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大学生を借金で苦しませる日本。元国税調査官が暴く授業料「大幅値上げ」の大嘘

日本の大学進学率はOECD加盟国平均より10ポイントも低い51%。急激に上がった国立大の授業料など学費高騰が大きな原因の一つで、いわゆる教育格差は広がるばかりです。政府もこうした現状は国力の低下に繋がると、返済不要な給付型の奨学金制度を導入。しかし、これに当てる予算があまりにも貧相でお粗末と呆れるのは、元国税調査官の大村大次郎さんです。今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』では、そもそも授業料値上げの根拠としている「財政悪化」が大嘘と指摘。大企業や高所得者向けの減税や補助金、有力政治家の地元への公共事業費などには桁違いの税金を使っていると明かし、この国の未来を真剣に案じています。

※本記事は有料メルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』2021年4月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール大村大次郎おおむらおおじろう
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。

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日本はもはや途上国

新型コロナ禍により、日本の国家システムのボロがいろいろ出てきました。いまだに世界で100何番目というPCR検査、欧米の何十分の一の感染者しかいないのに崩壊寸前の医療体制、休業補償もまともに支払わずに国民の自粛で乗り切ろうとするお粗末な政策、持続化給付金やアベノマスクなどたまに税金を支出する際には必ず妙なルートで発注をし税金のピンハネをする、等々、数え上げたらきりがないほどです。

もう日本は先進国ではない、というような気持ちになった人も多いのではないでしょうか?が、今回、ボロが出たのは氷山の一角なのです。日本という国は、目に見えて衰退の途をたどっています。その象徴的な分野が教育です。日本の教育分野の衰退は目を覆いたくなるほどなのです。

あまり大きく取沙汰されていませんが、近年、日本の大学の授業料は大変なことになっています。国立大学の授業料は、昭和50年には年間3万6千円でした。しかし、平成元年には33万9600円となり、平成17年からは53万5800円にまで高騰しているのです。40年の間に、15倍近くに膨れ上がったのです。バブル期の大学生と比較しても、約2倍です。

そして、この授業料の高騰のため、大学に行けない若者が激増しています。昔は、貧しい家の子供であっても、「勉強すれば出世できる」という道がありました。しかし、現在では、いくら勉強ができても、大学の授業料を払える経済力がないと、出世できないのです。

また大学に行くために、多額の借金をする若者も増えています。現在、90万人以上の大学生が「有利子の奨学金」を受けて学校に通っています。この「有利子の奨学金」というのは、奨学金とは名ばかりで、実際はローンと変わらないのです。厳しい返済の義務があり、もし返済を怠れば、法的処置さえ講じられるのです。この「有利子の奨学金」を受けている90万人以上という数字は、大学生全体の約の3分の1です。

彼らは大学卒業時には、数百万円の借金を抱えていることになります。そして2000年代は就職難が続いたため、就職もできないままに、借金だけが残っている、という卒業生も多々おり、これは大学の間で大きな問題となっています。また新型コロナにより、さらに就職難になっており、今後もこういう学生は増えるばかりだと推測されます。

「大学生の半数近くが、借金をしないと大学に行けない」などというのは、一昔前の日本では考えられなかったことです。40代、50代の人には、信じられない話ではないでしょうか。バブル崩壊以前の日本では、有利子の奨学金を受けて大学に行くような学生は、あまりいませんでした。よほど家庭に事情がある学生だけだったのです。

今の日本は少子化が進んでいて、就学人口も非常に減っています。その少ないはずの就学世代にさえ、まともに教育を受けさせられていないのです。教育というのは、国の根幹にかかわるものです。この国は、もう崩壊寸前とさえいえるでしょう。皆さんが思っている以上に、日本という国は終りが近づいているのです。

実質的に世界一高い大学授業料

しかも、日本のこの授業料は、実質的に世界一高いのです。そもそも、大学の授業料などというものは、世界中の国が威信をかけて、安くしているものです。高等教育こそが国力の礎だからです。

日本は少子高齢化社会を迎え、子育てに関しては国家を挙げて支援しなければならないはずなのです。にもかかわらず、大学の授業料が実質世界一高いというのは、どういうことか?ということです。下のデータを見れば、わかるように、ドイツ、フランスの大学の授業料は、まるで無料のように安いのです。イギリスとアメリカの大学の授業料は、日本よりも高く見えますが、両国は奨学金制度が充実しているため、お金がなくても入れる学生も多いのです。

イギリスの場合は、誰でも授業料の全額を国から借りることができ、返済額は卒業後の収入に応じて決められます。収入によっては返済免除となります。だから、収入が少ない人は、全額返済をしない場合もあるのです。

アメリカの場合、連邦政府の奨学金、州政府の奨学金、企業の奨学金などの幾多の奨学金制度があり、大学生の70%が何らかの奨学金を受け取っているのです。しかも、アメリカの奨学金は、イギリス、日本の奨学金と違い、原則として返済不要なのです。

