MAG2 NEWS MENU

中国“一人っ子政策”の大失敗で人口減。それでも少数民族「断種」の愚行

かつて推進した「一人っ子政策」を2016年には「二人まで」に緩和、さらに5月31日には三人目の出産を認める方針を発表するに至るも、一方でウイグル族など少数民族に対しては断種政策を進める中国政府。こうした矛盾はどこから生まれるのでしょうか。その裏事情をリークするのは、メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』著者で台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんが暴露する中国当局の「論理」は、あまりに身勝手で人権を無視したものでした。

※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年6月2日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:黄文雄こう・ぶんゆう
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。

中国と台湾の真実を最もよく知る黄文雄先生のメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

【中国】漢人が抱く人口減への危機感と少数民族の断種政策

子育ては「1人だけでもくたくた」 中国「三人っ子」政策に北京の人は

中国は5月31日、これまでの産児制限を緩和して、夫婦1組につき3人まで子供をもうけることを認める方針を発表しました。

これは、急速な人口減少への懸念があります。中国は1979年より一人っ子政策が行われてきましたが、2016年に緩和されて、2人までは子供を持つことが認められました。そこから5年足らずで、さらに人数が緩和されたことになります。

その背景には、急速な人口減少が進んでいることがあげられます。今年の4月、フィナンシャル・タイムズは、2020年に中国の人口が50年ぶりに減少したことを報じました。これに対して、中国は人口は増加しているとして、反論しました。

中国、昨年の人口は増加した-人口減の報道に反論も詳細に言及せず

中国では10年ごとに行われる国勢調査が4月中旬に発表される予定でしたが、なぜか約1カ月遅れて5月11日に発表されました。その数字では、たしかに2020年の人口は微増しているものの、14歳以下の人口が、その人たちが生まれた年の出生数の合計数よりも多いため、かさ上げされているのではないかという疑惑が出て、数字の信憑性が疑われています。

中国国勢調査に疑念 14歳以下の人口、合計出生数超す

国連は中国の人口は2029年をピークに、下がっていくと見込んでいました。しかし、すでに人口減少が始まっているとすると、その見込より事態は8年も早まっていることになります。少なくとも、2025年より前に、中国の人口減少が始まるという予測も少なくありません。

中国の人口減少は従来の想定より早く始まる

そうなれば、さまざまな問題が噴出します。中国の人口減少は、言うまでもなく少子高齢化が原因です。中国の国勢調査でも、15~59歳の労働人口は8億9,400万人で、10年前より4,500万人減少した一方で、60歳以上が2億6,400万人で、10年前より8,600万人増えています。

中国共産党 夫婦の子ども“3人まで”認める方針

ということは、いずれ労働人口の減少により、生産も消費も減少していくことになります。そして高齢者の福祉問題が深刻化します。

日本も同様の問題を抱えているものの、皆保険制度や介護保険、年金などの制度が確立しているのに比べて、中国ではこうした社会福祉制度が未整備です。人民解放軍の退役軍人が年金額が少ないとデモをする光景も、中国各地で見られています。

中国と台湾の真実を最もよく知る黄文雄先生のメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

しかも、日本の場合には、1994年に高齢社会(65歳以上の人口が14%以上)になったときには1人あたりのGDPが約4万ドルでしたが、2025年に高齢社会になると見込まれる中国では、まだ1人あたりGDPが1万ドルをようやく超えたくらいです。そのため中国では「未豊先老」(豊かになる前に老いてしまう)の社会が到来するとよく言われています。

これまで、2030年ごろに中国がアメリカのGDPを抜いて世界一になると予測されてきましたが、最近は、一度はアメリカを抜くものの、再びアメリカに抜き返されるという予測も出てきました。それどころか、ロンドンの経済調査会社キャピタル・エコノミクスなどは、もうアメリカを超えられないという分析を発表しています。

中国はアメリカを抜く経済大国にはなれない

すでに格差社会が広がっている中国では、経済的問題で2人目を積極的に生もうとする夫婦はじつに少ないのが現状です。しかも中国では教育費が非常に多くかかります。10年ほど前の2011年の数字ですが、教育費が総支出の44%を占めています。

教育費、世帯総支出の44% 中国

そのため中国では今年に入って、個別指導の学習塾の週末授業の禁止など、規制強化に動いています。教育費の高騰が出生率の低下につながっていると思われるからです。

中国、教育産業への規制強化 生徒と家計の負担軽減=関係筋

とはいえ、いくら「一人っ子政策」「3人の子供でもいい」と規定したところで、中国人にとっては関係ないことです。一人っ子政策が行われていても、中国は毛沢東時代の8~9億人から14億人まで増えました。逆に、いくら子供を増やそうと煽っても、増えることはないでしょう。中国の少子高齢化は日本以上のペースで進んでいます。

