韓国を代表する企業サムソン電子で、5月21日から18日間にわたる総ストライキが予告されています。成果給の財源と支給基準をめぐる労使間の対立は依然として埋まらず、もしストライキが現実となれば、損失額は30兆ウォン規模に達するとの懸念も広がっています。一方で社員の匿名コミュニティ「Blind」には「もうやめてくれ」「適正な線で妥結を」という現役社員の悲痛な声が相次ぎ、世論の約70%も組合の要求を「過度」と評価しています。今回のメルマガ『キムチパワー』は、サムソン電子の労使交渉の最新動向と社内の生の声、そして今後のシナリオについて詳しく解説していきます。
このまま突入したら皆死ぬ。
サムソン電子の労使が総ストライキ前の最後の交渉と評される「事後調整」手続きに入る中、社員の間で「適切な線で合意すべきだ」という声が高まっていることが分かった。
成果給の財源と支給基準をめぐる労使間の見解の相違は依然として埋まっていないが、ストライキが現実となった場合に数十兆ウォン規模の損失が生じかねないという懸念が広がり、強硬闘争よりも実利的な妥結を求める社内世論に勢いがついている雰囲気だ。総ストライキに入るとしたら、5月21日から18日間のストライキが予告されている。
10日、業界によると、サムソン電子の労使は11日から2日間にわたり事後調整手続きを進める。事後調整とは、労働争議の調整手続きが終了し組合が争議権を確保した状態で、労使双方の合意のもと労働委員会が改めて紛争解決を仲裁する制度だ。超企業労働組合サムソン電子支部は雇用労働部の勧告を受け入れ、事後調整に応じることを決めた。会社側も「事後調整に誠実に臨む」との立場を示した。
労使は昨年12月から約4か月間、2026年賃金協約の交渉を進めてきたが、成果給の基準をめぐって意見の隔たりを縮められなかった。組合は、超企業労組・全国サムソン電子労働組合・サムソン電子労組「同行」などで構成する共同交渉団を共同闘争本部へ改編し、争議権を確保した。その後、サムソン電子の全栄賢(チョン・ヨンヒョン)代表取締役副会長と組合との会談により交渉が再開されたものの、成果給上限の廃止など核心的な争点で合意点を見出せず交渉は再び中断された。
労使対立の焦点は成果給の財源
交渉最大の争点は成果給の財源と支給基準だ。会社側は、売上・営業利益で国内業界首位水準の成果を上げた場合、メモリ事業部の社員に競合他社比で同等以上の支給率を保障する「特別報奨」を提案した。この場合、成果給の財源として営業利益の10%以上を活用することになり、競合他社より高い水準だと会社側は説明している。
今後も今年と同水準の経営成果を達成すれば特別報奨を支給するという案も提示した。さらに総計6.2%の賃金引き上げ率、最大5億ウォンの社員住居安定支援制度、子女出産慶祝金の引き上げ、CLごとのサラリーキャップ引き上げなど福利厚生パッケージも提示した。
一方、組合は営業利益の15%を成果給の財源として確保し、制度変更により成果給の上限を恒久的に廃止すべきだという立場だ。サムソン電子の今年の営業利益が約300兆ウォン前後と見込まれる中、約45兆ウォンを成果給として支給せよという計算になる。組合が予告した総ストライキの期間は今月21日から18日間で、社内外では総ストライキが現実となった場合、損失額が30兆ウォン水準に達するという懸念の声が上がっている。
Blindで広がる社員の悲鳴
事後調整を前に、サムソン電子内部の雰囲気にも変化が感じられる。サムソン電子の社員が利用する匿名コミュニティ「Blind」には、組合指導部が強硬路線を維持するのではなく現実的な線で合意すべきだという書き込みが相次いでいることが確認された。社員たちはストライキ現実化による多大な損失への懸念と、組合の運営方式への疲労感を同時に訴えている。
