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創業者は所持金83円で韓国から日本へ。お口の恋人「ロッテ」とパチンコの意外な関係

「お口の恋人」のキャッチフレーズで知られるロッテ。今や日本を代表する菓子メーカーの1つとして知られる同社ですが、創業者は戦前、僅かな所持金を手に日本本土へと渡ってきた朝鮮半島出身の青年でした。今回のメルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』では北朝鮮研究の第一人者である宮塚利雄さんが、そんなロッテの黎明期から創業社長が祖国に一流ホテルを建設するまでの歩みを、自身との「因縁」を交えながら紹介しています。

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※本記事は有料メルマガ『宮塚利雄の朝鮮半島ゼミ「中朝国境から朝鮮半島を管見する!」』2022年1月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:宮塚利雄みやつか・としお
宮塚コリア研究所代表。韓国・慶熙大学校碩士課程、檀国大学校博士課程修了。山梨学院大学教授(1992~2015年)。主な著書に『北朝鮮・驚愕の教科書』(宮塚寿美子と共著)、『北朝鮮観光』「がんばるぞ!北朝鮮』『アリランの誕生』『日本焼肉物語』『パチンコ学講座』、そのほか翻訳本多数あり。

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ロッテ財閥研究(1) 私とロッテとの因縁

パチンコ店の景品としてのロッテの商品

私はこれまでパチンコ産業論を講義し、「間組百年史」編纂に携わり、さらには北朝鮮問題研究家として活動してきたが、なぜか「ロッテ」との関りがあることに気づいた。

まずは、パチンコ産業論でのロッテとの出会いである。株式会社ロッテの創業者重光武雄(韓国名 辛格浩)は、パチンコ機製造やパチンコ店経営には、直接かかわっていないが、パチンコ店における景品としてのチューインガムやチョコレート、菓子類などを提供し、「パチンコ店におけるロッテ商品の景品」は、揺るぎないものとして存在していた。

なぜ、ロッテの商品がパチンコ店の景品にと思われるかもしれない。重光武雄は1941年に関釜連絡船に乗って所持金わずか83円で日本本土に渡り、文学徒を夢見ていたので、文学を専攻するつもりであった。しかし、徴兵を避けるためには、工学の専攻が必要ということになり、化学工業を専攻した。

重光は、新聞・牛乳配達をしながら1944年に早稲田実業学校を卒業し、知人らと杉並区荻窪で「ひかり特殊化学研究所」を設立し、せっけんやポマードなどの製造販売に手がけて利益を得ていた。

終戦とともに日本にいた朝鮮人のほとんどが朝鮮半島へ帰国したが、重光は、帰国せず日本に残り、進駐軍が持ち込んだチューインガムが、人気を博しているのを見て、1947(昭和22)年にガム製造に乗り出した(私はこの年の生まれ)。

翌1948年にひかり特殊化学研究所を株式会社ロッテに改称し、代表取締役社長に就任した。社名のロッテは、重光の愛読書だったゲーテの『若きウェルテルの悩み』の主人公シャルロッテより名前をとったものである。

重光は、当時輸入規制の対象であった天然チクルの輸入解禁を国に働きかけ、チクルを使用したチューインガムの製造販売を始めた。社長自らリヤカーにガムを積んで移動販売し、スペアミントガムと続いて販売したグリーンガムを大量に販売し、ロッテのガムは人気を博した。

私は1997年に『パチンコ学講座』(講談社)を出版した。この時は、パチンコ店における景品について、戦前のパチンコ店での景品の説明と、パチンコ店とたばこについては詳しく書いた。しかし、ロッテの景品については、言及していなかった。

戦後のパチンコブームと相まってパチンコ店での景品も種類が豊富になってきたが、特にロッテの商品は、景品類では抜群の存在で、妬んだ他の業者からは、「パチンコ屋のロッテのガムはしけっている」「チョコレートもまずい」などとの陰口を叩かれた。

当時、それだけパチンコ店での売り上げが大きかったということであるが、事実、ロッテがいち早く自社の商品をパチンコ店の景品として納入できたからである。

一部には、パチンコ屋もロッテも在日朝鮮人だから、ロッテがパチンコ店の景品として自社の商品を納入できたからだ、という説もある。しかし、“パチンコ業界を低く見ている人”にとっては、「パチンコ屋に自社商品を景品として納入することは、はばかれる」という観念があったようだ。

パチンコ産業が「30兆円産業」などと言われるようになると、景品類も高価なものが供されるようになったが、一般景品の主流は、たばこであるのには変わりはない。日本たばこ産業の売上高の20%前後は、パチンコ店での景品の売上高とも言われている。

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ロッテホテルと半島ホテル

1965年、日韓基本条約の締結によって両国関係が正常化すると、重光武雄は祖国(韓国の慶尚南道蔚山郡生まれ)に貢献するという信念を引っ提げ韓国にロッテ製菓を設立し、日本で稼いだ資金を一方的に韓国に投資した。

重光は資源の乏しい韓国には、観光立国づくりが必要になると考えたが、当時の韓国には、一流のホテルがなかったため、将来性があると判断し、観光業への参入を決めた。

もっとも、ホテル経営の経験がない重光は、世界各国の一流ホテルを回って勉強し、国際観光公社(現在の韓国観光公社)が経営していた半島ホテルを買収し、日本の帝国ホテルをモデルに38階建てのロッテホテルを建設することにした。

この半島ホテルは、昭和13(1938)年に完成したが、ホテルの建設会社は間組(現在の安藤ハザマ)で、間組百年史で私は、この半島ホテルの編集を担当した。

この半島ホテルが、ロッテに売却された1973年に私は韓国に留学し、半島ホテルに出入りした経験がある。(続く)

(宮塚コリア研究所代表 宮塚利雄)

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