全世界からバッシングを受けた森喜朗氏の女性蔑視発言など、日本でも「差別」に対する発言が社会問題になっています。子どもたちの発言も、親としては心配になることが多いのではないでしょうか。今回の無料メルマガ『幸せなお母さんになる為の子育て』では、著者であるパピーいしがみさんがお子さんの「○○のくせに」という発言が気になるというお母さんからのお悩みに、黒柳徹子さんの過去の発言などを例に出してじっくり答えています。
〇〇のくせに
こんばんは。パピーいしがみです。
森喜朗さんの女性蔑視から始まり、朝のテレビ番組「スッキリ」でのアイヌ差別問題、そして又、渡辺直美さんへの侮辱演出。
次々とニュースになっていますよね。
森さんの発言の時にはお孫さんから叱られた…みたいなコメントがありましたが、特に今は、アメリカでの黒人差別が世界的な大問題になっているし、どんな「差別」もあってはならない、という方向に向かってくれています(でもそれが「当たり前」のはずなんですね)。
そんな中での森さんの発言に「又、やったよ…まずいな~」と思っていたら、案の定、世界中からバッシングを受け、何とか穏便に済まそうとしていたオリンピック委員会も日本政府も擁護できなくなってしまいましたね。
ただ、私自身はこうやって叩かれて良かったと思っています。なぜならこれで、世界の中で「自分たちは遅れている」という事が日本のリーダーたちにも分ったでしょうし、擁護していれば、いつまでたってもその風潮は残ってしまいますから。
男尊女卑とか、差別とか、力や立場で相手を貶めるとか、本当にもう「そんな時代じゃない!」んですね。
ただ、こうやって急激に変化していく中で、どうやって子供たちに教えて行ったらいいか?は多くのお母さんがお悩みだと思います。
なので、今日のメルマガは、子供の「〇〇のくせに」と言う言葉が気になる、とご相談を下さったケンママさんからのご相談を紹介したいと思います。ケンママさんからのメールはこうでした。
始めてメールをさせて頂きます。私には7歳と5歳の息子がおります。私は三姉妹で育ったので、男の子はこんなに乱暴で、ケンカばっかりするのか?と驚いていたのですが、過去のメルマガで「親が介入するから自分たちで解決できない」「ケンカを止めさせようとすればするほどエスカレートする」とあって、こんなにケンカするのは止めさせようとしていたから?じゃあ、間に入ったり仲裁するのはやめてみよう、と試してみました。
私が介入せずに様子を見るようにしたところ、最初は下の子が尋常じゃないほど大泣きをして「本当に放っておいていいのかな?」と心配だったものの、次第にケンカが早く終わるようになり、始まったと思ったら、すぐに楽し気に遊びだしたり。ケンカをする回数もぐっと減り「ホントだった…」と驚いています。
ただ、すみません。そこで気になることが有ります。それは上の子が下の子に「お前なんて〇〇のくせに」という言い方をすることです。例えば「お前なんてまだ赤ちゃんのくせに」とか、「まだ自転車も乗れないくせに」とか、「字も読めないくせに」のように、なんというのでしょう?蔑むような言い方がとても引っかかっているのです。
でもいちいちそんな言葉を注意すれば、しょっちゅう介入しなければならないし…とも考え、悶々としながら我慢しています。放っておいた方がいいのでしょうか?それともその都度、注意した方がいいのでしょうか?アドバイスを頂ければ嬉しいです。
とこんな内容でした。「〇〇のくせに」って嫌な言葉ですよね。ケンママさんが気になるのもとてもよくわかります。
そこで私はこんなお返事をしました。
ケンママさん、メール拝見しました。
兄弟げんかの仲裁や介入をやめたら子供達のケンカが減ってきたとの事。よかったですね(^^)
でも長男さんが「〇〇のくせに」という言い方をするんですね。これって嫌な言い方ですよね。軽蔑しているような。愚弄しているような。私もとても嫌いな言葉です。
そんな言葉を吐く長男さんに、どう言い聞かせたらいいのか?とお悩みのようですが、ちょっと私の経験を聞いていただけますか?
