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企業に都合がいい働かせ方「名ばかりフリーランス」の甘いワナ

「フリーランス」と言えば、自由に時間が使えそうで聞こえはいいですが、約4割の人たちが特定の一社のみとの契約で「準従属労働者」の状態にあると言われています。企業が「雇用の義務」の外側で都合よく働かせ、ハラスメントも横行する実態を「名ばかりフリーランス」として問題視するのは、メルマガ『デキる男は尻がイイ-河合薫の『社会の窓』』著者で健康社会学者の河合薫さんです。自身もフリーランス歴20年の河合さんは、身をもって感じてきた早急な法整備の必要性を訴えています。

名ばかりフリーランスの罠

企業が「雇用の義務」を放棄する働かせ方が、ますます広がってしまいそうな気配が漂ってきました。

名ばかりフリーランス――。これは特定の一社からの受注が仕事の大半を占めるフリー契約の働き方のことで、国内のフリーランスの4割を占めるとされています。

名ばかりフリーランスは「企業に属していない働き手」であることから、

ことに加え、

などのトラブルがあっても泣き寝入りするしかないケースが存在します。

厚労省は2017年10月に「フリーランス保護」に向けた検討会を立ち上げたものの、2年以上が経過した現在も議論はまとまっていません。つまり、名ばかりフリーランスを具体的に守る施策が見えてないのです(日経新聞の報道より)。

かねてから「フリーランス=かっこいい」的報道には懸念を示してきましたが、問題点が明らかになっているのに、それを阻止する法整備はおろか議論も進んでいない。その一方で、フリーランスは増えている。これは大きな問題といわざるおえません。

半年前には、フリーランスへのパワハラ問題が明らかになり、話題になりました。フリーランスで働く人の61.6%がパワハラ、36.6%がセクハラを経験。具体的には「脅迫や名誉毀損などの精神的な攻撃」が59.4%と最も多く、「過大な要求」(42.4%)、「経済的な嫌がらせ」(39.1%)、「身体的な攻撃」(21.8%)など(複数回答)で、ハラスメントをされても「夢のため」と我慢してしまう被害者も少なくなかったといいます(一般社団法人プロフェッショナル&パラレルキャリア・フリーランス協会などによる調査)。

さらには…、

といったコメントも寄せられました。

私自身フリーランスなので、パワハラやセクハラされている状況が、リアルにイメージできるだけに…、「あるね。フツーに」と思える内容です。

直接契約を結ぶフリーランスは、「何をやっても許される」と勘違いする“大ばか野郎”のターゲットになりがちで。「おまえを生かすも殺すも俺(私)次第だぞ!」などと面と向かって言われても、生活がかかっているフリーランスは「ノー」と言えないのです。

企業に都合よく「働かされる」フリーランス

政府は明確に「フリーランス」を定義しないまま、「フリーランス万歳!」的礼賛を続けてきました。その動きに追従するように、フリーランスで成功した人たちが、「自分のやりたいことをやるにはフリーランス最高!」とフリーランスを推奨。フリーで働くことのリスクや問題点は、ほとんど公に語れていません。

かつて「フリーター」という言葉に憧れ、「夢を追う若者」を量産したときと全く同じ構図です。「定職に就かない」あるいは「無職」と呼ばれていた人たちが、「フリーター」というカタカナ用語によって、「自由を求める人」の象徴になった。その結果、ワーキングプアが量産された。それと同じ道筋ができつつある。これは極めて危険なことです。

唯一違いがあるとすれば、フリーターは若者に限った働き方でしたが、フリーランスは今後、ミドル、シニア社員をも巻き込んだ企業に都合のいい「働かせ方」になる可能性が高いってこと。

今国会に提出される、70歳までの就業機会確保への努力義務を企業に課す「高年齢者雇用安定法」の改正案にも、「フリーランスとして働く人への業務委託による支援」も選択肢のひとつとして提示されています。

多様な働き方、柔軟な働き方という大義名分のもと、

などと、あの手この手でフリーランスを迫る「新手のリストラ策」が増えるのではないか。雇用する義務を放棄したい企業の抜け穴となるのではないか。…心配はつきません。

いずれにせよ、厚労省は早急にフリーランスの定義を明確にすべきです。その上で、かつて大企業と中小企業が同志としてつながり、大企業ができないことを中小がやり、中小ができないことを大企業が担保したように、会社とフリーランスの“いい関係”を構築する法整備を進めてほしいと思います。

最後に個人的な話になりますが、フリーで20年生きてきて学んだのは「1円を稼ぐことの難しさ」です。フリーランスは確かに自由ですが、その自由には仕事がない自由、体を壊す自由も含まれていることをお忘れなく。みなさんのご意見、お聞かせください。

image by: shutterstock

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米国育ち、ANA国際線CA、「ニュースステーション」初代気象予報士、その後一念発起し、東大大学院に進学し博士号を取得(健康社会学者 Ph.D)という異色のキャリアを重ねたから書ける“とっておきの情報”をアナタだけにお教えします。
「自信はあるが、外からはどう見られているのか?」「自分の価値を上げたい」「心も体もコントロールしたい」「自己分析したい」「ニューストッピクスに反応できるスキルが欲しい」「とにかくモテたい」という方の参考になればと考えています。

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