セミナーや講演会の「質疑応答コーナー」が盛り上がるのは、講師としてありがたいものだといいますが、受けても通り一辺倒なことしか答えようがない質問もあるようです。今回の無料メルマガ『販売力向上講座メールマガジン』では接客販売コンサルタント&トレーナーの坂本りゅういちさんが、講師に対して「一番大切にしているもの」を尋ねることが不毛である理由を紹介。さらに、そのような質問に嬉々として答えるような人間については「それっぽいことを語りたいだけの人」と一刀両断しています。
「大切にしていることは何ですか?」と聞いたことはありませんか?
今日の内容、むちゃくちゃ口が悪くなると思うので、閲覧注意です。
セミナーに参加したり、私自身が研修・セミナー等をやっていたりすると、たまに質疑応答の時に、「一番大切にしていることは何ですか?」的な質問を受けることがあります。
例えば、講師に向かって、「〇〇さんは今日の内容でこう仰られていました。そこでお伺いしたいのですが、〇〇さんが接客で一番大切にしていることは何ですか?」みたいな質問をするわけです。
聞かれた側としては真摯に答えようとはすると思いますが(私もそうなので)、ただこの質問は、本質をついているように見えて実は全然そんなことはない質問でもあります。というか講師側からすると、この手の質問をしてくる人はあまり質問が上手ではないなーと感じるのが本音です。
セミナーや研修をしている講師側の人というのは、基本的に何かしらのプロであることがほとんどだと言えるでしょう。そのプロに対して、「一番大切にしていることは何ですか?」「大事にしていることは何ですか?」と聞くのですが、返ってくる答えはまず間違いなく基本的なことだったりします。
少し前の配信で、私がこれを聞かれた時に、「結局印象ですかね」的な答えを返したと書いた記憶がありますが、「印象が大事」なんて、基本中の基本で、誰もがわかり切っていることだと思いませんか?
でもこの質問で返せる答えは、そんなもんです。だって印象が悪ければ、何も始まらないので、「一番大切にしていることは何か」と聞かれればそう答えるしかありません。
質問をしている側の人は、一番大事にしていることを聞くことで、何か名言のような、それらしい答えが返ってくることを期待しているのか、それとも「表面的ではない、本質的なところを聞いているでしょ?」とアピールしたいのかは知りませんが、そんなこと聞くまでもないのです。この話は多分反論がある人も多そうな件なのですが、私は結構そう思っています。
そんな誰でもわかるような基本的なことではなくて、もっと深い話をしてくださいよと言わんばかりの人もいるのですが、質問に具体性も何もあったものではないので、これでは通り一辺倒なことしか答えようがなく、その場にいる他の人たちの時間がもったいないだけだと思うんですね。
まぁでもこれは正直、講師側に立ってみて初めてわかることのようにも思います。
私も講師のような立場に立つ機会がなかった頃は、社長や上司に「一番大切にしていることって何ですか?」と聞いていたことがあります。それを聞いて何となく本質的なことを聞き出そうという魂胆があったのですが、返ってくる言葉は、「相手のことを考えることだね」とか、誰もがわかり切っている当たり前の言葉ばかりでした。
当時は、もっとちゃんと教えてくれよと思っていたわけですが、よくよく考えてみれば、自分の置かれた状況や立場なども何もまともに伝えることはなくただ聞いていただけなので、相手も私に合わせて答えることはできないのです。そして何より、プロであればあるほど、基本を大事にしているものなので、例え状況を詳しく伝えても返ってくる言葉は変わらなかったのでしょう。
その後、上司になった時や、講師として人前に立ってみて初めてその意味がわかりました。
「大事にしていること」を聞かれて嬉々として答えてくれる人は、それっぽいことを語りたい人です。多分その人は本当のプロではない場合も少なくないように思います。
そんなことに興味を示すよりも、聞くならもっと必要性のあることを聞けるように意識しておいた方が、相手にもオッと思ってもらえるような気がしています。
今日の質問です。
- あなたが後輩や部下などから、「一番大切にしていること」を聞かれたら、何と答えますか?
- その質問をするよりも、もっと聞かれたいと思うことはどんなことですか?
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