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タンカー防衛有志連合に参加しなければ尖閣が中国に取られる理由

イランとの友好関係崩壊や国内の反発を懸念してか、タンカー防衛有志連合に参加表明ができない日本。ついに米国から名指しで参加要請がなされ始めています。日本はこの先、どの方向に舵を切るべきなのでしょうか。国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんは自身の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』で、日本の国益のために必ず参加しなければならないとし、その理由を記しています。

歴史の岐路~タンカー防衛拒否で日米同盟は崩壊へ???

私たちは、「歴史の中」で生きています。その私たちは、「嗚呼、今歴史的なことが起こっている」とは、なかなか自覚しにくいものです。後になって、「嗚呼、あれは『歴史的』だったのだ…」と気づくことになる。

いえいえ。後になっても気がつかないことも多いのです。たとえば2012年11月、ある歴史的事件が起こりました。中国の代表団がモスクワでロシアと韓国に反日統一共同戦線をつくろう!」と提案したのです。

証拠→「反日統一共同戦線を呼びかける中国

私は、「嗚呼、日中戦争がはじまった!」と嘆きました。2015年3月、「AIIB事件」が起こりました。イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、スイス、イスラエル、オーストラリア、韓国などなどいわゆる「親米諸国」が、中国主導の「AIIB」に参加した。アメリカが制止したにも関わらずです。私は、「嗚呼、米中覇権戦争がはじまる…」と思いました

さて、日本は今、再び「歴史の岐路」に立たされています。立たされているのですが、一般国民はもちろん、おそらく安倍総理も政治家の皆さんも、「これは歴史的岐路だと認識していない。なんでしょうか?これです。

ポンペオ氏、日本政府に「決断」迫る 「有志連合」結成へ各国に“名指し”参加要請

夕刊フジ 7/27(土)16:56配信

 

マイク・ポンペオ米国務長官が、日本政府に「決断」を迫った。緊迫化する中東・ホルムズ海峡の航行の安全確保を目指す「有志連合」結成に向け、日本を名指しして参加を強く促したのだ。日本政府は現状では慎重な姿勢だが、多くの原油を同海峡経由で輸入している以上、何もしないという選択肢を選ぶことは難しそうだ。

 

「原油などが通過するこの海域で利益を得ているすべての国は、自国の利益だけではなく、自由で開かれた航行を守るために、有志連合に参加する必要がある」

 

ポンペオ氏は25日、米FOXニュースのインタビューにこう答えた。

 

英国、フランス、ドイツ、ノルウェー、日本、韓国、オーストラリアの順に国名を挙げ、その他、数カ国に参加を呼びかけていると語った。

RPEでは前々から書いていましたが、「ついに来たかという感じですね。RPEは、「必ず参加するべきと主張しています。第1の理由は、アメリカの主張は正論だからです。誰がどう考えても、自国のタンカーは自国で守るべきでしょう?第2の理由は、日本が有志連合に参加しないことで、日本のタンカーが危険にさらされるからです。米軍は、今後「他国のタンカーを守らない」と宣言しています。

中央軍は19日の声明で、同構想に基づく「センチネル(番人)作戦」を策定していると発表。有志連合の枠組み形成で監視情報の共有などが進めば「参加国それぞれが自国船舶を護衛することが可能になる」としている。ロイター通信は18日、国防総省高官の話として「米軍は他国船舶を護衛しない」方針と伝えた。
(毎日新聞 7月20日)

日本のタンカーだけ、「丸腰」で旅をさせるのでしょうか?金を払って、他国に防衛させるという選択肢もあるかもしれません。これ、国際社会は、「さすが日本は平和主義の国!」とは思いません。「日本人が一人死ぬのはイヤだが、外国人が死ぬのは、OKなんだな」と思われ、日本は狡猾な国と軽蔑されることになります。

第3の理由。これがもっとも大事です。有志連合に参加しないことで日米同盟は大きく傷つきます。トランプさんは、「ホント日本は使えねえ、自己中な国だ日米同盟維持する意味全然ないよね」と思うでしょう。そして、それ(参加しない日本は自己中)は事実です。イギリスは、日ロ戦争時、大いに日本を助けてくれました。同盟国だったからです。しかし、イギリスが第1次大戦でピンチに陥った時、日本はイギリスの陸軍派兵要求を、むげに断ったのです。イギリスは、「狡猾な日本と同盟を維持する意味なし!」と判断。日英同盟は破棄されることになった。

今の日米同盟も同じです。日本が、「自国のタンカーを防衛するという、「当たり前の役割を果たせなければ、日米同盟は崩壊に向かうでしょう。そうなれば、尖閣だけでなく沖縄も中国に奪われる可能性が高まります。

第4の理由は、有志連合参加で、日本は「軍事の自立に一歩近づく。ほとんどの人は、「自分の国は自分で守るべきだ」と感じているでしょう?しかし、いきなり米軍を追い出したら、どうなりますか?日本より軍事費が5倍多い、核兵器を持つ、「日本には沖縄の領有権はない!」と宣言している中国が、速やかに尖閣、沖縄を奪うでしょう。だから、軍事の自立は段階的に行うべきです。

「自国のタンカーを防衛する」

これは、「軍事の自立のはじめの一歩としてはちょうどいいのです。

消極的な日本政府、なぜ?

ところが、現状日本政府は参加に消極的」なのです。なぜ?

有志連合、慎重に対応=日本政府、欧州の動向見極め

時事 7/28(日)7:21配信

 

中東ホルムズ海峡などの安全確保を目的とする有志連合への参加について、日本政府は慎重に対応を検討する方針だ。緊張緩和に向けた外交努力を優先させてきた経緯もあり、自衛隊派遣には消極論が根強い。欧州主要国の動向やイラン情勢の推移を見極めつつ時間をかけて判断する。

要する伝統的な友好国である「イランに気を使っている」のです。これ、どうすればいいのでしょうか?「6月13日に日本の会社が運航するタンカーが攻撃されたので、やむを得ない。イランを対象としたものではない」といえばいいのです。

こんな理屈が通用するのでしょうか?

6月13日の事件について、アメリカは、「イランの仕業!」と即断しました。しかし、この説を支持しているのは、イギリス、イスラエル、サウジアラビア、アラブ首長国連邦などだけで、少数派。そして、日本も「イラン犯人説」を支持していません。もちろん、イラン自身も否定しています。だから、「日本は、6月のタンカー攻撃の犯人をイランだとは思っていないしかし実際にタンカーは何者かに攻撃されたわけで防衛しないわけにはいかない」と説明すればいい。

「ポチでない」安倍さん、変な勇気を出さないでください

野党の皆さんは、「安倍はトランプのポチだ!」などと批判します。これ、全然事実と違います。たとえば、

こんな感じで、二人の主張はことごどく違っている。いったい、安倍さんのどこが「ポチ」なのでしょうか?

しかし、今回のケースでは、「だから心配」なのです。安倍さんが、ここで「変な勇気」を出して、「有志連合には参加しないことを決めました!」と宣言する。結果、無意識に、「日米同盟を破壊して日本がまた敗戦する原因をつくった首相」に転落するかもしれません。

安倍総理、なんでもかんでもトランプさんに反対すればいいというものではありません。今回の件は、必ず参加すべきなのです日本の国益のために、速やかに決断していただきたいと思います。

image by: 防衛省 海上自衛隊 - Home | Facebook

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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