今年も確定申告の時期がやってきましたが、医療費控除申請の準備は進んでいるでしょうか。「病院にそれほど通わなかった自分は無関係」などと思っていると国税庁の思う壺、大損してしまう可能性ありのようです。元国税調査官で作家の大村大次郎さんは今回、メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、医療費として控除の対象となるものの、あまり知られていないさまざまな項目を紹介しています。ます。
※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2020年2月1日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:大村大次郎(おおむら・おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。
確定申告の大誤解1~医療費控除~
確定申告の季節になってきましたね。前回の「元国税が暴露、国民に節税させない国税庁『誤誘導』の汚い手口」で、自然災害などで被害を受けたときに「雑損控除」という税金割引制度があるということをご紹介しましたが、「これは知らなかった」という感想が多くありました。なので、今回から数回に分けて確定申告で、あまり知られていない控除制度などとご紹介していきたいと思います。今回は医療費控除です。
医療費控除というのは、一定以上の医療費(だいたい年10万円以上)がかかった人が受けられる控除です。厳密に言えば、「10万円以上か、所得の5%以上の医療費がかかった場合」が医療費控除の対象となります。サラリーマンの大半は、所得が200万円以上ありますので、「だいたい10万円以上」ということを頭に入れておけばいいでしょう。
そして、医療費が10万円以上かかった場合、その超えた部分を所得から控除できるのです。もし年間30万円の医療費がかかった人が、医療費控除を受ければ、平均的なサラリーマンで、だいたい4~5万円の税金還付になります。
この医療費控除は、「病気の治療で病院に払った費用だけが対象になる」と思っている人が多いようですが、そうではありません。病院までの交通費、市販薬、按摩、整体、針、不妊治療、ED治療、禁煙治療などかなり広い範囲のものが、医療費控除の対象になるのです。さらに条件によっては、温泉療養、スポーツジム、歯の矯正費用も対象になるのです。
なので、あまり知られていない医療費控除対象項目をご紹介しますね。
市販薬、漢方薬
まず覚えておいていただきたいのが市販薬です。病院で処方されたわけではない、普通の市販薬も、一定の条件を満たせば医療費控除の対象になります。その条件とは次の二つです。
- 治療のためのものであること
- 医薬品であること
つまり、具体的な病気、怪我の症状があって、それを治すために買ったものであれば可で、予防のためや、もしものために買っておいた置き薬などはダメということです。しかし、予防のためか治療かというのは曖昧でもあります。たとえば、身体がすぐれないなあと思って漢方薬などを購入した場合。こういうときは、原則として納税者の判断が認められます。よほど非常識な判断じゃない限り、自分が「治療だと思えば治療」であり、「予防だと思えば予防」ということになるのです。
交通費、タクシー代も医療費控除の対象になる
医療機関を受診したような場合の交通費も医療費控除の対象になります。対象となる交通費は、合理的な方法で交通機関を利用した場合の交通費ということになっています。また場合によっては、タクシー代も医療費控除の対象になります。タクシー代が、医療費控除の対象となる場合というのは、病状などから見て、タクシーを使わざるを得なかったときということになっています。が、これも医師の診断などは必要なく、自己判断に任されています。
ビタミン剤、栄養ドリンクも医療費控除の対象になる
ビタミン剤や栄養ドリンクも、一定の条件を満たしていれば医療費控除の対象となります。一定の条件というのは、次の二つです。
- 何かの体の不具合症状を改善するためのものであること
- 医薬品であること
つまりは、どこか具合が悪いところがあって、それを改善するために飲む場合は可ということです。が、体がどこも悪くないけれど、健康増進のために飲んでおこう、という場合はダメだということです。ただし、これにも医者の処方せんなどは必要ありません。また、「身体の不調を治すためか」「健康増進か」という判断も、原則として自己申告が認められるということになります。
按摩、マッサージ、鍼灸も対象になる!
