従業員300人以上の企業に勤めている50代の男性会社員には、モチベーションも低下し、仕方なく働いているという人が数多くいるようです。(公財)21世紀職業財団による調査を読み解くのは、健康社会学者の河合薫さん。メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』で、会社や仕事への向き合い方の違いが、働く50代男女の意識の違いを生んでいると指摘。生きづらさを感じている50代男性会社員には、「おばちゃん的働き方」をするなど、意識の改革を勧めています。
50才で萎える男とやる気が増す女
これまで私は本メルマガも含め、様々なメディアで「50代の男性会社員」ついて発信してきました。しかし、今回は「50代の男性会社員と女性会社員」の意識の違いについて分析した興味深いデータを取り上げ、あれこれ考えてみようと思います。
調査を行ったのは「公益財団法人21世紀職業財団」のメンバーで、調査対象は50歳時に300人以上の企業に正社員として勤務している(あるいはしていた)50歳~64歳の男女の2820名です(以下、結果から抜粋)。
- 「各年代で重視していたことは?」という問いについて、男性では「成長」「仕事の面白さ」「信頼」が20代をピークに年々低下していくのに対し、女性では「成長」「仕事の面白さ」については、40代までは低下した後再び50代で上昇。「信頼」については、30代で一旦低下するものの、その後は50代にかけて上昇する。
- 「昇進・昇格」を重視した年齢は、男性では30代がピークだったのに対し、女性では40代がピーク。男性の50代で「昇進・昇給」を重視した人が10.3%だったのに対し、女性の50代では17.5%だった。
- 「会社を辞めなかった理由」を聞いたところ、男性の7割が「家族を養わなければならなかったから」と答えたのに対し、女性では「経済的に自立したかった」が5割でトップ、「社会と繋がっていたかった」と続いた
- モチベーションが最も高かった時期と比べ、「現在の方が低い」と答えた人の割合は、男性では45.8%だったのに対し、女性は21.6%
- 「今後もスキルを深めたり発展させたい」とした割合は、男性が5割だったのに対し、女性は7割
- 定年後のキャリアの希望について、「現在の会社で再雇用」は男性は43.6%、女性34.4%。「転職」は男性19.5%、女性13.9%。「わからない」は男性は19.9%、女性は30.1%だった。
…以上です。
あれこれ数字をならべましたが、おおざっぱにまとめると…、「50代の女性会社員はまだまだ元気です!向上心も成長欲も50歳になっても 女性は衰えません!」といった感じでしょうか。
確かにインタビューをしていても女性の方が限界を定めず、むしろ子育てなどを終え、「これからは自分のやりたかったことをしたい!」とパワーアップしてるなぁと感じることは度々ありました。
一方、男性は40代でだいたい自分の会社での立ち位置が見えてしまい、やる気を失ったり、自分で限界を定めてしまったり。その反面「このままで終わっていいのか?」と自問し、それでも家族のために稼ぎ続けなければならない現実に苦悩していました。
日本がいまだに男社会であるがゆえの男性の生きづらさ。医学の急速な進歩で寿命が爆発的に伸びたところでビジネスの論理からいえば50代は嫌われてしまうという厳しい現実…。そういった社会環境が男性会社員の心を弱らせているのかもしません。
いずれにせよ、女性は育児休暇などで戦線離脱したときに、会社が自分のことをコマとしてしか見ていないという現実に直面するので、比較的早い段階で「組織での自分」を客観的に見られるようになります。
その結果、女性は会社で「仕事人」になりますが、男性は会社で「組織人」になる。そういった仕事の向き合い方の違いも、50代という微妙な年齢の就業意識に影響を与えているのでしょう。
私がこれまで行った調査やインタビューでも、同じ男性でも病気をしたり、左遷などで苦い経験をし、早い段階でイス取りゲームから撤退した人は、自己受容(=自分を客観的にみてありのままを受け入れること)できていることがわかっています。要するに「おばちゃん的働き方」に舵を切っていたのです。
彼らは決まって、半径3メートルの人間関係を大切にし、自分から若い人たちに仕事を教えてもらったり、若い人たちの相談にのったりしていました。と同時に、家庭での生活も大切にし、仕事だけではない人生を送っていました。
人間は「仕事」「家庭」「健康」の3つの幸せのボールを持っていて、その3つのボールを落とすことなくジャグリングのように回し続けることで生きる力は充電されます。
会社でどっぷりと仕事につかっていた男性は、「仕事」のボールを高くあげ続けたせいで、「家庭」や「健康」のボールをないがしろにしてしまったのではないでしょうか。今からでも遅くないので、人生を豊かにする働き方をする。会社員するのではなく、仕事をし、家庭と健康のボールも大切にする。そうすれば、今の生きづらさも解消されるのではないでしょうか。
とにもかくにも今回の調査ではインタビュー調査も行っているので、もう少し念入りに読み取れば、生きづらさを感じている男性会社員に役立つことも多いように思います。今回はこれで終わりにしますが、330ページにわたる調査報告書を読み込み、改めてまたみなさんにお知らせするのでお楽しみに!
みなさんのご意見もお聞かせください。
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