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コロナ禍で鮮明に。日本社会を絶対的に支配する「空気」の存在

日本のコロナ対策は3月の一斉休校に始まり、緊急事態宣言、一律給付金、GoTo前倒し・断乎継続・一斉停止と、科学も論理も無視して場当たり的に進んできました。これらのことは政府が決めたように見えて、一部を除けば「社会の空気」がそうさせたと感じはしないでしょうか。メルマガ『ジャーナリスティックなやさしい未来』著者の引地達也さんは、評論家山本七平が約40年前に著した『「空気」の研究』をひも解きながら、議論も説明もないまま「空気」という妖怪に支配され始めた状況への危機感を表明しています。

あらためて眺めた「空気」から日本社会に自覚的になってみる

「『空気』とはまことに大きな絶対権をもった妖怪である」。そう日本社会から発する行動原理の源を表したのは山本七平であった。彼が1983年に刊行した『「空気」の研究』は、それから38年経過した現在でも、その空気は日本社会を支配しているようで、メディアの活動や政治の活動、企業行動もすべて「空気」が幅を利かせているように見えるし、若者の間で「空気読めよ!」との発言を多くの場面で目の当たりにしているのを見ると、それはまだまだ根強く日本社会に存在しているようだ。

この空気を山本は「妖怪」と呼び、時には「ムード」とも捉えられると考えた。「何しろ、専門家ぞろいの海軍の首脳に、「作戦として形をなさない」ことが「明白な事実」であることを、強行させ、後になると、その最高責任者が、なぜそれを行ったかを一言も説明できないような状態に落とし込んでしまうのだから、スプーンが曲がるの比ではない」。

ソーシャルメディアの発展した現在だから、誰でも発信者になり、言論の空間を自由に行き来することができるのだから、1980年代のマスメディア企業が言論空間を支配していた時代の空気は消え失せているはずだが、と思いきや、いまだに「空気」は存在している。それはなおさらに強い存在感を持っているようにも見える。それが議論ができないまま、簡単な説明のままに政策を実行されてしまう雰囲気ともつながるような気がしてならない。

山本は空気の支配の弊害として、「統計も資料も分析も、またそれに類する科学的手段や論理的論証も、一切は無駄であって、そういうものをいかに精緻に組みたてておいても、いざというときは、それらが一切消しとんで、すべてが『空気』に決定されることになるかも知れぬ。とすると、われわれはまず、何よりも先に、この『空気』なるものの正体を把握しておかないと、将来になにが起こるやら、皆目見当がつかないことになる」と記していた。

この1983年の戦後40年経とうとしている時期だが、戦前と同様で「時にはこの「空気」が竜巻状になるのがブームであろう」とし「それらは、戦前・戦後を通じて使われる「空気」と同系統に属する表現と思われる。そしてこの空気(ムード)が、すべてを制御し統制し、強力な規範となって、各人の口を封じてしまう現象、これは昔と変りがない」と結論付けた。

阿部勤也が言う「日本の個人は、世間向きの顔や発言と自分の内面の想いを区別してふるまい、そのような関係の中で個人の外面と内面の双方が形成されているのである。いわば個人は、世間との関係の中で生まれているのである。世間は人間関係の世界である限りでかなり曖昧なものであり、その曖昧なものとの関係の中で自己を形成せざるをえない日本の個人は、欧米人からみると、曖昧な存在としてみえる」との「曖昧な日本」は、「空気」に支配されると、われわれ自身が何に操られているのかわからなくなってしまう可能性もある。

だから、山本が「相対化している世界というものが理解できない」と断言するところを再度注意深く考えたい。新型コロナウイルスに対しては明確な説明と傍証や論証によって政策は説明されるべきだが、空気だけを作り出されているような印象だ。再度、日本社会を自覚するには山本の空気を再検討したい。

「われわれの社会は、常に、絶対的命題をもつ社会である。『忠君愛国』から『正直ものがバカを見ない世界であれ』に至るまで、常に何らかの命題を絶対化し、その命題を臨在感的に把握し、その“空気”で支配されてきた。そしてそれらの命題たとえば『正義は最後に勝つ』『正しいものはむくわれる』といったものは絶対であり、この絶対性にだれも疑いをもたず、そうならない社会は悪いと、戦前も戦後も信じつづけてきた。

 

そのため、これらの命題まで対立的命題として把握して相対化している世界というものが理解できない。そしてそういう世界は存在しないと信じ切っていた。だがそういう世界が現実に存在するのである。否、それが日本以外の大部分の世界なのである」

私たちは他者とともに生きていることから考えたい。

image by:StreetVJ / Shutterstock.com

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特別支援教育が必要な方への学びの場である「法定外シャローム大学」や就労移行支援事業所を舞台にしながら、社会にケアの概念を広めるメディアの再定義を目指す思いで、世の中をやさしい視点で描きます。誰もが気持よくなれるやさしいジャーナリスムを模索します。

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