日本の奨学金は、ほとんどが返済を要するものであり、収入による返済免除の制度などもほとんどありません。実質的に、日本の大学生が先進国の中では、断トツで負担が大きいといえるのです。

アメリカで何らかの奨学金を受けている人の割合

公立4年制大学 ………… 73.9%
私立4年制大学 ………… 86.1%
アメリカ全大学合計……70.7%
「The National Center for Education Statistics」より

先進国の大学の授業料

・日本(入学金+授業料 私立は+その他)
国立大学  817,800円(282,000円+535,800円)
公立大学  935,555円(397,595円+537,960円)
私立大学 1,314,251円(269,481円+857,763円+187,007)
※国公立大学は2012(平成24)年度、私立大学は2011(平成23)年度

・アメリカ(2009年)
州立大学(総合大学)  約835,000円
州立大学(4年制大学)  約613,000円
私立大学(総合大学) 約3,423,000円
私立大学(4年制大学) 約2,049,000円

・イギリス(2011年)
国立大学    最高額約1,100,000円

・フランス(2010年)
国立大学       約21,000円

・ドイツ(2012年)
州立ボン大学     約24,400円
(文部科学省・教育指標の国際比較より)

韓国より20%も低い大学進学率

奨学金の返済問題に関しては、政治家や官僚も、さすがに気づいたらしく、最近になって、国は、給付型の奨学金の創設に向けて動き出しました。給付額は月3万円を給付し、返済不要という奨学金をつくることになったのです。

しかし、この新しい給付型の奨学金制度は、あまりにお粗末なのです。この給付型奨学金に対する予算は、年間たったの70億円です。一人当たり年間36万円支給するとして、せいぜい2万人分にしかなりません。有利子の奨学金を受けているのが90万人だからその2%程度です。焼け石に水とはこのことです。住民税を払っていないなど本当の貧困家庭の子しか受けられないのです。年間100兆円の予算を使っている国家が、大学生の奨学金にたった70億円しか出せないのです。

この貧相な日本の大学教育制度は、大学進学率に如実に表れています。日本は、大学進学率において先進国の中でもかなり低い部類なのです。OECDが発表したデータによると、2012年の時点で、日本の大学進学率51%。OECD31か国中、22位なのです。アメリカ、イギリスなどと比べればはるかに低いし、OECDの平均値62%よりも10ポイントも低いのです。しかも隣国の韓国では、大学進学率は71%であり、日本は20ポイントも低いのです。

もちろん、この日本の大学進学率の低さは、大学の授業料の高さや奨学金などの諸制度のお粗末さが最大の要因です。繰り返して言いますが、日本は急速に少子高齢化が進んでおり、子供は少なくなっているのです。にもかかわらず、その少ないはずの子供たちにまともに教育を受けさせることさえしていないのです。なぜ日本は、こんなに政治が貧困な国になったのか、ということです。

金持ちの子しか大学には行けない

日本では大学の授業料が高額な上、進学するためには、学校のほかに塾などに行かなくては難しいです。既存の学校があまり充実していないからです。となると、金がある家の子しか、いい大学に入れないことになります。それは、実際にデータとしても表れているのです。

東京大学が行っている「学生生活実態調査」によると、2016年の東大生の75%以上が、親の年収は750万円以上なのです。そして、東大生の親の約60%は年収が950万円以上なのです。年収950万円というと、かなりの高収入です。親にそれだけの収入がないと、いい大学には入れないということです。

東京大学というと、高級官僚のシェア率が断トツに高く、一流企業に就職できる確率も非常に高いです。つまりは、金持ちになることをほぼ約束された人たちです。そして、この東大生になるには、金持ちの家に生まれないと難しくなっているのです。このようにして、日本では急速な勢いで社会の世襲化が進行しているのです。

ほかの分野では湯水のように税金を使う

大学の授業料がなぜこれほど高騰したかというと、表向きの理由は、「財政悪化」です。「少子高齢化で社会保障費がかさみ財政が悪化したために、各所の予算を削る必要がありその一環として、大学の授業料が大幅に値上げされた」というのです。

しかし、それも真っ赤なウソです。日本は90年代以降、狂ったように公共投資を濫発しているのです。しかも公共事業の多くは有力政治家の地盤強化のためのものだったのです。たとえば、自民党の有力議員である二階氏が予算委員長だったときには二階氏の地元の和歌山県に毎年平均1000億円以上の公共事業がばら撒かれていたのです。なんと東京より和歌山の公共事業費の方が多い年さえあったのです。

また大企業や高額所得者には、大減税を行っています。大企業への補助金も莫大なものです。2000年代、自動車業界に支出されたエコカー補助金は1兆円に近いものでした。大学生の奨学金には70億円しか出さないのに、有力議員の地元には1000億円以上の公共事業を発注し、エコカーの補助金には1兆円を出すのです。

そういう国に未来があると思いますか?

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