日々の仕事といえば、次から次へと生じる問題をとりあえず解決するだけでいっぱいいっぱい、という方も多いかもしれません。今回の無料メルマガ『がんばれスポーツショップ。業績向上、100のツボ!』では著者の梅本泰則さんが、「フレームワーク」で問題を整理し、根本の原因に立ち返って問題解決する考え方を紹介しています。
フレームワークで問題解決をする
あなたのお店では、毎日いろいろな問題が起こります。
- 注文してあった商品が入荷しない
- お客様から厳しいクレームが寄せられた
- 従業員がお店を辞めたいと言ってきた
など、さまざまです。そのたびに、あなたは問題を解決しなければなりません。そのときこんな作業をしているのではないでしょうか。
- メーカーさんに連絡をして入荷日の確認をする
- お客様にお話をよく聞いてクレームに対応する
- その従業員と問題を話し合う
これによって当面の問題解決はできます。しかし、それは本当の問題解決だといえるでしょうか。一時的に解決しても、また同じような問題が起こる可能性があります。なぜなら、問題が発生する根本原因を追及していないからです。つまり、この場合ならば
- 予定通りに商品が入荷しなかった原因は何か
- どうして今回のお客様のクレームにつながったのか
- 従業員が辞める原因はどこにあるか
といったことを突き詰め、出てきた原因に対して一つずつ対策を打ちながら問題解決を図っていくことが大切です。こうした場合、原因を整理するための「フレームワーク(枠組み)」があると考えるのに便利です。
例えば、今回の場合、自店の問題、メーカーさんの問題、物流会社の問題の3つに分けて考えます。そして、それぞれ担当者の問題、仕組みの問題と分けて考えましょう。すると全部で6つの「枠組み」で整理することが出来ます。これがフレームワークで問題解決をするということです。
いかがでしょうか。では、もう少し重要な問題について、フレームワークを使って整理してみます。
原因の整理
それは売上と利益の問題です。あなたにとっては最も関心の高い問題ではないでしょうか。最近、Aブランドの売上が下がってきました。お店にとっては主力商品なので大変です。その原因を考え対策を打たなくてはなりません。
実は、この原因については「4P」のフレームワークを使うと簡単に整理が出来ます。マーケティングの「4P」ですね。「商品、価格、流通、販促」に分けて戦略を考えるときに使います。売上と利益が下がった原因をこの4つの「枠組み」で考えてみましょう。例えば「商品」による原因は次のようでした。
- Aブランドの人気に少し陰りが出てきた
- ターゲットとしていた顧客層が減って来た
次は「価格」です。
- 他店では当店より1割以上安く売られている
- 旧品番の在庫商品を値下げ処分した
三つ目は「流通」。
- ECショップが増えてきたため、お客様が流れている
- 問屋さんからの商品情報が減ってきている
最後は「販促」です。
- お客様限定のキャンペーンは、購買につながらなかった
- HPでAブランドの紹介を行ったが、まだ効果なし
といったように、4つの枠組みで原因が挙げられました。今回挙げられたのはそれぞれ2つずつですが、現場で検討すればもっとたくさん出てきます。そして原因が整理されれば、どんな対策を打っていけばよいかが見えてきます。
もちろん、全部一緒に対策を実行していくのはむつかしいです。重要度、優先度の高いものから実行していきましょう。実は私がコンサルティングをしているお客様は、毎月こんな作業を繰り返して業績を上げていっています。
さて、このフレームワークを使ってさらに難しい問題を整理してみましょう。
フレームワークを使う
たとえば、「世の中の変化に対応できない」と頭を抱えている経営者がいます。この「世の中の変化」とはどんなことを言うのでしょう。その変化を整理するためのフレームワークがあります。当メルマガ623号「時流を読まぬ経営者が『ちっとも売上が伸びない』とボヤく滑稽さ」で紹介したPEST分析です。復習してみましょう。
「PEST」とは、政治(Politics)、経済(Economics)、社会(Society)、技術(Technology)のことを表します。つまり、政治、経済、社会、技術に関してどんな変化が起こっているか、また起こると予測されるかということを分析しようというものです。これらの点について、あなたのお店にとって関係のありそうなことを拾い出していきます。
例えば、政治の面では
- スポーツ庁のスポーツ産業政策が強化される
- ESG、SDGsに政治が関与してくる
経済では、
- キャッシュレス社会が大いに進展する
- 中小企業のM&Aが加速する
社会的な側面からは、
・ネット社会による消費者の購買行動が変化していく
・社会全体に環境に対する意識の向上が進む
技術的なことからは、
- インダストリー4.0による商品開発がされる
- AIによる仕事の仕方が変化する
といったことです。こうした変化に対して、どんな手を打っておくかを考えます。例えば、
- キャッシュレス販売に対応する
- 地球環境に配慮した商品の取り扱いを増やす
- デジタルマーケティングの手法を強化する
- 販売管理、商品管理、顧客管理、会計処理などのPCシステムを導入する
といったことになるでしょうか。これが「世の中の変化」に対応するための方法の一つになります。このようにフレームワークを使うと、問題が整理されて対応策が見えてくるのです。
有名なフレームワークはまだあります。「SWOT分析」は「事業環境を見る」ために使うと便利なフレームワークです。「3C分析」も「事業環境を見る」ことが出来ます。「PPM」は「事業の組み合わせを考える」ためのもの。「マッキンゼーの7S」は組織戦略を考えるときに使います。これらのフレームワークを知っていて損はありません。あなたのお店の問題を解決するために活用しましょう。
■今日のツボ■
- 問題を解決するためにフレームワークを活用する
- 「4P」は売上や利益の増減要因の分析に使える
- 世の中の変化に対応するためのフレームワークもある
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