昨今、SNSにおける「デマ拡散」など、誤った情報が爆発的に拡がることはよくありますが、そんなデマに惑わされないためには、どうすればよいのでしょうか? 今回の無料メルマガ『クリエイターへ【日刊デジタルクリエイターズ】』で編集長の柴田忠男さんが取り上げているのは、 現代の「ファクトチェック」の方法を記した興味深い一冊です。
偏屈BOOK案内:立岩洋一郎『コロナの時代を生きるためのファクトチェック』
立岩洋一郎 著/講談社
表紙がマンガだから、ジュニア向きの本かと思った。組版がゆるやかでルビも多い。「ファクトチェック」とは何か?について、若い世代に向けて書かれた好著(かな~?)であった。
誤った情報が大量に拡散し、爆発的に広まることを「インフォデミック」と呼ぶ。「それに負けない自分をつくっていく術をやさしく伝える」と文中にあったが、読み終わったら、ちょっと違った。
「ファクトチェック」は「ファクト(fact)=事実」と「チェック(check)」という二つの単語からできている。「ある情報について、それが事実かどうかを検証する」という取組みを指す。「ファクトチェック」には5つのルールがある。
1)非党派性と公正性
2)情報源の透明性
3)財源・組織の透明性
4)方法論の透明性
5)明確で誠実な訂正
要は、公正性と透明性を常に考える必要があるということだ。無限にある情報の中から、ファクトチェックすべき情報を選択するための強力なツールがある。それはAI(人工知能)である。
「ファクトチェック」の仕組みは、端的言えば、AIに「言葉」を、そして研究者が「どういう情報を欲しているか」を教え込んでいくものである。AIがひろいあげてくる対象は、「事実」として発信されているものでなければならない。そこで研究者が目をつけたのが、網羅性のあるSNS、ツイッターだ。
ツイッターをチェック対象とすることで、他の媒体が発信している情報をも取り込むことができる。具体的作業は「疑いのある情報を機械で絞り込む」ということになる。しかし機械は情報の伝えるニュアンスが分からない。……よりよってツイッター、バカッター(死語?)が対象だなんて。
それを見分ける能力をAIに学習させていく。それは凄まじく大変な作業であろうことは想像できる。AIにさまざまな人たちの手が加わることで、疑義言説データベース(クレイムモニター)はファクトチェックの重要なツールになった。
しかし、最終的なチェックは人間がやらなければならない。ファクトチェックは、AIと人間の分業によってなされていると言ってもよい。
すなわち、ファクトチェックという試みが成功して日本に定着するか否かは、人間とAIの分業がうまくいくかどうかにかかっているのです。
ファクトチェックとは、誰かの発言に対して批判することではありません。あくまでも事実を提示して、発言内容が事実と言えるのか、間違っているのかを指摘する作業です。さらにファクトチェックは、発言者の人格を否定するものではありません。どんな人でも間違いはあるという前提に立ち、それを指摘する取組みです。
とはいえ、まだ日本にそういう考えは根付いていない。ファクトチェックをされたことに怒る人たちもいる。筆者らも感情的にならず、ファクトチェックの取組を粘り強く説明していくことが必要だと感じている。だったら、言わせてもらうが、タイトルも表紙イラストも、全然チガウダロ~。
編集長 柴田忠男
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