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甘すぎる日本のたばこ規制。世界で行われている驚愕の「事例」

東京都で今年、「受動喫煙防止条例案」が可決され飲食店内が「原則禁煙」となりました。しかし、メルマガ『ドクター徳田安春の最新健康医学』の著者で現役医師の徳田安春先生は、「日本のたばこ規制は世界に比べてまだまだ甘い」と一刀両断。他国の取り組みや法令を例に挙げ、国と医療現場が中心となって今後取り組むべき活動について具体的に言及しています。

たばこ規制の世界的進展

東京都は2018年、受動喫煙防止条例案を可決しました。従業員を雇っている飲食店内を面積にかかわらず原則禁煙としました。2020年にオリンピックを控えた東京では、この条例の趣旨に賛同する意見が多かったことで可決が成功したと思います。東京都の条例は、今の国会で審議している国の法案よりも厳しい内容ですが、国際的な常識からはまだまだゆるい規制です。

2018年は、国際的にみても、たばこ規制が飛躍的に進展したといえます。北京の鉄道当局は、鉄道の施設内および列車内を、完全禁煙にすることを決定しました。これは、乗客が受動喫煙の健康被害を受けたとのことで、鉄道会社を訴えたことがきっかけでした。駅や列車内に喫煙スペースを持つ日本でも、タバコフリーを目指してほしいと思います。

一方、オーストラリアは、タバコのパッケージに健康情報を表示させ、かつタバコブランドのロゴを禁止するルールを、世界に先駆けて導入していました。これに対して、主要な葉タバコ生産輸出国であるキューバ、ドミニカ、インドネシアなどがWTOに訴えていましたが、2018年にWTOはオーストラリア政府の規制は妥当とする決定を下しました。

さらには、WHOのたばこ規制枠組み条約(FCTC)も、2018年に、違法なタバコの貿易取引を完全禁止するプロトコールを発表しています。日本のたばこ規制はまだまだ甘い内容です。パッケージにはブランドのロゴが散りばめられています。オーストラリア並みのプレーンパッケージとして欲しいものです。

まだまだ増える喫煙者とタバコによる健康被害

たばこ規制は世界的に進展していますが、1990年以降世界の人々の喫煙率は低下傾向であるものの、まだまだ喫煙率はそれほど下がらず、人口増もあって、喫煙者の絶対数は増えています。2015年の世界の喫煙率は、男性で約25%、女性で5%です。

タバコの規制が様々な国で成功している一方で、いくつかの国ではあまり成功していません。その理由はたばこ産業の強力な活動です。オーストラリアでのたばこパッケージ規制では、たばこ産業は敗れたものの、他の国ではたばこ規制を骨抜きにする活動を進展させています。

たばこ規制での医師の役割

これまで医療機関で勤務する医師は、病気の原因となる危険因子に対する治療を積極的に行っていました。高血圧に対する血圧コントロール、糖尿病に対する血糖コントロール、脂質異常に対するスタチン薬の投与、などです。ところが、喫煙に対するニコチン依存症治療については十分に行われていないのが現状です。通常、禁煙外来などの特別な部門で細々と行われているのみです。

そこで最近、英国の内科学会は、現場の医師が喫煙に対する治療介入をもっと行うべきとする、素晴らしい提案をしました。医療機関に受診する患者が喫煙者であると判明したときには、デフォルトな治療介入としてニコチン依存症治療を積極的に行うべ、と提案しています。その提案では、オプトアウトといって、治療介入の実施についての情報を医療機関内外で公開し、さらに拒否の機会を保障することも推奨されています。

英国の内科学会のレポートは、現場の医師や医療機関に対して、ニコチン依存症への強い介入を勧めています。すなわち、ニコチン依存症の患者を見つけて治療するのは、がん患者を見つけてそのがんを治療することに匹敵することとしています。ニコチン依存症を放置して治療しないのは、がんを放置して治療しないことと同じ、であるとも言っています。真に国民のためになる提案と思います。日本の学会でもこのような提案をしてほしいものです。

文献

Hiding in plain sight: Treating tobacco dependency in the NHS.

image by: Ned Snowman / Shutterstock.com

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