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総務省と東北新社の「外資規制」問題、ウソが暴かれるはどちらか?

菅首相の長男が勤務する東北新社が総務省幹部を接待していた問題は、同社の外資規制違反が明らかになり、さらなる疑惑が持ち上がっています。この「外資規制」というキーワードに関し、新聞報道を紐解くのは、メルマガ『uttiiの電子版ウォッチ DELUXE』著者でジャーナリストの内田誠さん。東北新社と総務省、どちらの嘘が暴かれるか注目するとともに、各国政府がそのさじ加減により貿易交渉や言論弾圧に利用してきた「外資規制」について考えます。

東北新社の接待問題で注目。「外資規制」について新聞はどう報じてきたか?

きょうは《毎日》からです。4面の「検証」が、「外資規制」について書いています。東北新社が絡む総務省接待疑惑の中心的なテーマになりつつある、この「外資規制」について《東京》の過去記事(過去5年分)を検索すると、2017年以降23件にヒットしました。ザッと見たところ、新しい方の5件は東北新社関係で、それ以外は貿易に関わる話が主になっているようです。これらを対象にします。まずは《毎日》4面記事の見出しから。

外資規制 対立際立つ
総務省接待問題
東北新社社長 17年に違反報告
総務省部長 全く記憶にない
通信行政に影響 谷脇氏辞職

東北新社は、2017年に外資規制違反を総務省に報告したと説明しているのに対し、総務省の方は「記憶にない」と答弁し続けている問題。一方、谷脇康彦総務審議官が辞職したことについて野党は「口封じだ」と批判を強めている、という記事。

総務省側は、鈴木信也総合通信基盤局電波部長が答弁。語気を強め、「外資規制違反のような重要な話を聞いていたら覚えているはずだが、そのような記憶はない」と突っぱねている。東北新社は、中島社長が国会で説明。子会社にBS4Kの認定を承継する前の17年8月4日に担当者が外資規制違反に気付き、8月9日ごろ、子会社の東北新社メディアサービス社長だった木田由紀夫氏が、鈴木氏(当時は情報流通行政局総務課長)と面会して報告したと明言している。

●uttiiの眼

東北新社が16年にBS4K認定を申請し17年1月に認定。10月には子会社に認定を承継したが、いずれの時点でも外資比率20%未満でなければならないという外資規制に違反していたことは、事実として確定している。

東北新社側の説明は非常に具体的で、これが正しいとなると総務省は「外資規制違反を知りながら放置した」ことになり、非常に具合が悪い。武田総務相は、総務省ではなく第三者機関で調査するとしていて、どんな結果が出るのか…。可能性は高くないが、もしも東北新社がウソをついているのであれば、そうさせているのは誰なのかという問題もでてくるだろう。

【サーチ&リサーチ】

*上記したように、17年以降、問題になっていたのは中国などの外資規制だった。「外資規制」は貿易交渉の際の「手駒」の1つという意味がありそうだ。

2017年8月24日付
TPPから米国が抜けた後の会合。ベトナムやマレーシアは米国への輸出拡大を見込んで、「外資規制の緩和」などの市場改革を受け入れた経緯があった。米国が抜けた後は意味がなくなったので、譲歩の内容を「調整」しようとしてくるのではないかという見方について書かれている。実際、この問題で11カ国会議は紛糾する。

2018年3月24日付
安倍政権の放送法全廃の動きが報じられている。「安倍政権が放送制度改革で、テレビ、ラジオ番組の政治的公平などを求めた放送法の条文撤廃に加え、放送局への番組基準策定義務付けなど、NHK関連以外の同法の規制をほぼ全廃する方針であることが分かった」という記事の中で、「放送局に番組基準の策定や番組審議会の設置を義務付けたり、教養、報道など番組ジャンルの調和を求めたりしている規定を撤廃。一企業による多数のマスメディア所有を禁じた条項や外資規制も廃止する」と。

2018年4月3日付
米中貿易戦争。「米国は、中国の外資規制に伴う技術移転の強要や米企業へのサイバー攻撃などで、年間500億ドル(約5兆2千億円)の損失を招いていると主張」。

2018年4月18日付
中国政府は自動車の外資規制を撤廃する。「自動車分野での外資規制撤廃は、日本や米国が強く要求していた。トランプ米政権は合弁によって技術が中国企業に流出しかねないと主張し、中国市場の閉鎖性も批判してきた。今回の措置は、米国との貿易摩擦緩和に向け、市場開放に努力する姿勢をアピールする狙いとみられる」と。

*トランプ政権は自動車だけでなく、他分野でも「外資規制」を撤廃するよう中国への圧力を強めていく。一方、アジアでは、報道の自由との関係で、政権に「利用」される事例が…。

2018年6月18日付
「東南アジア各国で「報道の自由」が揺らいでいる」とする記事の中で、「フィリピンでは1月、政権に批判的なネットメディア「ラップラー」が外資規制に違反したとして認可を取り消された」。その後、ドゥテルテ政権によってラップラーのCEOは逮捕され、幹部7人が起訴される。

*日本では、外為法が改正され、外資規制が強化される。

2019年11月22日付
改正外為法が成立。「外国人投資家が、関連する日本の上場企業の株式を取得する際、事前届け出の基準となる出資比率を現行の「10%以上」から「1%以上」に引き下げて厳格化するのが柱」で、背景には「昨年以降、欧米で外資規制を厳しくする新法などが成立。国境を越えた企業買収や経営参加が活発になる中、日本も監視を強める必要があると政府はみている」と。

2020年4月2日付
「政府の外交・安全保障政策の総合調整を担う国家安全保障局(NSS)の経済班が1日、始動した。先端技術の保護や外資規制など、経済と安全保障にまたがる「経済安全保障」分野の課題に官邸主導で取り組む」という。

●uttiiの眼

撤廃を含む外資規制の「さじ加減」が、貿易交渉などで“大活躍”しているさまが見えてくる。同時に、途上国では外資規制を理由にした言論弾圧が行われている一方、日本では安倍政権下で、「外資規制の撤廃」を行うことで、メディアをコントロールしようとした歴史も見えてくる。多かれ少なかれ、国境を越えた資本の移動を認めざるを得ない状況下で、「外資規制」が様々な場面に登場している。

image by:Sean Pavone / Shutterstock.com

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ニュースステーションを皮切りにテレビの世界に入って34年。サンデープロジェクト(テレビ朝日)で数々の取材とリポートに携わり、スーパーニュース・アンカー(関西テレビ)や吉田照美ソコダイジナトコ(文化放送)でコメンテーター、J-WAVEのジャム・ザ・ワールドではナビゲーターを務めた。ネット上のメディア、『デモクラTV』の創立メンバーで、自身が司会を務める「デモくらジオ」(金曜夜8時から10時。「ヴィンテージ・ジャズをアナログ・プレーヤーで聴きながら、リラックスして一週間を振り返る名物プログラム」)は番組開始以来、放送300回を超えた。

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【著者】 内田誠 【月額】 月額330円(税込) 【発行周期】 週1回程度

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