これまでにない北朝鮮寄りの政治姿勢と国内経済政策の不調で、韓国の文在寅大統領の支持率低下が止まりません。そんな文大統領が切り札として期待していた南北経済協力事業のひとつである開城工業団地の再開も、米朝首脳会談の決裂により暗礁に乗り上げているのが現状ですが、「大統領弾劾、逮捕」の可能性を示唆するのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』にその根拠を記すとともに、「米韓首脳会談が大きなターニングポイントになる」との見方を示しています。
※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年4月9日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【韓国】米韓首脳会談で文在寅は亡命申請?
● 韓国首相「経済環境が厳しい…民生・企業はさらに苦しくなるだろう」
韓国の李洛淵(イ・ナギョン)首相は、4月4日、「韓国経済の内外環境が厳しい。今年1-3月期の輸出が振るわず、2月の生産・消費・投資がいずれも減少した」とし「それによって民生も企業もさらに厳しくなるだろう」と話しました。
文在寅政権の経済政策が荒唐無稽であることは、はじめから分かっていました。文在寅政権は、朴槿恵政権批判で民衆を煽って誕生した左翼政権ですが、人気取りのために急激な最低賃金引き上げを行ったのが、致命的でした。
なにしろ、2018年には前年の16.4%、2019年はさらに10.9%に最低賃金引き上げたのですから、企業の業績が急速に悪化するのは当然でしょう。文在寅大統領は最低賃金の引き上げで景気が良化すると主張していましたが、実体経済が上向いていないのに、賃金だけ、しかもこれほど大幅に上げれば、経済がおかしくなるのは当然です。
無理な目標を押し付けて、経済をガタガタにしてしまうというのは、まるで毛沢東の大躍進政策を見ているようです。大躍進政策は、毛沢東が「3年以内にイギリスを追い越す」と宣言し、不可能な農工業生産ノルマを生産者に課したことで、水増し報告が横行し、その結果、経済がボロボロとなったとされています。
文在寅政権は、一応は民主主義によって成立しましたが、「積弊清算」の掛け声の下、保守派や守旧派を弾劾して逮捕・失脚に追い込んでいます。徴用工問題の判決を遅らせたということで、逮捕された前最高裁長官なども、そのいい例でしょう。
最低賃金の引き上げにしても、これに反対し、守らない企業はどんどん潰し、経営者は逮捕するという、無言の脅しがあるわけです。しかし、それでは企業は成り立たなくなってしまいます。もちろん最低賃金引き上げは、韓国国内の外資企業や、その傘下企業にも適用されます。おそらく今後、韓国からは自国企業も外資企業もどんどん逃げ出すと思われます。
それでも文在寅大統領は、国内外で北朝鮮との統一ムードを高め、北朝鮮への制裁解除と同時に、経済特区を共同で開設して外資を呼び込もうという思惑があったと思います。だから、その象徴となる開城工業団地の再開を強く望んでいたわけです。今年1月10日に行った年頭の演説で、文在寅大統領は開城工業団地再稼働と金剛山観光の再開を打ち出しました。朝鮮半島がこれから大きく発展するという期待が高まれば、韓国企業にとっても大きなチャンスですし、外資もどんどん流入してきます。
世界的な投資家で冒険家としても知られるジム・ロジャースも、「今後、10年、20年は朝鮮半島に世界から注目が集まる。南北統一は間もなく実現する」と発言していますから、文在寅もさかんに国際社会に対して、北朝鮮への制裁解除を働きかけていたわけです。
ところが、2月の米朝首脳会談は決裂に終わってしまいました。その原因についてアメリカのポンペオ国務長官は、北朝鮮側が制裁の全面解除を求めたからだと述べました。さらにこの米朝首脳会談後に、アメリカとの意見調整を行おうと思っていた韓国外交部は、アメリカ側から「開城工業団地再稼働問題と金剛山観光再開と言及するつもりなら、ワシントンに来ないでもらいたい」と釘を刺されてしまいました。
さらに、4月11日の米韓首脳会談を前に、ポンペオ国務長官はテレビインタビューで改めて「非核化が現実にならなければ、制裁解除はしない」と発言しました。これは北朝鮮のみならず、首脳会談前の文在寅に対する明確なメッセージです。