実は私はある時期まで、この「〇〇のくせに」が、こんなに嫌な言葉だとは知らずにいました。それを知ったのは、私が高校生の時、当時必ず見ていた「ザ・ベストテン」という番組で、
MCだった黒柳徹子さんが真剣な顔をして「“〇〇のくせに”という言葉は…」と番組の流れを断ち切って、ご自身の気持ちを涙ながらに訴えたのです。その時に初めて私は「“〇〇のくせに”って差別を生み出す言葉なんだ」と知ったのです。
もちろん差別がいけない事は知っていました。自分はいじめなんかもしないし、決してイヤな人間じゃない、と自負もありました。でも「〇〇のくせに」は、友達同士でも普通に使う言葉でしたし、何の違和感も持たずにいました。
ザ・ベストテンという番組は、毎週の歌謡曲の上位から10人をスタジオに呼んだり、地方まで歌手を追っかけ、その場所場所でロケをして歌を披露したり…と、黒柳徹子さんと久米宏さんの軽快なMCの掛け合いと、毎回起きるハプニングが面白くて、必ず「昨日のベストテン見た?」とクラスで話題になるほどの、とても視聴率の高い番組でした。
ある時、顔を黒く塗ったシャネルズというグループがヒットチャートに躍り出て、地方でロケをすることになり、それを知った番組のファンが沢山集まりました。その時、現地でシャネルズを待っていた観客の中の1人、10代後半ぐらいの男性にインタビュアーがマイクを向けた時、こう言ったのです。
「シャネルズって、なんで黒人のくせに香水の名前付けてるんですか?」
その男性は少しヤンチャな風貌で、友人も数人一緒にいたので、少しおどけて言ったのだと思います。決して愚弄するつもりもなかったと思うのですが、その時黒柳さんが番組の流れを止めて、スタジオでカメラに向かって真剣な表情でこう言いました。
「シャネルズは黒人のくせに、という風に質問をなさった坊やがいらしたんですけれど。ああいう風に“何々のくせに”という風に、顔の色とか、国籍が違うということで、そういう風に区別をしたモノのいい方をすると、あたしは涙が出るほど、とっても悲しく思いますので。ぜひ、みなさん国籍が違う、そういったことで一段高いところから人を見下ろすような風に、偶然だったんだと思うんですよ、あのかたは。だけど、どうぞそんな風に何々のくせに、とかそういう風なことは言わないでください。お願いします」
(この言葉は、確認の為に私も調べて記載したのですが)書き出してみると、日本語の文法としてはおかしいし、黒柳さんが沸き上がる感情を必死で抑えている感じがします。ですが黒柳さんの「心の叫び」のような、その訴えは強烈に私の心に届きました。
あれだけ見ていた番組なのに(ずいぶん前の事でもあり)ほとんどの記憶はありませんが、この時の映像・雰囲気・黒柳さんの声、表情は、驚くほど克明に覚えています。それだけ私の中では強烈で、深く心に刻み込まれたんですね。
黒柳徹子さんって、いつも口調が軽快で面白くて、テレビでは怒った顔をなさることはほとんどありません。でも(というより「だからこそ」)黒柳さんの真剣な表情・番組の進行を止めてまでの訴えに「大事な事なんだ」と感じたと思うのです。
そして私はその後もずっと今に至るまで「〇〇のくせに」を自分でも言わない様になったのでした。
もちろん、自分が言わなくても、人から言われたことはあります。でもその時には、その言葉に腹が立つよりも「この人、残念な人だな」と、とても冷ややかな目で見ている自分がいました。それを考えると、子供に教えるときには「そんな言葉を使っちゃダメ」ではなく、「そこには差別の気持ちが隠れているよ」と教えたいですし、「差別」も含め理解してほしいと思うのですね。
そこでどうでしょう?長男さんに話すときには、その都度叱るのではなく、子供と一対一になれるような時に、冷静に話してあげる事がいいのでは?と私は思うのです。例えば…
「〇〇君。お母さんね“〇〇のくせに”という言葉がとても嫌なの」
「それはね。“〇〇のくせに”って弱い人を攻撃する言葉だから」
「昔はね。“子供のくせに”とか“女のくせに”ってよく言われたんだよ。でもそれってすごく嫌な言葉だと思わない?」
「もしあなたが誰かに“〇〇のくせに”って言われたら、お母さんはすごく悲しい思いがする」
「だから〇〇君にも使ってほしくないんだよ。わかるかな?」
のような感じで冷静に淡々と、そして真剣な表情で伝えてほしいのです。
黒柳さんが少年を責めなかったように、子供を叱るのではなく、「その言葉は嫌い」だと母さんの気持ちを話してあげたら?と思うのですね。もちろん、それですぐ子供が理解してくれるかどうか?はわかりません。でも理解してくれなかったら、「まだ早かった」のだと思って1か月、2か月と日を置いて又、話してあげてほしいのです。
もちろん親がそんな言葉を使っていない事、差別の気持ちが無い事は大前提です。私はそんな風に思いますがどうでしょう?
