MAG2 NEWS MENU

W杯の宴は終了。いつか来る「五輪後」日本の過酷な現実に備えよ

サッカーワールドカップのロシア大会で日本はベスト8進出を逃し、人々の熱狂も冷めて「宴は終った」という空気感が支配し始めています。そして今、日本は早くも「東京オリンピック2020」へ心を切り替え始めていますが、それまで私たちを悩ませてきた人手不足や低賃金、国の借金などといった大問題から目を逸らしてはいないでしょうか。メルマガ 『ジャーナリスティックなやさしい未来』の著者でジャーナリストの引地達也さんは、「いつか来る」五輪という夢の後の過酷な現実を直視し、その「準備」を呼びかけています。

宴の後の準備を考えておくこと

サッカーワールドカップはやはり地球で最も競技人口が多いと言われるスポーツの一大イベントであって、盛り上がる。そして、何よりも面白い。

スポーツコンテンツの持つ力を見せつけられながらも、ロシアという舞台も何となく好意的に見られてしまい、数年前にウクライナに侵攻し、チェチェンを爆撃している国家の顔とはまったく違う二面性を見る気がして、少し恐ろしい心持ちにもなる。

スポーツの祭典を、国家は経済をはじめとする国の強度化に利用したのだろうが、この後のロシアがどんな振る舞いを見せるのか、気になるところだ。

というのも、今回のワールドカップを皮切りに、日本、とりわけ東京ではラグビーのワールドカップ、そして東京五輪に続くスポーツマインドの上昇と、それに伴う各種イベントの気運が盛り上がり、新たな施設の建設費だけでなく、新たな企画によるサービス関連の特需に沸いている、その未来につながるからである。

私も都民として、ここ数か月の間に新しいスポーツ関連のイベントが駅のポスターに掲げられ、広報誌に盛り込まれているのをよく目にする。

五輪はすぐそこに来ている印象で、必要かどうかはともかく、イベントにとかく「スポーツが多いのは気のせいではないはずだ。

おそらくこの特需という騒ぎは2020年まで続くのであろうが、経済的な観測では、五輪後の不安を指摘する声も多い。

日本銀行の金融緩和策が「当たり前」になっている現在、その強烈なカンフル剤の効き目があるものの、国の1000兆円超の借金が消えたわけでもなく、日銀の株の買い入れも止まらない中で、人手不足と言われながら、なぜか賃金が上がらないという不思議さ。

このアンバランスな経済状況は、五輪特需人手不足の中で、ちょっとした希望でかき消されているのかもしれないが、やはりそれはいつか終わりが来る。

財政規律を正すのはいつになるのだろうか。それさえも見えなくなってきた。

米国が最近になって打ち出している保護主義的な政策は、もともとトランプ大統領の公約であり、中間選挙を前に本格化しつつある。

EUとも、もちろん日本ともいずれウインウインの関係ではなくなるのは、前回のカナダでのG7サミット会合でのトランプ大統領の態度でも明らかだ。

すでに米国は買い取った国債など自国の資産を減らし始めている。日本は未だに買い続けている

そして、米国の株価高に連動するように、どこかに期待感を持ちつつ、経済政策と財政政策のあいまいな場所を迷走している。

東京五輪というファンタジーの中で、人々が夢と熱狂にいれば話は収まるのだが、それは一瞬の夢であり、いつか現実がくる。その時のために備えなくてはならないだろう。

image by: shutterstock.com

引地達也この著者の記事一覧

特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 ジャーナリスティックなやさしい未来 』

【著者】 引地達也 【月額】 ¥110/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎週 水曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け