先日掲載の「大阪を「子供が育てられない都市」にした橋下維新の大失政、これが“ファクト”だ」で、維新支持者たちから寄せられた「反論」に対してデータを提示し論破した、元国税調査官で作家の大村大次郎さん。大村さんは今回のメルマガ『大村大次郎の本音で役に立つ税金情報』で、橋下維新とパソナ会長・竹中平蔵氏との浅からぬ関係を暴露し、パソナに“支配”される大阪の行く末を案じています。
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プロフィール:大村大次郎(おおむら・おおじろう)
大阪府出身。10年間の国税局勤務の後、経理事務所などを経て経営コンサルタント、フリーライターに。主な著書に「あらゆる領収書は経費で落とせる」(中央公論新社)「悪の会計学」(双葉社)がある。
大阪府は協力金の支給も全国最悪
前回までに大阪が日本で最悪の死者を出したのは橋下府政以来の失政が原因であったことを述べてきました。
また橋下府政以来、大阪の人口は大都市としては異常な減少をしており、特に子育て世代は大きく減っているということもご紹介しました。
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しかも橋下維新の失政これだけにとどまりません。
大阪は行政力自体が大きくパワーダウンしているのです。そして、大阪の行政力のパワーダウンには、あの竹中平蔵氏のパソナが大きく関係しているのです。
一部で報道されましたが、飲食店に対する協力金の支給が大阪はもっとも遅れているのです。
2021年の6月13日の朝日新聞の報道では、今年1月に2度目の緊急事態宣言が出された11都府県のうち、支給がもっとも遅れているのは大阪府とのことでした。11都府県のうち6府県は90%を超えていましたが、大阪はわずか64%で断トツのビリだったのです。
この協力金は、実質的に国が負担しており、都府県は支給事務を行えばいいだけでした。にもかかわらず、支給がこれほど遅れているのです。
そしてこの協力金の遅れに関しては、パソナが関係しているのです。
というのも、大阪府は協力金の支給事務作業において、パソナに全面的にパソナに委託していたのです。
東京都では300人の職員と300人の派遣スタッフが事務作業にあたっていたのに、大阪府は20名の職員、400名のパソナ派遣社員でこの業務をやっています。
しかも大阪の場合は、これでも倍に増員しているのです。以前はこの半分の人員で行っていたのです。
重要な作業を外部委託したことが、大阪府の支給遅れの原因であることは間違いないのです。
維新の吉村知事は常々「行政の責任は僕にある」などと言いますが、具体的には何も責任を取っていません。
それどころか大阪の医療崩壊や協力金の遅れについて、維新は何も責任を感じていません。
だから、原因を追究したり改善策を検討するというような作業もほとんど行われていません。もし、新型コロナのような災厄がまた訪れたら、大阪はどうなるのでしょうか?
大阪とパソナの怪しい関係
しかも人材派遣会社大手のパソナは、かなりいわくつきの企業です。
昨年、持続化給付金の委託先企業による「中抜き」が問題となりましたが、このこの持続化給付金の業務委託を実質的に請け負った主要企業の一角が、パソナでした。
このパソナは疑惑だらけの企業であり、天下り官僚の巣窟のようなところでもあります。
そしてこのメルマガでも何度か触れましたが、このパソナで現在、会長をしているのは竹中平蔵氏です。竹中平蔵氏は、小泉内閣で総務大臣などを歴任し、経済政策を一手に引き受けてきた人物です。
現在でも政府の諮問機関の委員などをしており、2000年代以降の日本の経済政策は、竹中氏の主導によって行われたともいっていいでしょう。
そして、今の日本経済の閉そく感、少子高齢化の急加速などにおいて、竹中氏の責任は大きなものがあります。
2000年代以降、日本の企業業績は決して悪くなかったのに、竹中氏は企業の賃下げを強力にバックアップしました。
そのため、日本は先進国の中で唯一、この20年間の賃金が減少しているのです。また労働法を改正し、労働における派遣社員の割合を激増させました。
この賃下げ政策により日本では低所得者が激増し、先進国の中で日本だけが急激に出生率が低下し、異常な早さで少子高齢化が進んだのです。
しかも、竹中平蔵氏は、大臣をやめた直後、派遣会社大手のパソナに重役として迎えられているのです。
国務大臣を5年も務めた政治家が、しかも総務大臣という許認可権のラスボスのような職務を長年務めた政治家が、引退後すぐに私企業に入ったのです。
竹中氏は派遣社員を増やす政策を実質的に主導しており、その政治家が、派遣大手企業に天下りするなどというのは、あまりに露骨すぎて笑い話にもなりません。ただただ唖然とするだけです。法的には一応問題ないそうですが、政治倫理的には大問題のはずです。
竹中平蔵氏と橋下維新というのは、実は切っても切れない深い関係にあります。
橋下氏が維新の会を立ち上げ、衆議院選挙に打って出た2012年に、竹中平蔵氏は候補者選定委員の委員長になっています。
また橋下徹氏は竹中平蔵氏を敬愛し「同じ考えを持っている」と明言しています。
実質的に、維新の会というのは、橋下氏と竹中平蔵氏がつくった党だといえるのです。
そして、維新の会が担ってきた大阪府や大阪市と、竹中平蔵氏のパソナとも深いつながりがあるのです。大阪府や大阪市は職員を大幅に削減しましたが、その穴埋めとしてパソナに巨額の業務委託を行ってきたのです。それが、協力金の支給遅れなど大阪の行政能力を大きく低下させた要因なのです。
大阪は「パソナ太郎」に支配されている?
大阪府や大阪市は、パソナにかなり広範囲に業務委託しています。
本来、高度な守秘義務を必要とする行政窓口業務まで、相当の範囲をパソナに委託しているのです。大阪の行政にどれほどパソナが食い込んでいるか、象徴的なことを一つご紹介しましょう。
このことは一部では有名な話ですが、全国的にはほとんど知られていないものです。
大阪市の保健福祉センターが生活保護の申請者らに配布した「履歴書」の見本には、氏名欄に「パソナ太郎」と記してあったのです。
役所の記載例には、よく氏名欄に「●●太郎」という名前が使われます。
たとえば、確定申告の記載例には「国税太郎」などという名前が使われていました。
それと同じようにして、大阪市では私企業である「パソナ」を記載例として掲載していたのです。
そして、学歴欄には「大阪市立パソナ中学校」「大阪府立パソナ高等学校」という記載もありました。この生活保護の業務に関して、パソナが全面的に請け負っていたので、パソナが自社の名前を見本欄に入れたものと思われます。
まるで大阪市はパソナが支配しているようなものです。
生活保護というのは、住民の非常にデリケートな情報を扱う業務です。
この業務を、私企業に全面的に委託していたという大阪市の神経は、完全に常軌を逸しています。
自治体の見本書類に私企業の名を堂々と記すなどというのは、前代未聞です。大不祥事と言ってもいいでしょう。
しかし、このニュースは、一部の報道機関が行ったのみであり、大手のメディアはほとんど取り上げませんでした。愛知の不正リコール事件で逮捕者を出した時も、維新の会はあまりメディアに取り上げられませんでした。維新の会は、不祥事だらけなのですが、彼らの不祥事があまり大きく取り上げられることはありません。筆者は、この傾向について、非常に危険なものを感じます。
維新の会と竹中平蔵氏の深いつながりについても、大手メディアはもっともっと切り込むべきだと思います。
次回は、大阪がパソナに業務委託を行ったことによる行政サービスへの影響について、もう少し詳しく追及していきたいと思っております。
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