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80%が不信感。フィリピン人がコロナワクチンを打ちたがらない訳

海外在住の日本人がリレー形式でコラムを配信する無料メルマガ『出たっきり邦人【アジア編】』。今回はフィリピン中部に位置するセブに住む日本人・トム爺さんが、同国のワクチン事情をレポートしてくださいました。成人の5人に1人しか接種を希望しないというフィリピンですが、その裏にはどんな理由があるのでしょうか。

ワクチン懐疑論 背景

やっぱりセブは未だ「修正された一般隔離政策」中。フィリピン全土としては新規感染者が1日1万人を超えちゃったりしたが、最近は4,000人~6,000人をいったり来たりというところだ。セブとしては、何とか抑えてる、セブ市1桁~2桁いっても前半というところ。

ワクチン状況はまず中国のSバックが入ってきた。まず170万人に及ぶ医療従事者を優先に接種を進めていたはずが、案の定先に割り込んで市長やら有名人の子供やらが接種したことが発覚。ドゥテルテ大統領お怒りの鉄槌。「順番守れ!!」と市長らの実名を公表。

イギリス、アメリカの大手会社ワクチンもようやく徐々に入り始めたところだが、やはり大多数は中国製のもの、ロシアのワクチンも許可が下りたが、人口1億人のフィリピン人に対して、まだまだ微々たるものである。

ワクチンの数量云々だけでなく、接種が進まない背景には、実はフィリピン人のワクチンに対する不信感、不安感、もっと言えば恐怖感があるといわれている。実際アンケートをとっても積極的にワクチン接種を希望する成人は20%程度。成人の5人に1人しか接種を希望していないってことになる。

ワクチンねえ。数年前のワクチン騒動が蘇ってくる。

亜熱帯地域のフィリピンでは、蚊を媒介とするデング熱で毎年かなりの人数が亡くなっている。2016年導入されたデング熱ワクチン「デングァシア」を接種した子供が死亡。副作用の恐れがあるとして2年後突如接種中止。保健相が訴追されたことで大論争。ワクチン懐疑論急増につながる。

コロナ渦において、国も緊急使用許可をバンバン出し、色々な国からのワクチン入手に必死である。

でもフィリピン人、やっぱり積極的ではない。例えば、おいらの周り。中国製のワクチンを無料で受けられるという申し出に、「希望する」と答えたのはわずか7%。無料でもこんな感じ。「信じられない」、「副反応が怖い」というのが多くの理由だそうだ。

ワクチンを接種したから新型コロナにかからないってことではない。かかる人はかかるし、少しでも重症化するリスクを下げることになればいいということだとは思うんですよ。「その」ワクチンが本当にリスクを下げることができるんであればね。

ワクチンを打つことに健康上リスクが生じてしまう人もいるだろうし、受けるか受けないかは個々の判断と責任。お金がないから、数が少ないから、なんてことではなくね信用できないには理由があるわけで、国はそれに対してどうしたいの?どうするべきなの?まあ他の国でもなかなかそうできないから難しいだろうけどさ。

どういう種類があって、どういう効果があって、どういう方法で、副反応は…、それも無しにバンバン緊急使用許可だしてるんで、国民がついていけてない気がする。え、まじか!?本当に大丈夫なのか!?って。

セブについて言えば緩和されてはいるが隔離政策下で、新規感染者が抑えられてきていることもあり、恐らくこのまま静かにしてれば、コロナはなくなるんじゃないかと思っている人間が大多数なんだと思う。でもさあ、忘れてるかもしれないけど君たち。観光大国なのさ、セブは。このまま観光客を受け入れないつもり?

「よっしゃ俺が見本だ!」と思ったのか、ドゥテルテ大統領。

寄贈が発表されていた中国のシ〇ファーム製のワクチンを接種。「俺がうったぞお!!」と写真付きで大々的に発表するも、同社がフィリピン食品医薬品局にこのワクチンの緊急利用承認を正式に申請していないことが発覚。国内で大統領のこの行動に対して批判を招いてしまった。慌てた大統領は記者会見でこの行動を謝罪。同時に駐比中国大使にワクチンの寄贈を撤回するよう申し入れたとのこと。

ドゥテちゃん、だめじゃん。そっちの順番も守らないとねえ。

著者/トム爺(「ビサヤン天国 ―体力と忍耐と―」連載。フィリピン・セブ在住)

image by: Michael D Edwards / Shutterstock.com

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