今日の運勢はどうでしたか? ◯チャンネルの占いはいまいちだったけど、△チャンネルは良かったからオッケー。そんな風に忙しい朝でも占いコーナーのチェックだけは欠かさないという女性は多いようです。メルマガ『8人ばなし』の著者・山崎勝義さんは、男性より女性に占い好きが多い理由を考察。占いに女性が求めているものから、求められる男性になるためのヒントを教えてくれます。
女性と占いのこと
一般的に男性よりも女性の方が占い好きと言われる。実感としてもそんな気がする。
この性差に関しては、おそらく脳科学的アプローチでそれなりに合理的な説明ができるにはできるであろう。ただそういった、謂わば生物学的事情よりも、現実に生きる者のリアルな経験として「本当にそうだよな」と首肯できるところが面白い。その辺のところをやや口幅ったく言えば、社会学的事情あるいは心理学的事情とでもなるのであろうか。
それにしても、女性たちの周りには占いが溢れている。雑誌、テレビ、ネット、とメディアが多様化してもそれは変わることはない。興味深いのは女性誌や女性向けサイトとは違い、どちらかの性別のみに向けてという訳でもないテレビ番組でさえ占いコーナーだけは女性向けに作られているというところである。
それは例えば「今日のラッキーアイテム」ひとつとってみても、ファッション系のアイテム(つまりは男からは縁遠い物)が多いことからも分かる。そもそも朝の忙しい時に自分の星座の運勢が発表されるまでテレビの前で待つなど、たとえそれが1、2分のことであっても男ならまずあり得ない。
では、世の女性たちは占い師の言うがままか、というとそうでもない。人生の重要な局面、例えば進学、就職、結婚、転職等々においては占いなど考慮にすら入れてはいない。どんなに神妙に聞いていても彼女たちは自分の将来や未来と占いは別次元のものと(当然と言えば、当然だが)分かっているのである。
それでは一体何が嬉しくて、あるいは楽しくて占いに興じているのだろうか。そもそもその魅力は何なのだろうか。思うにそれは、今の自分そして今までの自分への共感ではないだろうか。つまり、これからのことではなく、今までのことを言い当ててもらうことが嬉しいのではないだろうか。
例えば「あなたは普段は優柔不断ですが、こだわるべきところでは決して譲らない性格である」とか「あなたはロマンティストだが、それだけに現実とのギャップに悩まされる」とか、一歩占いの場から離れてみれば誰にでも当てはまりそうな当たり前のことを改めて目の前の他人から言われることが嬉しいのである。
こう言ってしまうと、何だかくだらないことのようにも聞こえるがそうではない。彼女たちは、自分のことを聞かされているようで、その実自分のことを聞いてもらっているのである。このことは鏡写しの自分を見ているのにちょっと似ている。
そもそも閉鎖的対面空間においては、相手の言うことに共感さえできれば、たとえそれが一方的な物言いだったとしても、それは即ち共有となる。共有である以上は、相手の言葉は同時に自分の言葉でもある。先に「自分のことを聞かされているようで、その実自分のことを聞いてもらっている」と言ったのはこの意味である。つまり、評判の占い師というのは、評判の聞き上手ということである。
これが重要なのである。一般的に言われていることだが、女性は男性よりも社会性、平たく言えば人間関係を重んじる傾向にある。故に、それを踏み壊すリスクを冒してまで自己の意見陳述をすることは敢えてしない。そんな彼女たちにしてみれば、聞き上手であること自体有難い存在なのであろう。実際占いとは名ばかりで、その実人生相談であることが多いのではないだろうか。
とすれば、世の男たちももう少し共感の気持ちをもって彼女たちの言葉に耳を傾けさえすれば、モテるようになる、とまでは言えないが、少なくてもいくらか重宝がられるのではないだろうか。
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