代資本主義の衰退期で生じた「最終バブル」といっても言い過ぎではないだろう。
(同上)

前回、アメリカは、世界恐慌→世界大戦を通して、大きく飛躍した。実際、覇権国家になっています。今回は、「米国型近代資本主義の衰退期」でバブルが起きた。要するに、「バブル崩壊後、アメリカはさらに衰退する」と。

これ、世界恐慌と第2次大戦を経て飛躍したアメリカ、世界中の植民地を失い没落したイギリスの運命を思いだせばわかりますね(今のアメリカは、当時のイギリスの立場)。

今回が「最終バブル」なのかわかりません。しかし、上の話、「国家ライフサイクル論からもとても納得できます。

この記事をどう読むか

株の暴落を世界情勢や覇権交代に結びつけた、非常に「大きな視点」の記事です。「リーマン・ショック」が起こった時も、「資本主義の終焉」といった本、記事が、山ほどでていました。「当たってないじゃん!」と思う人はたくさんいるでしょう。確かに資本主義は終わっていませんが、それでも世界は大きく変わりました

昔からの読者さんはご存知ですが、私は05年に『ボロボロになった覇権国家アメリカ』という本を出版しました。簡単にいえば、「アメリカ発の危機が起こって、この国は没落する」という本です。当時は、「そんなアホな!」といわれたものです。しかし、08年に「100年に1度の大不況」が起こったので、誰からも文句をいわれなくなりました。この危機の後も、アメリカは存在しています(当たり前ですが)。

しかし、08年前後で、世界は確実に変わりました。08年まで、「アメリカ一極世界」だった。08年後、「米中二極世界」になった。

上の記事も、とても大きな話をしています。そして、方向性は間違いないと思います。

 

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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