さして意味があるとは思えない朝礼。そもそも朝礼は勤務時間に含まれるのでしょうか。今回の無料メルマガ『「黒い会社を白くする!」ゼッピン労務管理』では著者の小林一石さんが、就業時間前に行われた朝礼を巡る裁判を取り上げながら、その解釈を考察しています。
「朝礼」は労働時間とみなされるのか
以前、会社に勤めていた頃に苦痛なことがありました。それは「朝礼」です。立場的に毎回、司会(?)のようなことをやらされ朝礼をすすめていたのですが、ほぼ、他の社員の発言はゼロ。
ちょうどこんな感じでした。
私 「おはようございます」
私 「各担当から連絡事項をお願いします」
(「特にないです」)
私 「今日も一日よろしくお願いいたします」
(終了)
はたしてこの朝礼に何か意味があるのか、とそう考えると苦痛でしかありませんでした(ただ、もちろんこれはやり方の問題であって朝礼そのものを否定しているわけではありません)。みなさんの会社はいかがでしょうか。
さて、この「朝礼」ですがよく問題になるのが「朝礼は労働時間になるのか」です。例えば、始業時間が9時の会社で8時45分から15分間の朝礼を行ったら、その時間は労働時間になるのでしょうか。
それについて裁判があります。
ある介護運営会社で始業時間前に毎朝、朝礼を行っていました。すると、その社員から「その時間は労働時間である」として、給与の支払いを要求され、裁判をおこされたのです(実際にはその部分だけで裁判をおこされたわけではありませんが、話が拡がってしまうのでその他の部分は割愛します)。
では、そもそもこの労働時間かどうかの判断基準は何か。その基準の1つは「会社の指揮命令下にあるか」です(簡単にお話すると「会社に指示されている時間かどうか」です)。この部分を、会社は「朝礼は自由参加であり(つまり会社の指揮命令下にはなく)労働時間とは認められない」と、主張しました。
では裁判の結果はどうなったか。
会社が負けました。朝礼は労働時間と認められたのです。その具体的な理由は下記の通りです。
- 朝礼では(介護施設の)居住者に関する報告や引継ぎ、上長による話があり、それらは業務に関連し、その遂行に必要な準備行為といえる
- 朝礼に遅刻した場合に始業時間前にもかかわらず遅刻として処理されている(給与も減額されている)
これらの理由から、「自由参加ではなく実質は強制参加であった(指揮命令下にあった)」とされたのです。
いかがでしょうか。もしかするとみなさんの会社でも、始業時間「前」に朝礼を行っているかも知れません。もしそうだとしたら上記のようなリスクを考え、始業時間「後」に行うように変更したほうが無難でしょう。
実はこの「その時間は労働時間か」というのはよくご相談をいただく内容です。例えば、
- 入社前研修
- 社員旅行
- 制服へ着替える時間
- 懇親会
- 社員運動会
- 健康診断を受けた時間
などです。もしかするとみなさんの中にも迷われている人がいらっしゃるかも知れません。
それぞれの具体的な状況にもよりますので、どれが労働時間とは一概には言えませんが、あとから労働時間として請求されることがないようにしっかりと管理していく必要がありますね(上記の中で一般健康診断の場合は「労働時間とすることが望ましい」とはされていますが必ずしも労働時間とする必要はありません)。
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