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貧乏人はマズい物を食え?農業の進歩が庶民の食卓を寂しくする

一時期はもはや「絶滅寸前」とまで言われた日本の農業ですが、ロボット技術やITを駆使する、いわゆる「スマート農業」に明るい未来を見る向きも多いようです。しかし、そこに別方向の疑問を感じると言うのは、繁盛戦略コンサルタントの佐藤きよあきさん。佐藤さんは無料メルマガ『繁盛戦略企画塾・『心のマーケティング』講座』で今回、農業の発展は喜ぶべきことではあるとしつつ、その進歩が庶民の食生活を寂しいものとする可能性があるのではないかとの危惧を示しています。

農業技術が進歩するほど、庶民は美味しい野菜・果物が食べられなくなる!?

いま、農業を取り巻く環境は厳しくなっています。後継者不足による高齢化。廃業する農家も多く、耕作放棄地も増え続けています。さらに、TPP問題。

しかし、明るいニュースも入ってきます。企業参入の緩和や農業技術の進歩です。企業が農業を始めることで、耕作放棄地が減り、地方に雇用も生まれます。これにより、地域の活性化が期待できるようになります。

また、農業技術の進歩は、キツい作業の多い農業を楽にしてくれ、若い層の就農を後押しします。田畑を耕し、種を蒔き、水をやり、雑草を除去し、収穫する。これらのすべてを機械でできるようになっているのです。腰を曲げた姿勢での作業や、重いものを手で運ぶことが少なくなりつつあります。

技術の進歩はそれだけではありません。水のやり方、温度調整、肥料の与え方などは、熟練の技術と長年の勘が頼りでしたが、いまやコンピュータやセンサの活用により、経験の浅い人間でも、それなりにできるようになっています。極端なことを言えば、コンピュータの指示に従えば良いのです。最近では、土が乾いたことをスマホで知らせるアプリまで開発されているので、絶えず見まわる必要もなくなっています。こうしたシステムを活用すれば、美味しい野菜・果物が作りやすくなるのです。

いまは、作物の良し悪しも、センサで判別できるようになっています。特に糖度が価格を左右する果物は、光センサを使うことで、個体ごとに仕分けることができます。従来なら、切った果物の汁を糖度計で計測していましたが、これではサンプルの糖度しかわかりません。同じ木に成った果物すべてが同じ糖度ではないので、不確実な仕分けとなっていたのです。センサで確実に甘いことのわかった果物は、当然高いランクとされ、取り引き価格も高くなります。さらに、「低温貯蔵」の技術も確立されています。これは、糖度・栄養の低い作物でも、低温で貯蔵することで熟成され、美味しくなる方法です。

ここまでできるようになると、作物づくりで失敗することは少なくなります。すなわち、農家の収入アップに繋がるのです。

このように、農業技術が進歩すれば、農業はキツい仕事ではなくなり、若い層も増え、収入も安定するようになります。高く売れることがわかれば、やりがいも生まれます。良いことだらけではないでしょうか。

……が、ここで疑問が。

美味しい野菜・果物が確実に判別できるようになる。それはイコール、高付加価値商品の誕生です。これを逆に捉えれば、野菜・果物が高くなるのではないか、という不安が出てきます。

いまの野菜・果物は、安く売られていても、中には美味しいものに当たることがあります。それが、これまでの農業技術の限界だったから。

しかし、美味しい野菜・果物が確実に選別されてしまうと、安く売られるものは、あまり美味しくないものとなってしまいます。つまり、庶民が買うことのできるものは、美味しいとは言えないものになるのではないでしょうか。あるいは、TPPで安く入ってくる、安全面に不安の残る海外産となります。

農業の発展は喜ぶべきことですが、庶民の食生活は淋しいものとなりはしないのでしょうか。これは、考え過ぎでしょうか。

image by: Shutterstock.com

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【著者】 佐藤きよあき(繁盛戦略コンサルタント) 【発行周期】 週刊

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