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在日米軍撤退が条件。北方領土返還に露が突きつける無理難題

刻々と変化する国際情勢に連動し高下を繰り返す株価や為替相場。そのキーパーソンといえばトランプ大統領ですが、彼の言動を予測するのは容易なことではありません。今回のメルマガ『国際戦略コラム有料版』では著者の津田慶治さんが、そんな予測不能なトランプ氏の「今後」を様々な要素を元に分析するとともに、同盟国である日本の対ロシア、対韓国関係、さらに橋下徹氏が動き出すとみられる国内政治についての「今後」についても予測を試みています。

日米の政治はいかに

パウエルFRB議長が講演で、今後、利上げを慎重に行うとしたことで米株価は大反発した。変動幅の大きな株式市場であり、今後の予測も市場の意見がトランプ大統領とFRB議長を動かすようである。今後の米国の動向を検討しよう。

NY株価

2018年12月26日2万1,712ドルから2019年1月2日2万3,413ドルになり、1月3日2万2,638ドルまで下がり、一転、1月4日2万3,518ドルまで上昇している。2,000ドルの幅で上下していることになる。4日の上昇は市場が要求していた利上げの打ち止めをパウエル議長が検討し始めたこととトランプ・習近平の電話会談で、貿易戦争が収束したと見たことと、もう1つ、雇用統計から景況感も依然良い状態であることを確認できたことも原因として上げられる。

それにしてもボラティリティの大きな株価動向である。

日経平均もNYダウに歩調を合わせて、2018年12月26日1万8,984円に下がり、12月27日2万0,211円まで上がり、2019年1月4日1万9,214円まで下がるという展開になっている。終値は1万9,561円と若干戻して終えた。

その上、1月3日には1ドル104円まで円高になり、1月5日18時時点では、1ドル108円になっている。若干戻したが110円までは戻していない。

前回の『2019年以降を予測する』で予測した円高が相場最初の日に実現している。

トランプの政策

トランプ大統領は孤立主義であるが、共和党主流派はまだ覇権維持であり、トランプ大統領としても共和党と妥協をして、国防長官にウェッブ上院議員を推薦したが、ウェッブ議員はトランプ大統領の孤立主義とは意見が違うので、断ったようである。トランプ・ツイートでウェッブ議員が国防長官候補というNYTの記事をフェイクニュースとしたことで判明した。

しかし、孤立主義者として有名なランド・ポールが国防長官になったら、沖縄を含む在留米軍の撤退もありえるので、日本は自国の防衛を真剣に考える必要になる。米国は防衛ラインをグアムかミッドウェイに引くことになる。中国の思惑通りだ。

米海軍の補修などのレベルが下がり、海軍力の維持が難しくなっている。それが製造業復活をトランプ大統領が唱える理由でもある。海軍工廠を閉鎖して民間企業に移したが、その民間企業の技術が低いのだ。孤立主義と防衛ラインの問題が浮上することになる。ここでも日本企業が支援することが必要になっていると見る。

もう1つが、米中貿易戦争で、トランプ支持基盤である中西部農業州の支持が低下している。中国が大量の大豆や小麦、トウモロコシを買っていたが、貿易戦争で買わなくなり、米国産農産物価格が下落しているからである。どこかで折り合いを付けないと、2年後の大統領選挙に負けることになる。このため、米中冷戦にはできない

貿易戦争ではなく、文化戦争にシフトするような感じである。貿易は持続するが、人の交流を止めるとかネット機器を制限するとかの戦いにシフトして、トランプ支持者の維持を図るような気がする。このことからTPPへの米国の復活もあり得るかもしれない。

これは、市場の要求である米中貿易戦争を止めて、米国企業の製品を中国に輸出できる環境を整えることと合致しているので、市場も好感して株価の上昇はないが維持できる。2年持つかどうかはわからないが、当分リセッションが起きなくできる

というように、貿易戦争とトランプ支持者の利益確保のせめぎ合いが起きている。そして、トランプ・ツイートで、習近平国家主席との電話会談で、ある程度の合意が付いたとした。このため、7日から実務者会談を北京で行うようである。それと近々のダボス会議でも会うようだ。

このことで、株価を維持するようであるが、次のことでは株価を下落させることになる。

メキシコ国境線に壁を建設する予算を入れろと、トランプ大統領は強引であり、民主党は予算に壁建設費用を入れないとして、今年度予算が決まらず、政府機関の閉鎖になっている。トランプ大統領は、民主党が壁建設を認めるまで政府閉鎖を続けるとしている。

このため、1月下旬には、フードスタンプの予算がなくなり、貧困層は不満を抱くが、トランプ支持層ではないので、トランプ大統領は民主党に原因ありとして、民主党に不満を向けさせるようだ。

トランプ大統領は、外交ではある程度自由を得たが、経済や国内は農民や株価などの多くの制約を受けている。

中東政策では福音派の筋書き通りに事が運んでいる。トランプ・ツイートで、シリアにいるイラン軍は好きにやればよいとイスラエル攻撃を嗾けるとも見えることを言っているし、福音派は、トランプ大統領を、神の道具であったキュロス王と見なし始めている。

