以前掲載の「黒船は二度やってくる。Amazonはなぜコンビニ業界に乗り出すのか?」でも詳しく紹介したAmazonの新サービス「Amazon Go」。これをアメリカでさっそく体験したというメルマガ『週刊 Life is beautiful』の著者で世界的プログラマーの中島聡さんが、実際の使い心地と品揃えについて、詳しくレポートしています。中島さんがプロとして感じたAmazon Goの可能性とは?
Amazon Goを体験する
先週、たまたま近くで食事をする機会があったので、Amazon Goを体験して来ました。日本でも報道されたのでご存知の方も多いと思いますが、Amazon Goは一言で言えば、レジ無し・コンビニです。
入り口はこんな感じで、赤いジャケットを着た二人は店員です。本来ならばこの二人は不要ですが、まだ不慣れな人も多いので、案内係として常駐しています。
Amazon Goで買い物をするには、専用のアプリをスマートフォンにインストールし、Amazonのアカウントと結びつけておくことが必要なので、その説明をしているのです。
そして店舗に入る際に、そのアプリのQRコードを入り口のゲート(下の写真)のスキャナーにかざすのです。日本の鉄道のゲートを通る時の感覚ととても似ています。
店の中には、ごく普通のコンビニのように陳列棚があり、そこに商品が並んでいます。品揃えはサンドイッチ、お菓子、コーヒー豆、飲み物など、いかにもコンビニらしい品揃えですが、日本のコンビニほどは充実していません。ちなみに、サンドイッチ類は、店の横にあるガラス張りのキッチンでせっせと作っていました。
そこから欲しい商品を持ち帰るだけです。私は、入り口にいる店員が配布していたショッピングバックに入れましたが(下の写真)、自分が持ち込んだバッグに入れても、ポケットに入れても大丈夫です。店内に設置した複数のカメラが、誰がどの商品を持ち帰るのかを認識しているため、一度バッグに入れた商品を棚に戻しても、ちゃんと処理してくれるそうです。
ちなみに、店から出る時に通るゲート(下の写真)には特にセンサーもストッパーもついておらず、普通に歩いて外に出るだけです。
店を出て3分ほど経つと、スマートフォンにアラートが届き、チェックアウトが終了したことが知らされます。
最初はとても違和感がありますが、この「レジに並ばなくて良い」という感覚は、とてつもなく気持ちが良く、もし普通のコンビニと、Amazon Goが並んでいて、同じような品揃えと値段であれば、私は100%Amazon Goを選びます。
スーパーで買い物をするストレスを10、コンビニのそれを3とした場合、Amazon Goでの買い物のストレスは1ぐらいに感じられるのです。
AmazonがこのAmazon Goをどう位置付けているかについては様々な意見がありますが、私は結構本気だと思います。もちろん、実店舗ビジネスの展開にはリスクが伴うので、慎重でなければなりませんが、「コンビニ」というビジネスが日本ほど一般的でない米国においては、とても大きなポテンシャルを持っています。また、ビジネスモデルが破綻しつつある日本のコンビニ(オーナーの超過労働でかろうじて成り立っています)でも導入を真剣に考慮する意味はあると思います。
ちなみに、Twitterのコメントで、「悪くは無いと思うけどファミチキやアメリカンドッグや肉まんやおでんなど補充したり揚げたりする日本式コンビニは生き残ると思うな」というものもありましたが、決して「無人コンビニ」ではないので、その手の「熱々を食べてこそ美味しい食品」を販売することも十分に可能です。
レジを無くしたことを「人件費の節約」と解釈している人がいるようですが、それは間違いだと思います。それよりも、顧客に最高のショッピング体験を提供し、結果として一店舗あたりの売り上げを(通常のコンビニの)何倍にもすることを目指しているように私には見えます。
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