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アメリカも未だ警戒。なぜ、世界は「日本」を恐れているのか?

1945年、アメリカを中心とする連合国軍に完膚無きまでに叩き潰された日本。その「開戦の原因」は諸説語られていますが、米国はいつ日本との戦いを決意したのでしょうか。今回の無料メルマガ『ロシア政治経済ジャーナル』では国際関係ジャーナリストの北野幸伯さんが、リアリズムの大家・ミアシャイマー氏の驚きの説を紹介。さらに、世界が未だに「日本を恐れ続けている」理由を記しています。

世界は、なぜ日本を恐れるのか?

最近、リアリストの神ミアシャイマーさんの本を読み返しています。ミアシャイマーさんは、「いつアメリカは、日本との戦いを決意した」と考えているのでしょうか?これ、いろいろな説がありますね。

フーバー元大統領は、「狂人のルーズベルトが、日本を戦争に誘導した」と断言している。つまり、ルーズベルトは、真珠湾攻撃よりずっと前から日本との戦争を計画していたことになる。一方、リアリズムの神様ミアシャイマーさんは、「1941年の6月だ」と書いています(『大国政治の悲劇』)。なぜ?

1941年6月、ナチスドイツがソ連に攻め込んだ。ミアシャイマーさんの見立てはこうです。もしこの時、日本がソ連を攻撃すれば、ソ連は消滅した可能性がある。そう、ソ連は西のナチスドイツ、東の日本で、戦力を分散させなければならない。そしたら、歴史はどうなった?ナチスドイツは、ソ連を破って、欧州の覇権国になっただろう(かもしれない)。日本は、ソ連を破って、中国も破り、アジアの覇権国になっただろう(かもしれない)。そして、日本とドイツは、同盟国。世界の構造は、

ということになります。こういう見通しがあったので、アメリカは、「日本を潰そう!」と決意したと。これ、私じゃなくて、リアリストの神様が書いているのです。現代の私たちには、「想像を絶する展望」ですね。日本が、中国全土と、ソ連の東半分を支配している???「絶対あり得ない!」と思えます。

ちなみに歴史は、アメリカの想像とは違う方向に行きました。ゾルゲ、尾崎秀美などの工作によって、日本はソ連ではなく、東南アジアを攻めることにした。それで、ソ連はシベリアの戦力を西に戻すことができ、ドイツに勝利できた。

私たちは、中国、韓国のみならず、アメリカも日本を恐れていると感じることがあります。たとえばジョー・バイデンは、「日本に核を持たせないために、アメリカが日本国憲法を書いた!」と断言している。こういう発言を聞くと、アメリカのエスタブリッシュメントは、「いまだに日本を警戒しているのだな」と感じる。

なぜなのでしょうか?私たちは、75年間も羊のようにおとなしく暮らしているのに…。

「天皇 = エンペラー」という翻訳の問題

親日の歴史学者ジェイソン・モーガンさんは、最新刊『歴史バカの壁』の中で、この件について書いています。

「天皇 = エンペラー」という訳が問題なのだと。

アメリカ人にとって「エンペラー」はどういう存在なのでしょうか?「ドイツのカイゼル」というイメージなのだそうです。皆さんご存知のように、ドイツは第1次大戦で、アメリカと戦いました。それで、アメリカ人は、【エンペラー = 独裁者 = アメリカの敵】というイメージをもってしまった。この言葉のせいで、【日本の天皇陛下 = エンペラー =独裁者 = 敵】というイメージになってしまった。

アメリカ政府などは傲慢に「天皇という独裁者に支配される国を痛烈な戦いののちに侵略し、国民を解放することがわれわれには義務づけられている」と思っていたようです。
(p25)

アメリカ人が「ジャパニーズ・エンペラー = ドイツのエンペラー」、つまり「宗教の自由を否定する単なる好戦的な野蛮にすぎない」と誤解釈してしまったことが悲劇的な過ちで、日米の間に計り知れない苦しみや痛みをもたらしてしまいました。
(p26)

天皇、英語ではエンペラー、ロシア語だとイムペラートルといいます。どちらも「皇帝」ことですが、「天皇 = 皇帝 =エンペラー = イムペラートル」。でも、「天皇」と「皇帝」は「イコールだろうか?」と考えると「違う気がする」のは、私だけではないでしょう。何か適切な訳語を考えないといけないですね。

ちなみにジェイソン・モーガンさんの『歴史バカの壁』ですが、「聞いたことがない話だらけ」でとても面白いです。

この本は、ざっくり「日本編」と「アメリカ編」にわかれています。日本編は、いわゆる「保守的」視点で、私たちにはなじみがあるものです。しかし、アメリカ編は、「聞いたことのない話ばかり」になっています。たとえば、

聞いたことがない話ばかりでしょう?私も、「はじめて聞いた」という話ばかりでした。ジェイソン・モーガンさんは、大変に親日な方。本は、とても読みやすく、初めて聞く話が山盛り。皆さん、是非ともご一読ください。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 北野幸伯 【発行周期】 不定期

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