● (朝鮮日報日本語版))米国が南北にメッセージ「非核化実現前に制裁は解除しない」
ここで文在寅政権は、詰んでしまったと言ってもいいでしょう。南北統一で韓国経済を盛り上げようと思ったのに、その思惑は完全に外れてしまいました。レーダー照射問題や徴用工・慰安婦問題で日本に強気に接していたのも、北朝鮮問題を楽観視していたからです。
4月5日に発表された調査結果では、文在寅大統領の支持率は過去最低の41%で、不支持は過去最大の49%に達しました。不支持の最大の理由は「経済問題」(38%)ですが、その次が「北朝鮮との関係への偏り、親北性交」(14%)だったそうです。
● 文在寅大統領の支持率、41%で最低を更新 不支持は49%で最高
今年の3月に国連が発表した世界の「幸福度」では、日本は156カ国中58位で、韓国の54位よりも低かったことが話題になりました。もともと日本人は自虐的で「マゾ」的な性質があると私は主張してきましたから、「自分は幸福ではない」と考える人が多いのかもしれませんが、どう考えても、日本が現在の韓国より不幸であるはずがありません。
しかも、冒頭のように韓国の首相自らが、「これからますます経済が悪くなる、国民生活は厳しくなる」と宣言しているのですから、まず間違いなく経済は悪化します。
実際、サムスンの2019年1~3月の営業利益は前年度の60%減という、大幅減益となりました。サムスン電子と現代自動車の売り上げ合計で韓国GDPの20%を占めるといわれていますが、このサムスンの減益は、韓国経済にも大きな衝撃を与えています。
● 韓国 サムスン電子 営業利益60%減少 半導体事業落ち込み続く
朝鮮半島は近代に入ってから、2度にわたって国家破産がありました。李氏朝鮮末期の国家破産では、日本は列強から「日韓合邦」を押し付けられ、日本は「東洋の永久平和」という大義名分で国家破産した朝鮮を引き受け、年に朝鮮歳出の平均15~20%の産業投資金を提供して朝鮮人を救済。これにより朝鮮半島は1940年代に産業国家へと変貌しました。
戦後は、1997年のアジア金融危機により韓国が破産、IMF管理下に入りました。これにより韓国企業の外資比率が高まり、現在の韓国の企業収益の半分以上はIMF出資国に支払われています。
これから起こる3度目の破産では、いったいどこの国が韓国を引き受けるのでしょうか。
朝鮮半島の歴史を見ると、この地域の人々や国の生き様は「事大」しかありませんでした。もちろん朝鮮半島の人々はこれに反発し、北朝鮮に「主体思想」があると反論するかもしれません。
しかし、中華帝国への事大では文化、蒙帝(モンゴルの大元帝国)からは衣食住、「日帝36年」からは産業をパクってきました。世宗大王が創出したハングルも、じっさいにはモンゴルのパスパ文字をパクったものです。それでも両班は自らの利益独占のため、漢字を使い続けてきたわけです。
中国の習近平国家主席は、2017年4月の米中首脳会談で、「韓国は中国の一部だった」と発言しましたが、それはかつての朝貢国だったからだけではありません。それは朝鮮半島にはオリジナルのものがほとんどないからです。実際、ベトナムにはそのような言い方はしていません。
韓国経済に変化が激しいのは、外華内貧で感情優先の国であることも、大きく関係しています。文在寅大統領は北朝鮮のスパイとまでみなされるほどの従北姿勢ですが、南北統一のためには韓国経済の悪化は、むしろ格差解消のために望ましいことなのかもしれません。
ただ、文在寅政権の支持率はさらに下落するでしょうし、そうなれば、韓国政界の常である、「易姓革命」が起こる可能性もあります。つまり、大統領弾劾、逮捕という流れです。
実際、文在寅の娘と孫が東南アジアに移住したことが今年1月に明らかになり、韓国国内で問題となりました。現役大統領の家族が海外移住するのはきわめて異例であり、一部では亡命の準備だともいわれています。
いずれにせよ、4月11日に開催される米韓首脳会談が大きなターニングポイントになると思います。かつてハワイに亡命した李承晩大統領のように、もしかすると文在寅大統領もトランプ大統領に対して、いざというときの亡命要請をするかもしれないと、半ば冗談ではありますが、考えています。
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