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「ミサイル・核の恐怖」は今や昔話?2018年の北朝鮮を振り返る

平昌冬季五輪への参加と美女応援団派遣に始まり、文在寅大統領を利用しての米朝首脳会談の実現と話題の中心にいた2018年前半の北朝鮮。しかし約束の「完全な非核化」が履行される気配はありません。メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』の著者で北朝鮮研究の第一人者、宮塚利雄さんは、この1年の北朝鮮の動きを振り返り、今後の日本と韓国の北朝鮮対応の方向性について言及しています。

金正恩が笑った2018年を振り返る

2018年の北朝鮮は韓国・平昌冬季オリンピック大会に大会の選手よりも、美女応援軍団を派遣して話題となったが、スポーツ大会を政治に利用することを怠らず、韓国の文在寅大統領を利用し、米朝首脳会談の橋渡し役を担わせた。

もっとも、予期せぬ会談開催オーケーに慌てた金正恩は中国の習近平に物乞い」ならぬ「体制護持と斬首作戦回避のための後ろ盾になることを要請しに」列車と飛行機ではせ参じた。

金正恩とトランプ大統領の“舌戦”はロシアのプーチン大統領が「幼稚園児の戯言」と看過したが、金正恩はトランプに「完全な非核化」を約束したが、その後、約束を着実に履行するかと思いきや、様々な理由を付けて非核化の作業を先延ばしにしてきた。

ある識者は「核兵器は北朝鮮が半世紀以上かけて育てた資産。簡単には手放すはずがない」と言ったが、極めて当然の話である。それどころか、北朝鮮とアメリカの間では経済制裁などで「不協和音」が聞こえてきている。

一方、日本では北朝鮮のミサイル・核問題があまり報道されなくなった。かつては、朝からお茶の間のテレビ番組では盛んに「北朝鮮のミサイル攻撃の恐怖」に花を咲かせていたが、避難訓練も中止となり、「北朝鮮のミサイル・核の恐怖」は今や昔話となった。これで、まずは一安心かと思っていたら、前号でも取り上げたが、日本海側の海岸に北朝鮮の小型木造漁船の漂着がすでに去年よりも増えている

北陸地方のテレビ局から、この件について取材依頼が来ているが、日本海岸沿いに漂流・漂着する小型木造漁船の数はこれからもますます増えるだろう。というのも、金正恩が12月1日に日本海側にある軍の水産事業所を視察し、「魚の山が積まれているのを見ると気分が本当によい。非常に満足している」と水産関係者を鼓舞したからである。

戦士である漁民はこれからも荒れた日本海の真ん中付近にある、大和堆とその北方にある武蔵堆での漁労を余儀なくされる。北朝鮮の日本海側のある村は「漁で夫をなくした未亡人であふれている」という報道記事を見たことがあるが、あながち嘘とも思えない。

韓国の「親北朝鮮融和政策」はとどまることを知らないが、いつまでもこのような状況が続くとは限らない。私は韓国に行くたびに「星条旗・太極旗」側のデモ隊に行っては「反文在寅政権打倒」を話してきている。脱北者の代表格である李エランさんとも接触しており、近々、北朝鮮に向けて飛ばす予定のビラも入手してきた。

金正恩の満面喜悦の笑顔が目立った今年であるが、誰も強制収容所の話もしないし、拉致問題についても、日本政府は「解決する」との空約束を何十年も言い続けているが、今年こそは、今度こそは、を繰り返すのではなく、「奪還」くらいの覚悟で対処してもらいたいものである。

今年9月2日に韓国のテレビ局「チャンネルA」の「イジェマンナロカムニダ(これから会いに行きます)」の番組に出演して、脱北者のお姉さんたちと話すことができたが、北朝鮮訛りの言葉はなぜか懐かしさを感じられた。

先月末に朝鮮よいとこ一度はおいで!─グッズが語る北朝鮮の現実』(風土デザイン研究所)を発刊したが、北海道の小さな出版社からの発売なので、広告も宣伝もままならぬ状況にある。出版社から総連機関に出版案内書を送ったら、ある地方本部から「宮塚がまたよからぬことを企んでいる。いい死にざまはできないだろう」というようなことを言ったとか。本を買って読んでからの文句なら歓迎するのだが。

同じ故郷で同じ年齢である藤本健二さんの店に行って、金王朝打倒の話ができる日が来るだろうか。(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

image by: kirkchai benjarusameeros, shutterstock.com

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元山梨学院大学教授の宮塚利雄が、甲府に立ち上げた宮塚コリア研究所から送るメールマガジンです。北朝鮮情勢を中心にアジア全般を含めた情勢分析を独特の切り口で披露します。また朝鮮半島と日本の関わりや話題についてもゼミ、そして雑感もふくめ展開していきます。テレビなどのメディアでは決して話せないマル秘情報もお届けします。長年の研究対象である焼肉やパチンコだけではなく、ディープな在日朝鮮・韓国社会についての見識や朝鮮総連と民団のイロハなどについても語ります。

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【著者】 宮塚利雄 【月額】 ¥550/月(税込) 初月無料! 【発行周期】 毎月 5日・20日 発行予定

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