昨年11月に仙台市で起きた小学生女児と母親の無理心中を巡り、先日、女児の父親がその原因はいじめにあるとして謝罪を求める記者会見を行いました。なぜ母娘は命を断つところまで追い詰められてしまったのでしょうか。健康社会学者の河合薫さんは自身のメルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、その一因に「母親の孤立化」があると分析するとともに、周囲の「気になる親子」への積極的な声掛けを呼びかけています。
※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2019年1月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:河合薫(かわい・かおる)
健康社会学者(Ph.D.,保健学)、気象予報士。東京大学大学院医学系研究科博士課程修了(Ph.D)。ANA国際線CAを経たのち、気象予報士として「ニュースステーション」などに出演。2007年に博士号(Ph.D)取得後は、産業ストレスを専門に調査研究を進めている。主な著書に、同メルマガの連載を元にした『他人をバカにしたがる男たち』(日経プレミアムシリーズ)など多数。
母親を孤立させないで!
またもや痛ましい“事件”が起きてしまいました。
去年11月、仙台市で小学2年の女の子と母親が無理心中したのは学校での娘へのいじめが原因だとして、女の子の父親が市教育委員会に対し、第三者委員会を設置して学校側の対応などを調査するよう求めたと報じられました。
昨年5月、女の子がいじめに遭っていると訴えたため、両親は学校に相談。担任らが仲直りの握手をさせたものの、その後もいじめは続き、長女は頭痛や腹痛を訴えて校長室に登校するようになったそうです。
夏休みが終わる前には「いじめられてなにもいいことないよ しにたいよ」とメモに書いていたと言います。
両親は校長や市教委に何十回も相談していたのですが、「何ら解決となる対応をしなかった。妻は絶望していた」とし、女の子と母親が死亡した直後も、「校長から連絡が3回あったが、面会は断った。それ以降の連絡はない」と述べていました。
いじめ、自殺、学校、教育委員会――。これまでも大切な命が失われるたびに目にしてきたワードですが、母親と女の子はどれだけの涙を流してきたのか。想像するだけで胸が詰まります。
ほんのちょっと、本当にほんのちょっとでいいので、もう一歩、女の子と母親に寄り添ってくれれば、最悪の事態を防ぐことができたんじゃないかと思えてなりません。
“お母さん”は子どもと接する時間が圧倒的に長い上に、学校への対応、家事、自身の仕事もこなさなくてはなりません。そんな“お母さん”だからこそ、余計に子どもの感情の動きに敏感になります。
自分を責め、誰にも弱音を吐くこともできず、近くに頼れる両親や親戚、近所の人もおらず、多くの母親が「孤立化」してしまうのです。
おまけに、ネットや育児本が充実しすぎて、子育ての「正解」なるものが世の中に溢れ、子育ての正論に苦悩する母親も増えてきました。
約7割の母親が育児で孤独感を感じ、9割以上が育児にストレスを感じているとする調査結果もあるほどです。
以前、不登校の子どもを持つ母親たちをインタビューしたときも、母親の言葉に耳を傾けば傾けるほど、複雑さと闇の深さと事の重大さを痛感させられました。
母親へのサポートをいかにするか?即座に答えのでる問題ではないかもしれませんが、今回の父親の勇気ある行動で、何か少しでも解決の糸口が見つかればいいし、もし、みなさんの周りに「気になる親子」がいたら、おせっかいでもいいので声をかけてください。
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※本記事は有料メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』2019年1月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
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2018年12月分
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※『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』(2019年1月23日号)より一部抜粋