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ゲーム依存は「疾病」とWHO認定。問題視は避けたいマスコミの思惑

世界保健機構(WHO)はこのほど、極度のゲームへの依存状態を「ゲーム障害」なる疾患として認定したことを公表しました。これについて業界団体から「ゲームに依存性はない」と反論の声も上がっていますが、日常生活に支障をきたすほどのめり込んでいる人がいるのは事実です。WHOが疾患と認めたことで、今後どのような動きが出てくるのでしょうか。メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』の著者で、ゲームに依存しがちな人と接する機会もあるというジャーナリストの引地達也さんがその見通しを記しています。

ゲーム依存症が疾患、で変わる支援の形と個人的なつぶやき

スマートフォンなどのゲームをやり続けて日常生活に支障をきたしてしまう「ゲーム依存症」が世界保健機関WHO)の公表する改訂版国際疾病分類「ICD-11」に「ゲーム障害として明記された。

● ゲーム依存は疾病–WHOが「ゲーム障害」を認定

正式決定は来年5月のWHO総会となるが、ゲーム障害が疾患となることで、治療には間違いなく生活習慣の正常化を目指すものとなるから、医療現場と福祉的支援の連携がより必要となってくるだろう。

現在、私が支援をする現場でも、就労できないストレスをゲームで埋め合わせる人がいたり、そもそもゲームを深夜まで、いや一日中してばかりで生活習慣が安定しない方が増えているような気がしていたから、正式決定により、ゲーム依存の改善を正式な支援行為として結び付けていく前提としてよいのかもしれないが、同時に「疾患者が増える」のは確実で、少々複雑な気持ちでもある。

ゲームに面白みを見出してこなかった私には、それは実感のない疾患世界だが、電車の中を見渡せば、スマートフォンで真剣な表情で操作を続ける人たちはスピードや知恵や偶然? を競ったりするゲームに没頭している。全員が依存症ではないにせよ、満員電車でもゲームを続ける様は、感覚が麻痺しているのではないかとも思ってしまう。

厚生労働省の調査では、成人の約421万人、中高生の約52万人がゲームなどのネット依存症の恐れがあると推計しているが、正式な対策がないのが現状だ。ITやゲーム業界は現在の日本経済を支える重要な産業となり、ゲームそのものを問題視する方向は避けたい思惑もあるようで、朝日新聞の報道でも「ただし、飲酒同様、ゲームをする行為自体が問題とされたわけではない」と、どこかに配慮する姿勢がにじむ。

私自身の思い出になるが、小学校低学年の頃、近所に初めての24時間営業のコンビニエンスストアが開業し、その入口にはテーブル式のインベーダーゲームがあった。たむろして順番にやり続ける年上のお兄さんたちは楽しそうに迫りくるインベーダーと戦って、ユーフォ─を打ち落とすと歓声を上げた。

それはそれは、面白いものなのだろうと、私も数日後に100円を握りしめて、お兄さんたちのいない時間を見計らって、一人ゲームに向かったが、お兄さんたちのようにうまくインベーダーたちを迎え撃つことが出来ず、ユーフォ─も打ち落とせず、すぐにインベーダーは私の陣地を侵略し、絶望的なメロディーとともに画面にはゲームオーバーが表示された。それは虚しい時間だった

100円で得られたのは、一生分の虚しさと思えるほどの衝撃的な空虚である。それ以来、ゲームに夢中になることはなかった。

こんな経験からか、やはりスマートフォンをはじめとする画面で行うゲームに興じることはない立場ではあるが、そこから見えるゲーム風景は少し不安な社会でもある。読書をしたり思索をしたりと、電車の中はそれぞれがそれぞれのことをやって社会の調和が保たれているから、その調和が「皆が同じことをする」ことで不自然に感じるのは不思議だ。

ゲーム依存の方々を見る限り、その度合いを調整する機能がなくなりつつある状態だから、やはり画面から目を離して人と話し空気を吸って生きることに自覚的になる必要があるだろう。

ゲーム好きには反発されそうだが、ゲームを少し自重して、ちょっとした思索をしてみることを呼びかけてはいけないだろうか。

image by: shutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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