社会人にとっての楽しみのひとつといえばボーナス。夏と冬に支給される会社が多いと思いますが、しかし一方で、「貰えなかった」「大幅にカットされた」などボーナスに関するトラブルもよく聞かれます。無料メルマガ『採用から退社まで! 正しい労務管理で、運命の出会いを引き寄せろ』の著者・飯田弘和さんが会社からの一方的なボーナスのカットが許されるのか否かを詳しく解説しています。
ボーナスの支給について
既にボーナスを支給した会社も多いと思います。今年は景気も悪くなく、人手不足が続いている状況なので、ボーナス不支給等によるトラブルも少ないように感じます。
ボーナスに関するトラブルといえば、「もらえると思っていたボーナスが支給されなかった」「昨年よりも大幅にボーナスを引き下げられた」「12月末での退職を伝えたところ、ボーナスを大幅カットされた」など。
では、このような会社からの一方的なボーナスカットが許されるのでしょうか? ボーナスが労基法上の賃金に該当するのであれば、一方的なボーナス減額や不支給は許されません。
では、ボーナスが労基法上の賃金に該当する場合とは、どういった場合でしょう。まず、ボーナスの支給要件が就業規則や賞与規定、労働契約等で明確になっていることが必要です。そして、支給額についても、明確な計算式や算定方法が示されている必要があります。支給要件を満たしているにもかかわらず、計算式で示されている額のボーナスを支給しない場合には、賃金不払いとなります。
とはいっても、中小企業でボーナスについて上記のような明確な定めをしている会社は、あまり多くないと思います。そうであれば、「ボーナス=賃金」と断定されることは少ないと思います。
では、社内慣行としてボーナスを支給している場合はどうでしょう。慣行が、必ずしも法的効力を持つわけではありません。今までボーナスを支給していたからといって、必ずしもボーナスを支給することが会社に義務付けられているとまではいえません。
しかし、ボーナスカット等は、労使トラブルに発展しやすい事柄です。明確に支給要件等が明示されていなくても、ボーナス不支給が違法と判断される場合もあります。裁判等で社内慣行に法的効力が認められ、ボーナスを支払うよう命じられることもあり得ます。
ですから、事前に、就業規則や賞与規定によって、ボーナスの支給要件や支給額を決める際に考慮する事項について明記しておいた方が良いでしょう。具体的には、支給日在籍要件や遅刻・欠勤の多い者や懲戒処分者への賞与の評価・査定の方法、休業期間中の者へ支給するかどうか等を定めておきましょう。退職が決まっている者への支給等についても定めておいた方が良いでしょう。また、年次有給休暇や生理休暇を取得した場合にボーナスを減額するような定めは、法の趣旨に反するとして、裁判等で無効とされる可能性がありますので注意が必要です。
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