アジア各国の若者たちが反中の旗印の元に結束し、ネット上で中国人工作員との戦いを繰り広げている事実をご存知でしょうか。今回のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』では台湾出身の評論家・黄文雄さんが、タイ、香港、台湾らの若者が参加する「ミルクティー同盟」なる反中協定を紹介。さらにミャンマーやインドにまで広がりを見せるこの同盟の今後について、「民間レベルの対中包囲網として期待されている」との評価を記しています。
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年3月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
【中国】アジアの若者に広がる中国嫌い「ミルクティー同盟」の背景に歴史的反華僑
● ミャンマー進出の台湾企業「台湾の旗活用を」 中国系工場放火で
国軍のクーデターとこれに抗議する市民の衝突により混乱が続くミャンマーですが、長く軍政が続いてきたミャンマーでは、中国とミャンマー国軍とが歴史的に密接な関係にあります。もちろん中国としては、アジア各国の民主化が自国に波及することを避けたいため、軍事政権を支援している側面もあります。
そのため、ミャンマー国内では、中国が国軍を後押しし、クーデターを起こさせたという疑念が巻き起こっており、対中感情が非常に悪化しています。先日には、ヤンゴン郊外の中国資本の衣料品工場が放火され、多くの従業員が負傷する事件も起こり、中国政府がミャンマーに対して中国の資産や市民の保護を求めるまでに至っています。
そして、台湾企業もそのとばっちりを受けています。台湾外交部は、在ミャンマーの台湾企業が暴力行為に巻き込まれ、台湾人10人が施設内に閉じ込められたと報じました。明らかに中国人に間違えられたことが原因です。
そのため在ミャンマーの台湾の代表機関は、現地の台湾企業に対して、「台湾」と書いた看板を立てたり、台湾の国旗を掲げるよう指示しているそうです。
かつて2014年にベトナムで大規模な反中暴動が起こりましたが、そのときも中国企業と間違われて台湾企業が襲撃される事件がありました。私が中華民国の外務省関係者から聞いた話では、ミャンマーの台湾企業はベトナムの台湾企業と似ていて、漢字を使用するため、デモ隊に攻撃されたという話でした。
もともと東南アジアは、歴史的に中華王朝との対立を繰り返してきました。呉越の争いから漢の武帝による南越滅亡、明と大越国の対立などは有名ですし、清の乾隆帝の時代には清緬戦争もありました。
官定正史の『明史』は清の5代目皇帝である乾隆帝の18世紀頃に完成しました。そこでは台湾は外国列伝において日本や琉球の後、呂宋国の前に記述されていましたが、現在のミャンマーは中国国内の土司列伝に記述され、明の一部だとみなされていました。
一方、とくに東南アジアでは、かつて欧米の植民地時代に欧米列強の手先として華僑が現地民を搾取、虐げてきた歴史があるだけに、反華意識がとても高いのです。反華僑がとくに強いのは、ベトナムとインドネシアです。現在もなお、華僑からの経済的独立を果たさないかぎり、本当の独立ではないと考える人も少なくありません。だから華僑排斥運動がたびたび起こるわけです。
ちなみに大東亜戦争時、その西欧列強と華僑勢力を追い払ったのが日本軍でした。そのことに現地の人々は喝采を送ったのです。しかし戦後、村山政権時代に日本の有力政治家たちが東南アジア諸国への謝罪行脚を行いました。日本の侵略行為へのお詫びだということでしたが、滑稽にしてお笑い草でしかありません。「華僑神話」のウソに毒されて、華僑による支配と搾取を正当化する行為そのものだからです。
それはともかく、加えて近年では、経済大国となった中国が、カネにあかせて他国を経済的植民地に陥れ、また軍事的にも他国の領土領海を脅かしていることもあって、各国で警戒感が高まっていることはご承知のとおりです。
そしていま、アジア各地でこうした中国の脅威に対して、若者たちがネット上で結束して対抗しようという動きが出てきています。それが「ミルクティー同盟(連盟)」(奶茶聯盟)です。
この「ミルクティー同盟」は、2020年4月頃、タイの人気俳優が自身のツイッターで、日本、中国、台湾、香港で撮影された写真に「4つの国」とコメントしたことで、中国人が激怒。さらにこのタイ人俳優の恋人が、「新型コロナウイルスは武漢の研究所が発生源」だとする投稿をリツイートしたことが発覚、さらに、タイ人俳優の恋人から着こなしを「中国人みたい」と褒められた彼女が、「台湾人だと言ってほしい」とコメントしたこともあって、中国のネット民から批判の嵐が巻き起こり、タイのネット民との間で激しいバトルが勃発したのです。