あるユーザーは「数十兆がどれほどの額か、まったく実感が湧かない。ストライキまで行ったら本当にリスクが大きすぎる」とし、「成果給が削られるのは困るから、どうか交渉がうまくいってほしい」と記した。続けて「スンホさん(崔承鎬・超企業労組委員長)もここまでよくやってきたんだから、あまり意地を張らずに、もらえるだけもらって出てきて」「今は四方八方からいろいろ言われて正気じゃないだろうけど、こういう時こそ全サム労(全国サムソン電子労働組合)が少し出てくれないと」と書き添えた。
別のユーザーは「そろそろ全サム労が解決してくれ」というタイトルの書き込みで「ストライキがもう本当に間近だね。いざストライキを強行したら損失が30兆近くになるって、事が大きくなりすぎるんじゃないか」と記した。続けて「調整が決裂したら何か予想外の行動に出るかもしれないし、全サム労が交渉代表として適正な線でお互いウィンウィンになる形でうまく締めるのも一つの方法だと思う」と付け加えた。
経済全体への打撃と冷ややかな世論
ストライキが現実となった場合、その被害は社内にとどまらないという懸念も大きい。サムソン電子の半導体事業は国内輸出と先端製造業エコシステムにおいて絶対的な比重を占める。生産に支障が生じれば、協力会社・顧客企業・株主・国民経済全般へ波紋が広がりかねないという指摘だ。JPモルガンは最近のレポートで、18日間のストライキが続いた場合、DS部門の売上が最大5億9000万ドル(約8兆ウォン)減少する可能性があると試算した。シティ・リサーチもストライキリスクを理由にサムソン電子の目標株価を32万ウォンから30万ウォンに引き下げた。
世論も組合に一方的に友好的なわけではない。リアルメーターが先月27~28日に実施した調査では、回答者の69.3%がサムソン電子のストライキについて「無理な要求で不適切だ」と答えた。世論調査公正が先月26~27日に実施した調査でも、回答者の74.3%が組合の営業利益15%成果給要求を「過度な要求」と評価した。
業界では、組合指導部が今回の事後調整でどのような選択をするかによって、今後の事態の行方が決まると見ている。財界関係者は「すでに社員自身でさえ『もうやめてくれ』と叫んでいる状況で、組合指導部がまたもや名分論に埋没して事後調整まで決裂させるなら、それは組合員の意思を無視した無責任な行為と評価されるしかない」とし「組合指導部も現場の声に耳を傾け、責任ある姿勢で交渉に臨むべきだ」と訴えた。【ここまで韓国経済 ホン・ミンソン記者コラムベース】
匿名コミュニティ「Blind」とは?
文中にあった「Blind」とは、韓国発の職場人向け匿名コミュニティアプリ。基本的な仕組みは、会社のメールアドレスで本人確認を行い、実際の在職者であることを認証したうえで匿名で投稿できる。投稿者の名前は表示されず、所属会社名だけが表示される(例:「サムソン電子」「カカオ」など)。同じ会社の社員だけが見られる社内掲示板と、全ユーザーが見られる掲示板の2トラックがある。
特徴としては、在職者限定のため、情報の信憑性が比較的高いとされる点、給与・待遇・社内政治・経営陣への不満など、普段は言えない本音が飛び交う点、労使交渉や企業スキャンダルの際に内部の生の声を伝える情報源としてメディアにもよく引用される。韓国発だがアメリカにも展開しており、シリコンバレーのIT企業社員の間でも広く使われている。日本ではあまり普及していないが、類似サービスとしては「JobTalk」などがある。
サムソンのストライキは解決するのか?完全な組合側の要求実現は難しいものの、何らかの妥協点で合意に至る可能性は高いと思われる。理由は、世論の約70%が組合に批判的で社員自身も損失を恐れており、指導部が強硬路線を貫くほど自分たちの立場が弱くなるという構造があるからだ。あくまで一つの見立てであり、実際の交渉の行方は流動的だ。
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