大規模な日本製品不買運動が続くなど反日感情が収まりを見せない韓国で、新たに槍玉に上がったのはユニクロのCMでした。フリース発売25周年を記念する新CMに対して「慰安婦を冒涜したもの」との抗議が殺到し、放送中止に追い込まれる事態となったのですが、これをユニクロ柳井会長の雑誌インタビューでの反日擁護発言に対する「韓国サイドの踏み絵」とするのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんはメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で、なぜ「踏み絵」なのかを解説するとともに、中韓と本気の外交をする際に肝に銘じるべきことを記しています。
※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2019年10月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【韓国】柳井会長の「日本人劣化」発言で、ユニクロは韓国に踏み絵を踏まされた?
● ユニクロの広告に…韓国中小ベンチャー企業長官「非常に腹立たしい」
韓国で不買運動にあっているユニクロですが、今度はそのCMが大反発を受けています。その広告とは、フリース発売25周年を記念するものですが、98歳の白人女性が、13歳の黒人女性から「私の年齢のときには、どのような服を着ていたの?」と問われ、「80年も昔のことは覚えていないわ」と答えるもの。
● ユニクロCM「慰安婦を冒涜している」と批判殺到し中止に 韓国語の字幕で意訳され物議
実際には「そんな昔のことは覚えていないわ」というセリフだそうですが、韓国語の字幕で「80年も昔のことは覚えていないわ」と意訳されたことで、韓国国内で「日帝時代の慰安婦を冒涜するのか」と物議を醸し、ユニクロ不買運動に拍車がかかっているわけです。
ユニクロ側は「慰安婦冒涜というのは全く事実ではない」「いかなる政治的、宗教的な事案、信念、団体とも関係はない」と説明していますが、その一方で、「多くの方が不愉快に感じた点を受け入れる」として、広告を中止してしまいました。
誰がどう考えても慰安婦を冒涜する意図などないのは明らかで、旭日旗同様、いつもの韓国人の曲解による「脊髄反射」としか考えられませんが、しかし、そう見られてしまった、あるいは韓国側の踏み絵を踏まされてしまったのには、理由があります。
数日前、ユニクロ会長の「日本は最悪、韓国が反日なのはわかる」という日本の雑誌インタビュー記事が、韓国で紹介されたからです。
● ユニクロ会長「日本は最悪、韓国が反日なのは分かる」…安倍政権に苦言
これを報じた中央日報の記事を一部抜粋しましょう。
16日、日経ビジネスによると、柳井氏は今月9日付に掲載されたインタビューで、日本が韓国を敵対視しているのは異常で、日本が韓国に反感を持つようになったのは日本人が劣化した証拠だという趣旨で主張した。
柳井氏は「韓国にみんな(=日本)がけんか腰なのも異常。日本人は本来、冷静だったのが全部ヒステリー現象に変わっている」と話した。また「ああいう国民性だから、韓国の人が反日なのは分かる」としつつ「今、日本は最悪」と評価した。
柳井会長は「本屋では『日本が最高だ』という本ばかりで、いつも気分が悪くなる」としながら「どこが今、最高なのか」と反問した。
私は出典である日経ビジネスは読んでいませんが、中央日報が報じたことが正しいならば、柳井氏の発言は、日本で韓国への反発が強まっているのは日本人が劣化したからで、韓国人が反日になるのも当然だという主張であり、韓国の反日を擁護するものだということになります。
また、中央日報は、韓国での日本製品不買運動に触れながら、「これが韓国市場を意識して出てきた発言だったかどうかはしっかりと読み込む必要はある」としています。
つまり、韓国での不買運動で大きなダメージを受けたユニクロの会長が、韓国におもねるためにわざと韓国にとって耳障りのいい発言をしたのではないか、と韓国側も疑っているわけです。
おそらく韓国でも、この柳井氏の発言が真意なのかどうか疑う向きが大きかったのでしょう。だから、わざわざおかしなイチャモンをつけて、どこまで自分たちの言いなりになるか、踏み絵を踏ませたのではないかと思っています。
いくら「政治的な意図はない」とユニクロ側が説明しても、つい先日、会長の政治的な発言が話題になったのですから、政治的に利用されてしまったのだと思います。
冒頭のニュースのように、韓国中小ベンチャー企業長官が出てきて「非常に腹立たしい」と述べ、「文化体育観光部や放送通信委員会など関連部処と相談する」と言い、この問題はすでに政治化してしまいました。
また、韓国に帰化し、竹島について「韓国領」だと主張して韓国政府から賞を贈られた保坂祐二世宗大政治学教授も「ユニクロ側が本当に謝罪しなければいけない」と言いはじめ、この韓国世論の言いがかりに対して「完全降伏せよ」と迫っています。
柳井氏の「日本=悪、韓国=善」であるかのような発言が、かえって韓国人の猜疑心と相手を屈服させなくてはならないという自尊心、歴史的な潜在意識を刺激してしまったのではないでしょうか。
ユニクロは2012年、尖閣諸島をめぐって中国本土で反日暴動が起きたときにも、中国国内の店舗に「支持釣魚島是中国固有領土(釣魚島<尖閣諸島の中国名>は中国の固有の領土であることを支持します)」という張り紙を出したことで、日本国内で「売国行為」として批判を受けました。
インターネット上では、「UNIQLO」という同社のロゴが「QNIULO」(国売ろ)とコラージュされるということまで起こりました。
そもそも、中央日報が報じた「日本人の劣化によって韓国が反日になった」という柳井氏の発言が本当なら、韓国は日韓併合後、「朝鮮半島はずっと反日抗日を続け、その末に韓国は独立した」と言い、3・1運動後に上海へ亡命した大韓民国臨時政府が韓国の前身だと主張しているわけですから、100年間、日本は劣化し続けているということになります。
そして、その「日本人の劣化」が韓国人の反日の原因だと主張して数日もたたずに、柳井氏の企業のCMが韓国で猛反発を受けてしまったということは、柳井氏の主張が正しければ、「ああいう企業だから韓国が反日になるのもわかる」「劣化していたのは自分たちのほうだった」ということになるのでしょうか。なんとも皮肉な、自縄自縛のブーメランを受けてしまったと言えるわけです。
日本の嫌韓感情が近年急速に高まり、それが「右傾化」などと言われますが、約束を破り、ウソをついてまで恫喝してくる相手へ反論することを、日本では「右傾化」と呼ぶのでしょうか。そうであるならば、ウソと恫喝を繰り返す中国に反発する香港も台湾もウイグルも「右傾化している」と非難されるべきことになります。
中国・韓国と本気で付き合うならば、むしろ表面的な善隣外交は百害あって一利なしだということを肝に銘じるべきです。
image by: LegoCamera / Shutterstock.com
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