加えて、中国が心配するのは漢民族の減少であって、他の少数民族については相変わらず、事実上の断種政策を行っています。

一人っ子政策が廃止されて以降、全国的に不妊手術が減少していますが、新疆ウイグルでは逆に突出して延びているのです。

新疆で不妊手術急増 ウイグル族迫害の一端か―中国

中国衛生健康統計年鑑によると、同自治区で行われた卵管を縛る手術は、14年から18年の間に3,139件から5万9,499件と19倍に増えています。中国政府はこれまで、新疆ウイグルの人口は増えているとしてきましたが、西日本新聞が報じた2020年の新疆統計年鑑によると、2019年の出生率は2017年の15.88からほぼ半減の8.14となったことが明らかになっており、ウイグルで人口抑制政策が行われていることが判明しています。

【独自】新疆ウイグル出生率2年で半減 中国統計入手、不妊処置が急増

多民族国家であるアメリカでは、1960年に約89%だった白人の割合が2010年には64%にまで下がり、2050年には44%と少数派になると見込まれています。90年で半分の割合にまで低下するわけです。近年は「ブラック・ライブズ・マター」など、人種問題で国が大きく揺れてきました。

中国と台湾の真実を最もよく知る黄文雄先生のメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 

中国も55の少数民族を無理やり併呑した多民族国家です。現在は漢民族が90%を占めていますが、いずれ漢民族が少数民族を下回るかもしれないという危機感を抱いているのです。これまでモンゴル帝国や清朝など、中国は異民族による支配を何度も受けてきました。そのときのトラウマがあるため、少数民族の人口増加は許せないわけです。

もっとも、私はメルマガでこれまでも説明してきたように、漢民族はすでに長い歴史のなかで淘汰されて絶滅しており、現在の漢民族は「なりすまし」にすぎません。そのことについては拙著『中国の正体』に書いています。

● 『中国の正体 知ってはいけない「歴史大国」最大のタブー

いずれにせよ、これからの中国は高齢社会から超高齢社会へと進み、経済、社会福祉などさまざまな問題が噴出してくることになります。

かつて漢の武帝は領土を大きく拡張し、朝鮮半島まで直轄地としましたが、相次ぐ戦乱で人口は半減、そして財政的にも領土を維持できずに、武帝の死後には直轄地を手放すことになりました。

すでに治安維持のための費用が国防費を上回っている中国で、ウイグル、チベット、モンゴルなどを今後も維持できる保証はありません。そうした焦りが、漢人への「三人っ子」政策と、少数民族の産児制限という弾圧に繋がっている一面もあるのです。

中国と台湾の真実を最もよく知る黄文雄先生のメルマガ詳細・ご登録はコチラ

 


 


最新刊
バイデン政権がもたらす新たな米中危機 激震する世界と日本の行方
好評発売中!


image by: cowardlion / Shutterstock.com

※ 本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2021年6月2日号の一部抜粋です。初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込660円)。

こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー

初月無料の定期購読手続きを完了後、各月バックナンバーをお求めください。

2021年5月配信分

2021年5月のバックナンバーを購入する

2021年4月配信分

2021年4月のバックナンバーを購入する

2021年3月配信分

2021年3月のバックナンバーを購入する

2021年2月配信分

2021年2月のバックナンバーを購入する

2021年1月配信分

2021年1月のバックナンバーを購入する

2020年12月配信分

2020年12月のバックナンバーを購入する

2020年11月配信分

2020年11月のバックナンバーを購入する

2020年10月配信分

2020年10月のバックナンバーを購入する

2020年9月配信分

2020年9月のバックナンバーを購入する

2020年8月配信分

2020年8月のバックナンバーを購入する

2020年7月配信分

2020年7月のバックナンバーを購入する

2020年6月配信分

2020年6月のバックナンバーを購入する

2020年5月配信分

2020年5月のバックナンバーを購入する

2020年4月配信分

2020年4月のバックナンバーを購入する

2020年3月配信分

2020年3月のバックナンバーを購入する

2020年2月配信分

2020年2月のバックナンバーを購入する

2020年1月配信分

2020年1月のバックナンバーを購入する

黄文雄この著者の記事一覧

台湾出身の評論家・黄文雄が、歪められた日本の歴史を正し、中国・韓国・台湾などアジアの最新情報を解説。歴史を見る目が変われば、いま日本周辺で何が起きているかがわかる!

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」 』

【著者】 黄文雄 【月額】 初月無料!月額660円(税込) 【発行周期】 毎週 火曜日 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け