10月24日、政府はインドに対して本年度3,000億円超の円借款を実施すると発表。これまでの累計額は世界一を保っています。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、米国の衰退と中国の成長鈍化による混乱が懸念される中、今後大幅なGDP上昇が望める「未来の大国インド」と日本の関係強化は評価できると記しています。
なぜインドは日本にとって【最重要国】なのか?
インドのモディさんが来られましたね。これに関連して、2つニュースがでています。
<円借款>インドに3,000億円 29日首脳会談で伝達
毎日新聞 10/24(水)23:57配信
政府はインドに対し、日本の新幹線方式を導入する鉄道建設などを対象に今年度、3,000億円超の円借款を供与する方針を固めた。安倍晋三首相が29日、東京都内で予定するモディ首相との会談で伝える。
「今年度、3,000億円超の円借款を供与する」そうです。
政府は2015年度以降、年間3,000億円超の円借款を含む政府開発援助(ODA)をインドに供与している。同国に対する円借款の累計額は今年度を含めて約6兆円で、世界で最も多い。政府は「自由で開かれたインド太平洋戦略」の一環として、今年度も高水準を維持することにした。
(同上)
「円借款の累計額は約6兆円」で「世界で最も多い」そうです。実にすばらしい!なぜすばらしいか、その理由は後述します。
もう1つ。
<安倍首相>印首相を別荘招待 中国とバランス外交
毎日新聞 10/23(火)21:58配信
安倍晋三首相は23日の自民党役員会で、近く訪日するインドのモディ首相を、山梨県鳴沢村の自身の別荘へ招くと明らかにした。モディ氏は28日に別荘を訪れ、正式な首脳会談は29日に東京で行う。
モディさんを別荘に招待したそうです。誰かと「緊密な関係になりたいとき」「緊密であることを示したいとき」こんなことをするのですね。
日本の総理が、外国首脳を別荘に招く。これは、なんと中曽根さんがレーガンさんを招待して以来だそうです。なんとも「特別待遇」です。すばらしい!
インドは、アメリカに並ぶ【最重要国家】
なぜ安倍総理が、インドのモディさんを特別待遇することがすばらしいのか?日本にとってインドは、アメリカに並ぶ【最重要国家】だからです。なぜ?軍事同盟国アメリカが「最重要国家」であるのは、中学生でもわかります。アメリカとの同盟がなければ、尖閣は、とっくに中国のものになっていたでしょう。沖縄も危険です(中国は、「日本には、沖縄の領有権はない!」と宣言している)。
では、インドは、なぜ最重要国?アメリカは、日本の軍事同盟国ですが、その力は相対的にどんどん弱くなっています。トランプさんのスローガンは、「アメリカを再び偉大に!」でしょう?ということは、トランプさんは、「アメリカは、昔偉大だったけど、今は偉大じゃない」と考えている。確かに、40~50年代とか90年代とかと比べると、アメリカは衰えている。「世界の警察官じゃない!」と自ら宣言するぐらいですから。そうなると、「アメリカ同盟頼り」だけだと危険ですね。
もちろん、「自主防衛能力」を向上させていくことが最重要。一方で、他の大国との同盟関係も深めていく必要がある。日本が「同盟国」に選ぶなら、インドが最適なのです。なぜ?ライフサイクルを見ると、欧州は成熟期、アメリカも成熟期、中国は成長期の最末期となっている。しかし、インドだけは、いまだ成長期の前期にあり、これからもますます成長しつづけていくことが確実。
インドは1947年、イギリスから独立しました。その後、混乱期が長くつづき、この国が成長期に入ったのは1991年でした。この年、インドは「経済社会主義」を捨てて、「自由化」に踏み切った。中国は、トウ小平が「資本主義導入」を決めた1978年から成長期に入った。つまり、インドが成長期に入ったのは、中国より13年遅かったことになります。
インドのGDPは2016年、2兆2,564億ドルで、世界7位。しかし、1人当たりGDPは同年、1,723ドルで、世界144位という低さ。常識的に考えると、インドはまだまだ「成長期前期」にいることがわかります。この国の1人当たりGDPが、(それでも貧しい)いまの中国並みまで増加したと仮定します。すると、インドのGDPは、約9兆ドルになり、日本を軽く超えてしまいます。そして、インドの人口は、日本の約10倍、12億1,000万人ですから、同国のGDPが将来日本を超えることは「必然」なのです。
将来、インドは、中国に並ぶ大国になるでしょう。ですから、日本は未来を見据え、インドとの関係を強化していく必要があります。
というわけで、アメリカとインドが日本の最重要国家です。安倍総理は、「大戦略観」をもって、インドとの関係強化に取り組んでおられる。実にすばらしいことです。
image by: 首相官邸