このようにお返事したところ、ケンママさんからはすぐにご連絡がありました。
早速のお返事ありがとうございます。とても丁寧な内容に感動しました。「〇〇のくせに」は差別につながる言葉だったのですね。
パピーさんにご相談したものの、私自身に何がモヤモヤしているのか自分の気持ちが整理できていなくて、子供にもどう言ったらいいのかわからずにいました。ですが「差別」や「弱い人を攻撃する言葉」とお聞きして、私のモヤモヤした理由がはっきりしました。
そしてパピーさんご自身の体験もお話しくださって、「〇〇のくせに」は、ただの口癖と捉えるのではなく、「差別の気持ちを持たせない」という意味でも子供たちにちゃんと教えていかなければならない重大な事なんだなと理解しました。
私も子供の頃、「子供のくせに」と言われました。「女のくせに」とも言われました。その時はとても嫌な思いをしたのに、いつの間にか忘れ、自分がその後、一度も「〇〇のくせに」を言わなかったか?と聞かれると自信がありません。なので子供に話す前に、まず自分がそんなことを言っていないか、夫にも聞いてみたり、自分でも注意してみます。そして自分が言っていない事が分かったら、子供に話そうと思います。パピーさんが言われたように、子供を叱るのではなく、冷静に淡々と自分の気持ちを伝えたいです。
パピーさんが「もし理解してくれなかったら」と書かれていたように、年齢によっては理解が難しく、時間が掛かるのだろうと思います。でも短期で考えずじっくり構え、子供が理解できるように、親の姿勢も見せながら教えていきたいと思います。今回は、お返事ありがとうございます。とても勉強になりました。
その後、ケンママさんからご報告があって、長男さんと話ができたそうです。そして長男さんも神妙な面持ちで真剣に聞いてくれて、お母さんの思いは伝わったようだ…と言われていました。その後は「〇〇のくせに」の言葉は聞いていない、との事でしたが、言葉だけでなく子供の姿勢や態度なども一緒に見ていきたい…と書かれていました。
よかった…。長男さんが理解してくれたのはもちろん。もう一つ。長男さんが一方的に叱られなくてよかった♪と思ったのです。と言うのも過去の私がそうであったように、自分自身がその言葉に「差別が含まれている」とは分からなかったからです。
又、言葉ってどうしたって周りが使っていたり、環境に左右されやすくて、あの国民的なアニメ「ドラえもん」でも、ジャイアンがのびた君に向かって「のびたのくせに」って、何度も口にしているのです。
ジャイアンのキャラクターもありますから、それを揶揄するつもりはありませんが、森さんの言葉や、渡辺直美さんへの演出も含めて、まだ私たちの周りには「差別の気持ち」が隠れているんですね。でもすごいスピードで改善に向かっているのも確かです。
子供達が大きくなる時は、今よりさらに敏感になると思いますから、是非、大事な事ととらえて教えてあげてほしいです。
ケンママさん、貴重なご質問、そしてご報告をありがとうございました。
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