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【書評】なぜ、ドイツのメディアは日本をこんなにも嫌うのか

ドイツの人々が日本人をどう思っているか、ご存知でしょうか。今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で著者の柴田忠男さんが紹介しているのは、ドイツメディアが報じる悪意に満ちた日本の情報。特に原発に敏感なドイツ人の日本への反応は、驚くべきものでした。

ドイツで、日本と東アジアはどう報じられているか?
川口マーン惠美 ・著 祥伝社

日本人はなぜかドイツが好きだが、ドイツのメディアは日本に無知で悪意に満ちあふれている。一方で中国に対する報道はきわめて好意的だ。ことアジアについては不公正で質が低い。中国と韓国の見解を事実として取り上げ、日本の主張については、まったく無視している。ドイツと中国はいまや蜜月時代で、中国のプロパガンダが行き渡り、日本に関する報道は歪曲されまくっている。

東日本大震災の原発事故についての、ドイツの反応はひどいものだった。

いつもは何に対しても懐疑的なくせに、何かの拍子でマイナスの方向に振れると、集団パニックや過激なデモなど、一丸でとんでもなくヒステリックになっていくのがドイツ人だが、今回も例外ではなかったようだ。そういえば、チェルノブイリ原発の事故にときも、一番ひどい風評が巻き起こったのがドイツだった。

ドイツ人は自分たちの脱原発の決定に大いなる誇りを持つ。実際は2023年には止めようと言っているだけで、脱原発計画は大いに難航している。なぜかドイツ人はそれを完璧に無視する。強情で頑固な国民の、盲目的なまでに強靱な意志である。日本に関するニュースは、数年間、ほぼ90%が原発がらみで、中国人のノーベル文学賞の記事は多いのに、山中伸弥は殆どニュースにならない

ドイツのメディアは、日本国民は脱原発を欲しているが、民主主義の精神が未だ分かっていないので、唯々諾々と権力者に従っている、「フクシマから何も学ばない日本人」だと非難する。とにかく「日本人は何も知らない」という認識は大抵のドイツ人が持つイメージだ。ドイツ人にとって、日本国民は反原発でなければならないのだ原発は悪で反原発が善、それ以外の論理はない。

脱原発という正義を行う知性と勇気のあるのは、やはりドイツ人だけであった、とドイツ人は思っている。すべてを犠牲にしても反原発をすべきだと単純に信じているドイツ人には、やむを得ず原発を選択するという思考は理解しがたいものなのだ。しかし、ドイツの原発ゼロの見通しは非常に暗いのが現実だ。

自然エネルギーをバックアップするため火力発電を増加、強化しなければならない。CO2の排出量が増えるが黙っている。目玉の洋上風力発電も高価すぎて建設が進まない。再生可能エネルギーの買取制度も暗礁に乗り上げ、一般消費者の電気代がアップ。最大の問題は、送電線建設が住民の反対で……(笑)。

著者は言う。2023年のドイツの脱原発は失敗する可能性がかなり高い日本はドイツが成功してから真似をしても遅くはないのではないか。まことに同感だ。福島の原発が爆発した映像は何度も何度も放映されたが、迫力不足と思ったのか、不気味な爆発音を付け加えたという。そこまでやるか、ドイツ人。ドイツの周辺国はみな原発推進の悪い国だが、なぜかメディアはその不安を言わない。

ドイツメディアの尖閣や竹島、日中・日韓の歴史問題に関する記事は、中韓の言い分の鵜呑み日本の主張の完全無視、著しい事実誤認から出来ている。「ほとんどのドイツ人にとって、記事の過誤を判断するだけの基礎知識もなければ関心もない。読めば必ず書かれていることをそのまま信じることになる」

ドイツにとって日本は、世界中でほとんど唯一のライバルだ。日本の好調は嫌悪しかない。だから常に攻撃の矛先は日本に向く。ドイツ好きの日本人は少なくない(わたしもかつてはそうだった)が、ドイツは日本が嫌いで、ウマがあうのが中国だ。中独が相手ではそうとう手強いが、負けるもんか。

編集長 柴田忠男

image by: Shutterstock.com

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