さまざまな福祉活動に関わるジャーナリストの引地達也さんが、その活動の中で感じた課題や、得られた気づきについて伝えてくれる、メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』。今回は、12月から2月にかけて全国6ブロックで開催される「共生社会コンファレンス」について。引地さん本人が関わる関東甲信越のプログラムは、2月14日に東大本郷キャンパスで実施。苦労しながらも、内容が固まってくるにつれ、その成果への期待感が高まっているようです。
全国で展開する共生社会コンファレンスの可能性を信じて
今年度の文部科学省事業である「共生社会コンファレンス」は全国6ブロック地区に分け、共生社会に向けた学びの可能性を広く伝え、自治体への理解や広く市民に知ってもらうのが目的としている。各地区で実施団体が中心となって文部科学省の共催として行う事業であり、それぞれの地域の特色と採択団体のカラーが反映されているから、多様なプログラムとなっている。
私は関東・甲信越ブロックの実施団体「一般財団法人福祉教育支援協会」として文科省とともに東京大学教育学研究科を共催にして行う予定だ。研究や実践、当事者を融合させた上で先駆的な取組を紹介しながら、その啓蒙的な効果と担い手を増やすことを目指そうとする中で、私たちが向かうべき方向を確認しながら、関係者の思いを集め、形にする難しさを痛感しながらもだんだんと形が見えてきた。
各地の日程と場所はすでに決定済み。
● 文部科学省主催「共に学び、生きる共生社会コンファレンス」
日程順では、12月1日に東海・北陸ブロックとして「障害者の学びの場づくりフォーラムIN東海・北陸」(実施団体・NPO法人学習障害児・者の教育と自立の保障をすすめる会)でスタート。12月5日に東北ブロックの「共に学び、生きる共生社会コンファレンス 東北ブロック」(実施団体・秋田県教育委員会)、12月21日に「〇(まる)のつどい~共に考えよう!障害理解の促進、学びの場の担い手の育成、学びの場づくり~」(実施団体・愛媛大学)、来年になって1月31日に近畿・中国ブロックの「共に学び、生きる共生社会コンファレンス~障害理解の促進、障害者の学びの場の拡大を目指して~」(実施団体・兵庫県教育委員会)。
そして2月14日に関東甲信越ブロックがあり、最後は2月22日の北海道ブロック「ともに学ぶ共生社会を目指して~社会教育の実践を通じたコミュニティの可能性~」が予定されている。
私たちが進める関東甲信越ブロックのテーマは「共に学び、生きる共生社会コンファレンス~障害理解の促進、障害者の学びの場の担い手の育成、学びの場の拡大に向けて~」としており、「理解促進」「担い手育成」「場の拡大」を明確に打ち出して丁寧に議論していこうという思いが込められ、それは開催趣旨文の目的部分に反映されている。
「第一に、障害者の参加を妨げている社会的障壁や、その解消のための方法について理解を深める(障害理解の促進)。第二に、障害の有無にかかわらず必要な学びが得られる環境を整えるための工夫や考え方の共有を図る(障害者の学びの場の担い手の育成)。第三に、障害者本人の経験やニーズが源泉となるような新しい学びあいの場と豊かな関係性を地域社会に創り出す取組を推進する(障害者の学びの場の拡大)」。これらの言葉を整理するのと同時にプログラム内容が連動するのは当然であり、その当然を効果的に実施するための議論を進めている。
会場は東京大学の本郷キャンパスで、共催として東大も加わることで、障がい者の学びで想起される課題に対して「すべて対応したい」という思いにかられている。結果的にこれまでの障がい者の学習に関する活動や社会運動を踏まえながら、現在の取組を後押しする文脈の中で、「社会教育」「『高等』教育」「重度障がい者向け教育」などの視点のほか、当事者性を意識しながら「『障害』の疑似体験ブース」「当事者研究」「ヒューマンライブラリー」も企画した。
さらに難しい議論は苦手な参加者向けには、現在シャローム大学校が地域で展開している「音楽とコミュニケーションのプログラム」を開催、東京大学内を散策する東大散策ツアーも盛り込んだ。結果的に多種多様になったことで、運営側は少し冷や汗をかいている状態だ。とはいえ、冷や汗も「汗と涙」のうちで、その結晶として何らかの成果が出るはずだと確信している。
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