当分、トランプ・ツイートで、国際情勢が大きく変化することになるが、トランプ大統領は、米国の衰退を反映した変化を作り出しているように感じる。

日本の外交政策

日露交渉であるが、プーチン大統領は、北方領土返還には、在日米軍の撤退が必要としている。しかし、ランド・ポールが国防長官になれば、その可能性が出てくる。なぜ、プーチン大統領は、在日米軍撤退の条件を出したかというと、ロシア国内からの反対が多く、日本が絶対にできない条件を出して北方領土返還をしないことにしたいためでしょうね。

安倍首相は、いくらシベリア開発で協力しても、北方領土の返還は長い時間がたち、難しくなっている。安倍首相は、在日米軍はロシアを敵視していないと言っても、それは無理である。

もう1つの条件は、北方領土に暮らしているロシア人の反対をどうするのかという問題で、安倍首相は、住んでいるロシア人を追い払うことはしないとした。ロシア人の所有権を認め、二重国籍にする可能性も出てきた。どこまでの条件を出せば、良いかが問題になり始めている。ロシア側の反対を1つ1つ潰していくしかないように思う。長い時間が経つと、返還は難しいことを示している。

もう1つが、日韓関係でしょうね。慰安婦問題、徴用工問題の上にレーダー照射問題と、日韓関係は悪化の一途をたどっている。

韓国は、現時点、北朝鮮との友好を最優先するために、反日政策を止めることができないし、北朝鮮漁船の遭難を救助したり、瀬取りの支援をしたり、米韓関係を維持するために、北朝鮮への制裁を守りながら、韓国ができる北朝鮮への支援をしている。

その状況で日本のP-1が瀬取り防止や北朝鮮漁船監視をしているので、韓国は日本のP-1を敵視するのは、うなずける。このため、レーダー照射をして警告したのであろう。韓国の気持ちが出ている。

このため、問題を起こした韓国軍艦艇は、海軍旗も出さず、信号旗も掲げず、北朝鮮漁船の遭難救出をしていた。それも日本EEZ域内なので、ここでも国際法違反をしている。

韓国の矛盾が出ているが、悪いと認めることができない。このため、P-1の低空飛行を問題視したりすることになる。韓国も意地である。

それより、徴用工問題では、新日鐵住金の韓国資産を差し押さえする申請が出された。裁判に勝ち、その保障を新日鐵住金は行わないことで差し押さえの正当性が韓国では生じる。しかし、この執行をすると、当然、日本側も同等の処置をすることが必要になる。

日本にある韓国資産の凍結、韓国人の入国制限などで、韓国が友好国ではなくなる。これが、今一番大きな問題であるが、レーダー照射問題を話題にして、その背後にある重大な問題を隠している。日本の報道機関の劣化は、優先順位を間違えているし、日本の評論家も小さな問題を大げさにするより、大きな問題を取り上げてほしいものだ。物事の鼎が問われている。

国内政治

橋下徹氏が小沢一郎自由党党首と組み保守新党を立ち上げに動くという仰天なニュースが出てきたが、これは面白いかもしれない。7月の参院選挙というより、少なくとも次の衆議院選までにはできてほしい。

自民党のアベノミクスが失敗したら、自民党ではない野党が政権を取ることが必要になる。しかし、枝野立憲民主党の何でも反対に違和感を持っている人は多いし、最重要な経済政策が見えない。そして、この6年間の経済金融政策で、日本の状態は難しさを増している。この難しい経済金融状況で、枝野さんなど経済音痴に政治は、できないし、やったら、今以上に日本は衰退貧困化する。

消費税反対で増税反対となると、社会福祉削減しかないが、それも反対となり、現実政治が見えない。この政党に政権を委託したいとは思わない。反対党でしかない。

一方、安倍政権は、景気後退期の経済政策をまともに考えてこなかった。その付けが出る。世界経済の減速で円高になり、企業の利益は減り、景気が後退することが想定できる。この時、本来であれば、財政政策や金融政策を総動員して円安にして景気を維持させる必要があるが、それを行うことができない。

残された道は、統制経済にして景気後退を軽くすることだけである。消費増税も行わず、外国人労働者も入れずに、賃金水準を維持して国内消費を落とさないことだ。建設業界も景気後退になると工事がなくなる。そして、ハイインフレにして、累積国債を軽くして、次のチャンスを待つしかない

ここまで来ると、残念ながら、今までのような安易な道はない。日本はある程度貧困化することは確実であるが、その貧困度を軽くすることである。

このため、自民党と交代可能な保守新党は良いアイデアである。さすが、機を見るに敏な橋下氏である。この橋下さんを核に、保守的な国会議員や維新の会などを糾合して、その上に国民民主党、公明党も説得して、参加してもらえば、自民党に勝てることになる。

そのためには、7月までに大きな景気後退になることであり、そうさせないためには、参議院選までは、景気を維持させることが必要になる。どちらにしても、景気後退が起きるかどうかが勝負のかなめになる。しかし、次の衆議院選挙では、橋下氏の政党が活躍できると見ている。

さあ、どうなりますか?

image by: Evan El-Amin / Shutterstock.com

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【著者】 津田慶治 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎月 第1〜4月曜日 発行予定

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