● キーボードで戦う勇士たち。香港、台湾、タイのネットユーザー「ミルクティー同盟」VS中国ネット工作員
中国ネット民は、こぞってタイについての悪口雑言を投げかけましたが、もともとタイでは王室に批判的な意見が多いため、タイ人は母国の悪口を気にすることもなく、「私の国は貧乏(poor)だけど、そちらはプー(pooh)だね」などとやり返し、中国に言論の自由がないことを逆にあげつらって反撃していました。
ちなみにpoohは「くまのプーさん」のことで、習近平に似ているという評判が立ったことで、中国国内では「くまのプーさん」の画像をネットにアップしたり、習近平に似ているといったことを述べることすら禁じられています。
なお、中国では、中国共産党の指導でネット上の世論を操作する行うネット民たちは、「五毛党」と呼ばれています。1つの書き込みに対して5毛という手数料が支払われるからです。アメリカ情報機関の調査では、この五毛党のほとんどが政府の役人だということです。また、最近は手数料が8毛にアップしたという話もあります。
それはともかく、中国ネット民はタイ人に対して「NMSL」(你媽死了=お前の母親は死んだ)というスラングの悪口を大量に投稿しましたが、これに対してタイのネット民は、言論の自由のない中国ではキーボードに「n」「s」「m」「l」の4つの文字しかないと、揶揄したのです。
タイも軍事政権によるクーデターが繰り返され、2019年に民政に移管したものの、軍政回帰が懸念されており、現在は王室改革をさけぶデモが繰り返されていますが、中国と軍事政権との深いつながりから、国民の中に反中意識が強いのです。
こうした中国とタイのネット上の熱いバトルに、やがて香港人と台湾人も参戦し、結束して中国人ネット民に反撃するようになりました。
これらの国、地域は、ミルクティーをよく飲みます。エバミルクを入れる香港式ミルクティーは有名ですし、台湾のタピオカミルクティーは日本でもブームになりました。タイはチャーイェンというミルクティーです。
一方、中国ではお茶にミルクをいれる風習はありません。そもそも牛乳を飲むようになったのはつい最近のことで、むしろ豆乳文化です。そのため、反中国の連帯を「ミルクティー同盟」と呼ばれるようになったわけです。ツイッターでは「Milk Tea Alliance」とも表現されています。
そして現在、このミルクティー同盟に、反中意識を強めつつあるミャンマーの若者たちが加盟してきたというわけです。ミャンマーではラペイエというミルクティーがあります。加えて、インドでもこのミルクティー同盟に同調する動きがあります。言うまでもありませんが、インドのミルクティーといえばチャイです。
1773年、アメリカではイギリスの植民地政策に憤慨した保守派が、ボストン港に停泊していたイギリス東インド会社の船から茶箱を海に投棄するという「ボストン茶会事件」が起こりました。この事件はやがてアメリカ独立戦争へとつながるわけです。そしてこのときの「茶会(ティーパーティ)」は、オバマ政権時代のアメリカでも、「大きな政府」に反対する保守系・反オバマの政治運動のアイコンとして現れ、共和党躍進の原動力となりました。
そう考えると、アジアで拡大しつつある「ミルクティー」を核とした反中国同盟も、中国の覇権主義や統一主義に対抗するためのアイコンとしては、非常に意義深いものがあります。
現在、アメリカ、日本、オーストラリア、インドの各政府は、安全保障や経済の問題において「クアッド」という対中包囲網を構築しつつありますが、「ミルクティー同盟」は民間レベルの対中包囲網として期待されています。
アジアの若者で、中国に憧れる人など、まず皆無です。誰も「中国の一部」になりたくないし、中国人になりたいとも思いません。中国人になれば、自由な言論も行動も自由意志も奪われてしまいます。そしてその中国の影響力が自国にまで及びつつあることに、アジア各国の若者は警戒し、反発しているわけです。
すでに香港の末路を見てしまった若者には、中国に対する危機感しかないでしょう。「ミルクティー同盟」は今後も急速に各国へ広がっていくはずです。
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