按摩、マッサージ、鍼灸などの代金も、一定の条件を満たせば、医療費控除の対象になります。条件とは、次の二つです。
- 何かの体の不具合症状を改善するためのものであること
- 公的な資格などを持つ整体師、鍼灸師などの施術であること
これも栄養ドリンクなどと同じように、「体がどこも悪くないけれど、とりあえずマッサージしてもらおう」というような場合はダメだということです。どこか具合が悪いところがあって、それを改善するために施術を受ける、というのが原則です。またどこの店でもいいというわけではなく、「あん摩マッサージ指圧師」「はり師」「きゅう師」「柔道整復師」のいずれかの国家資格を持つ人からの施術を受けた場合に限られます。
不妊治療
不妊治療にかかった費用も医療費控除の対象になります。不妊治療はけっこう高い費用が掛かる上に、社会保険が適用されないものが多いので、医療費控除はきっちりうけたいものです。人工授精・体外受精・顕微授精の治療費全般(卵子・精子の凍結保存料や採卵にかかる費用等)も対象となります。
ED治療費も、禁煙治療も対象となる!
ED治療に関してかかった費用も、医療費控除の対象となります。ED治療もけっこうなお金が必要ですが、医療費控除の申告をすれば若干でもそれが取り戻せるのです。また最近は、病院で禁煙治療も行われていますが、この禁煙治療にかかった費用も医療費控除の対象になります。また禁煙ガム等の禁煙補助用品も、医薬品であれば、医療費控除の対象になります。
温泉療養で税金を安くする
一定の条件を満たせば「温泉療養」も対象となります。しかも温泉施設の利用料だけではなく、温泉までの旅費や旅館の宿泊費なども、医療費控除の対象となります。ただ、これは必要最低限の費用のみであり、旅館での飲食費や、グリーン料金などは認められません。
一定の条件とは、次の二つです。
- 医者が温泉療養を病気等の治療になると認めた場合(医者の証明書が必要)
- 厚生労働省で認められた温泉療養施設を利用した場合
つまり、医者から温泉療養指示書というものをだしてもらう、その指示書に従って、特定の施設で療養をした場合に医療費控除の対象となるということです。厚生労働省が認めた温泉療養施設は、全国に21か所あります。詳しくは温泉利用型健康増進施設連絡会のホームページを見てください。
スポーツ施設の利用料も対象となる
温泉療養費用と同じように、スポーツジムにいった費用も、一定の条件をクリアすれば医療費控除の対象とすることもできます。一定の条件とは次の三つです。
- 高血圧症、高脂血症、糖尿病、虚血性心疾患等の疾病で、医師の運動処方せんに基づいて行われるものであること
- 概ね週1回以上の頻度で、8週間以上の期間にわたって行われるものであること
- 運動療法を行うに適した施設として厚生省の指定を受けた施設(「指定運動療法施設」)で行われるものであること
対象となる指定運動療法施設は、全国で215か所あります。詳しくは、日本健康スポーツ連盟のホームページを見てください。
視力回復のレーザー治療
視力回復のためのレーザー治療も医療費控除の対象になります。また最近、オルソケラトロジー治療(角膜矯正療法)という、近視改善の治療法があります。一定期間、特殊なコンタクトレンズを装用して、近視などを治す治療法です。これも、医療費控除の対象となります。その一方で、普通のメガネやコンタクトレンズは、医療費控除の対象にならないので注意を要します。
セラミック歯、子供の歯の矯正
虫歯の治療の時に、銀歯は健康保険の対象となりますが、セラミックは健康保険の対象となりません。セラミックは、銀歯と比べてかなり高額であり、美容の意味合いがあるので、健康保険の対象とはなっていないとされています。しかし、セラミックは健康保険の対象にはなっていなくても、医療費控除の対象にはなっているのです。
治療ではなく美容のための医療行為は、原則として医療費控除の対象にはならないはずなのですが、セラミック歯の場合は、例外になっているのです。ただ歯科医療でも、医療費控除の対象とならないものもあります。それは、「ホワイトニング」や「大人の歯の矯正」です。これは、医療行為ではなく、美容のためとみなされて、医療費控除の対象とはならないのです。
しかし、子供の歯の矯正は、医療費控除の対象となります。これは、子供の場合は、歯の噛み合わせを治すのは、医療行為ということになっているのです。だから、歯の矯正をするのであれば、子供のうちにやっておいたほうがいいでしょう。(メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』より一部抜粋)
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