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住民参加の「夜間パトロール」を始めてマンションに起きた嬉しい変化

集合住宅の管理組合の頭を悩ます問題としてよく挙げられるのが、大規模修繕等に対する区分所有者の合意形成。ところがそんな「難問」を、1年近くの努力の末にクリアしたマンションがありました。今回の無料メルマガ『まんしょんオタクのマンションこぼれ話』では著者でマンション管理士の廣田信子さんが、賛成率9割を実現したそのマンションの取り組みを紹介しています。

夜間パトロールが合意形成の場に

こんにちは!廣田信子です。

3月決算、5月末総会の管理組合では、この1月~3月にかけて、重要な修繕工事の総会提案に向けて、説明会等の予定があるところも多いと思います。そんな中での緊急事態宣言に、頭を抱えている管理組合も少なくありません。

先日伺った管理組合では、人が多数集まる説明会をしなくても、多くの人に、提案する工事の内容を理解してもらうため努力を1年近く続けてきて、一般的には合意形成が難しいとされる修繕工事に9割の賛成を得られるところまでこぎつけています。

ポイントは2つあります。

1つは、徹底した分かりやすい情報公開です。課題を整理し、現状と提案内容を分かりやすく説明する資料を何度も広報しています。その資料の完成度の高さには驚かされます。素人が見ても分かるように、プロの手による図解も入れて、読む人の視点でつくられています。

そして、もう1つは、草の根の広報活動、意見交換です。この団地では、自治会と管理組合が共催で、全住民が夜間パトロールに参加するという文化が根付いています。約10棟の建物があり、1棟が平均80戸です。

夜間パトロ─ルは、1棟で1か月を担当し、順番に回ります。各棟には棟委員がいて自主的にパトロールを計画します。回数や実施する曜日、時間、コース等もすべて任されています。

平均的には、週1回の実施で、なるべく全員が1回は参加するようにお願いしていて、約8割の住民が参加するといいます。大型団地なので、大雑把にいうと、年に1回の参加ということですから、大したことはないですよね。

この夜間パトロ─ルには3つの目的あります。

  1. 防火・防犯
  2. 住民間の情報交換
  3. 住民間の親睦

みんなで団地を回ることで、普段目にしないところの状況を共有できます。ゴミの出し方や自転車置き場の整理状況、違法駐車危ない段差等も共有できます。もちろん、住民がパトロールしていることで、犯罪の抑止効果も大きいです。歩きながら、おしゃべりすることで、マンション内や地域の情報を得ることもできます。入居間もない方も、そこで挨拶して顔見知りになれます。

パトロール終了後は、集会室で懇談会の時間を設けています。今年は、コロナ禍で飲食はあまりできませんが、この懇談会に必要な費用は自治会から支給されます。今年は、この懇談会に修繕委員の人が参加し、大規模な改修工事の実施について、広報の内容をさらに詳しく説明し、何でも質問を受け、意見を聞くということを繰り返しました。

1回の参加者は20名ほどですが、1年を通すと、全体の8割の方が説明を聞き、意見がある方は、聞いている人がいる状態で意見を述べたことになります。そのきめ細かいやり方が、大きな修繕計画の合意形成にとつながるのです。

夜間パトロールと聞くと、若い人が敬遠すると思いがちですが、この団地は、築40年でも、立地がよくきちんと管理されコミュニティもしっかりしているということで、若い子育て世代の入居が多く、子どもたちの数も増えているといいます。

若い世代も、年1回、パトロールに参加することぐらい別に嫌がらないで、参加しているようです。そうしていると、例えば、上階の騒音で困った場合等パトロールの時に、棟委員の人に相談に乗ってもらえますので心強くもあります。

自由参加の懇談会でなく、マンションのためのパトロールという役割分担であることも、最低限の義務は果たそうという気持につなっがってちょうどいいようです。懇談会も、30分程度で切り上げ、無理がないよう工夫されているようです。

夜間パトロールが、草の根の合意形成に非常に役立ったということが、コロナ禍でより鮮明になったという事例です。

1人、1人が、自分たちの住環境をよくするために、ほんの少しづつ時間を出し合うことを通じて、マンション対する思いを共有できる…というシンプルなことを見直さなくてはいけないのではないか…と思わされました。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 廣田信子 【発行周期】 ほぼ 平日刊

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