前回の記事『なぜ、多くの企業の「ハラスメント相談窓口」は名ばかりなのか?』では企業がハラスメント相談窓口を設置する義務があることとその運営の難しさを紹介した無料メルマガ『新米社労士ドタバタ日記 奮闘編』。今回は、さらに踏み込んだ内容として「セカンドハラスメント」について解説しています。
セカンドハラスメント
ハラスメント対策…。セカンドハラスメントという言葉がある。セカンドハラスメントが起こらないようにするには、どんなことに気をつけなければいけないのだろうか…。
新米 「ハラスメント対策で相談窓口って、ホント重要なんですねー」
大塚 「そうよ。信頼関係構築ができたら、相談者の立場を尊重し、ゆっくり丁寧に相談を聴く。なかなか語ってもらえない人もあるかもしれないけど、その場合は、相手の気持ちに寄り添って、言語化をしてもらうようにするの。安易に同意したり、意見を述べたりするのではなく、まずしっかり傾聴することが大事ね」
深田GL 「当事者からしっかり傾聴できた後は、解決に向けて動くことになるけど、申立者の匿名性、事実確認の有無、解決の仕方という3つの観点から、方向性を考えるとよいと思うわ」
新米 「申立者の匿名性っていうのは?」
E子 「一般的には、事実確認も被害者のヒアリングに留まらず、加害者にもしていく。つまり、被害者のことを加害者に公開することになる。その結果、注意や謝罪をしてもらう。そして、配置転換等の解決方法をとる、こんな感じよね」
深田GL 「案件が重たい場合は、加害者に公開するだけでなく、社内など必要な範囲で公開をしていく、事実確認も加害者だけでなく、関係者にも行う、解決方法は、謝罪、配転レベルではなく、懲戒処分にも発展するだろう。でも、何でも解決すれば良いっていうだけでなく、申立てそのものを伏せてほしいって場合もあるんだ」
新米 「……」
深田GL 「その場合は、申立者を明かさない。匿名性を確保する場合は、事実確認自体も難しくなる。その場合は、事実確認を明確にできないけれど、可能な範囲での注意を促すという解決の仕方になる」
E子 「こういう場合は、申立者の希望に基づいてとりあえずは匿名性を確保して対応するけれど、改善が見られなければ、やはり加害者に公開したり、他の方法で進めていくことになったりするでしょうね」
深田GL 「被害が深刻な場合は、申立者を休業させるなど、臨機応変な対応も求められるね」
大塚 「相談窓口も大事だけど、社風も大事ですね」
E子 「本人は懸命にSOSを出しているのに、周りの人がそれに触れないという職場の風潮がある会社も多いとか。職場でパワハラが起きても、会社が認めたケースはごくわずかという、調査結果もあるそうなのよ」
新米 「えっ、そうなのですか?」
E子 「厚生労働省が企業に勤める従業員など1万人に行った調査では、勤務先で受けたパワハラについて会社側が認めたケースは、1割ほどしかなかったらしいの」
深田GL 「さらに、パワハラの予防、解決のための取組を進めることで『権利ばかり主張する者が増える懸念がある』と回答した企業が6割近くにものぼったそうだ」
大塚 「勇気を持って被害を訴えたり相談したりしても、それが理解されず、それどころか逆に非難されてしまうセカンドハラスメントも問題になっていますね」
新米 「どう言うケースをセカンドハラスメントというんですか?」
E子 「ハラスメントを『よくあること』等の理由で放置する、『俺の時はこうだった』と持論を展開して相手の話を聞かない、相手の思い込みとして相談を受けることを拒絶する、『こういうハラスメントがある』と流布する。一般的には、こういったことを指すわ」
新米 「えぇ~!『こういうハラスメントがある』と流布ぅ!?」
E子 「そうよ。そんなとんでもないセカンドハラスメントもあるのよ」
大塚 「セカンドハラスメントには、『被害者にも落ち度があった』ことに焦点をあててしまう、問題の責任を加害者ではなく被害者に求めてしまうそんな考え方があるようですね。女性の社会進出が進んだ今でも、まだ日本では男尊女卑の考え方が根深いことが背景の一つと言われています」
E子 「セカンドハラスメントをしている人は、自分がハラスメントの加害者になっている意識がないことがほとんどのようね」
深田GL 「相談段階では、相談者の話を聞きながら『本当にそんなことがあったのだろうか』『その事実関係は正しいのだろうか』『なぜその時点で対処しなかっただろうか』など、疑問が湧いてくることもあるだろう。でも、ハラスメント被害者のケアのためには、まずは心の重荷を解いてあげることが大切で、細かな疑問は横に置いて、相談者の声に傾聴することを心掛ける。そうすることで、セカンドハラスメントの予防につながると思うな」
大塚 「うーん。そうかもしれませんね。『なんで上司と二人きりになったの?避けられなかったの?』と言われたとか、『(加害者は)そんな人には見えないよ。思い込みでは?』と言われたとか、『社会では(ハラスメントが)往往にしてあるから』と言われたとかねー。了解なしに、大勢の前でハラスメント内容、被害者や加害者がわかるような報告をされるのも最悪」
E子 「『対応を検討しておきます』と言いながら、他の業務に追われて相談されたことを結果的に放置してしまったり、『面倒だな……』という気持ちが出てしまい、無意識のうちに拒絶的、高圧的な態度になったり、相談された話題をうっかり周囲に広めてしまったり……」
新米 「セカンドハラスメントっていってもいろんな角度のものがあるんですね」
大塚 「相談をした人に『話すべきではなかったか?』『どうせこの会社は何もしてくれない』『もう誰も信用できない』といった風に思われたり、絶望的な気持ちにさせたりするとダメですよね」
E子 「何気ない行動が、最悪の場合には自殺や裁判などへとつながってしまうこともあるわ。セカンドハラスメントとして受け止められないよう、会社は重々留意する必要があるわね」
新米 「ホントに…、会社は、ハラスメントを起こされたうえに訴えられるとさらに大変ですね。そういうことが起こらないようにするために、社風も含め、様々な対策、準備が必要だってことですね」
深田GL 「再発防止措置の実施もね」
新米 「そうですね…!」
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