世界中で猛威を振るう新型コロナウイルスの変異種、オミクロン株。今のところ従来の株にくらべ重症化しにくく死亡率も低いものの、デルタ株の3倍とも言われる感染力で新規陽性者数を爆発的に増加させています。この高い感染力が中国を危険な方向に動かすとするのは、台湾出身の評論家・黄文雄さん。黄さんは自身のメルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』で今回、その理由を中国の国内事情や歴史を紐解きつつ解説するとともに、世界の国々に対して、中国への警戒や同国発の災厄に対する備えを呼びかけています。
※本記事は有料メルマガ『黄文雄の「日本人に教えたい本当の歴史、中国・韓国の真実」』2022年1月5日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:黄文雄(こう・ぶんゆう)
1938年、台湾生まれ。1964年来日。早稲田大学商学部卒業、明治大学大学院修士課程修了。『中国の没落』(台湾・前衛出版社)が大反響を呼び、評論家活動へ。著書に17万部のベストセラーとなった『日本人はなぜ中国人、韓国人とこれほどまで違うのか』(徳間書店)など多数。
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【中国】2022年「ゼロコロナ」に失敗した中国は反日教育と尖閣侵略に動く
国際政治学者のイアン・ブレマー氏が率いるアメリカの調査会社ユーラシア・グループは、毎年恒例の「世界の10大リスク」を発表しましたが、「中国のゼロコロナ政策の失敗」を2022年の最大のリスクとして選びました。
2019年末に武漢で新型コロナウイルスの感染者が発生して以来、中国は厳しいロックダウンや感染者の隔離によって、感染拡大を抑え込もうとしてきました。加えて、厳格な情報統制により当局批判を封殺。2020年3月にはウイルスの封じ込めを宣言し、同年9月には、習近平国家主席がウイルスとの戦いに勝利したと強調しました。
中国共産党はコロナへの「勝利」を誇示するための展覧会を開催、さらには習近平政権のコロナ対策を称える書籍までが出版されました。中国共産党は、新型コロナに「完勝した」という立場を貫いているのです。
ところが、ここにきてオミクロン株が中国国内でも急速に拡大しています。西安では12月24日以降、1,300万人もの住民が強制的に自宅待機を命じられ、その結果、流通も止まって食料不足が深刻化し、住民の不満が高まっています。
とはいえ、オミクロン株は感染力は強いものの、重症化率や致死率は低いとされています。そのため、世界中で多くの人がオミクロン株に感染すれば、集団免疫がついてコロナを収束できるという「楽観論」も出てきています。ドイツの学者はオミクロン株を「コロナを終わらせるクリスマスプレゼントだ」とまで主張しているそうです。
● 「オミクロン株、コロナ終わらせるクリスマスプレゼント」…ドイツの学者が主張
そのため、世界的にはコロナと共存しながら感染や重症化を抑えるという「ウィズコロナ」へと舵を切る国が増えています。しかし、中国共産党にとっては、「ウィズコロナ」への転換は非常に難しい事態となっています。
というのも、前述したように習近平がコロナへの勝利宣言を行ってしまった手前、いまさら「ウィズコロナ」に方針転換することは、習近平政権の誤りを認めることになってしまうからです。
中国では、中国共産党は絶対無謬の存在でなくてはなりません。中国の憲法序章にも、「国家は中国共産党の指導を仰ぐ」と明記されており、憲法よりも中国共産党の決定のほうが上位にあるわけです。
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とくに習近平は、秋に行われる共産党大会において、通常は2期10年である党総書記の座を離さず、異例の3期目を果たし、さらには終生独裁者の地位を獲得しようとしています。とはいえ、習近平には建国の父である毛沢東や、改革開放路線で中国経済を躍進させた鄧小平のような功績がありません。むしろ経済成長率は下がり、また、新型コロナを拡散したことで世界から批判され、反中勢力を拡大させてしまいました。
そのため、何か重大な誤りがあれば、最高指導者としての資質が問われかねません。徹底的な情報統制を行い、香港で民主派を弾圧しているのも、習近平政権への批判が出れば、命取りになりかねないからです。
それだけに、いまさら「ウィズコロナ」への転換ができないのです。加えて習近平政権としては、2月に行われる北京冬季五輪を成功させて自らの威光を内外に示さなくてはならないという思いを抱いており、西安のように厳しいロックダウンをしてでも「ゼロコロナ」政策を強行せざるをえないわけです。
中国共産党が絶対無謬の存在でなくてはならないことは、昨年11月に習近平が行った演説で、天安門事件での民主化運動弾圧を「共産党と国家を守るための英断だった」と正当化したことでも明らかです。「過ちを犯すことがない」中国共産党としては人民虐殺も「正しかった」ことだと強弁するのは当然のことでしょう。
独裁体制を維持するためには、どうしても過ちを認めるわけにはいかず、自己正当化せざるをえないのですが、そのために意地でも続けている「ゼロコロナ政策」がいずれ破綻し、国際社会の大きな脅威になることが世界最大のリスクとなっているわけです。
しかも恐ろしいのは、「ゼロコロナ政策」が失敗しても、中国共産党は絶対に失敗を認めないことです。そのため世界との対立はますます激化していきます。現在でも中国の挑発的な外交姿勢は「戦狼外交」と言われていますが、ますます好戦的になっていくでしょう。
一方で、習近平政権としても国際社会での批判を跳ね返しつつ、国内に輝かしい功績を誇示するためにも、台湾への軍事侵略、尖閣諸島の奪取などに走る可能性が高まります。自らの失敗を他国に転嫁することは、これまでも中国共産党が取ってきた手法です。1989年の天安門事件の混乱後、江沢民政権が反日教育を強化し、国内での共産党批判を日本批判へと転嫁させたことはよく知られています。
そのため、「ゼロコロナ政策の失敗」の次の展開として、反日が激化しうることを日本としても認識しておくべきなのです。現在、習近平政権では愛国教育を強化しています。小学生の教科書には「習近平思想」が掲載され、香港議会では「愛国者」と当局から認定された者しか立候補できなくなりました。
中国IT企業への規制強化など、中国は急成長した巨大企業をも統制すると同時に、塾禁止をはじめとして家庭への介入も強めています。これは、いかなる「失敗」が起こっても、中国共産党の体制が揺るぐことがないように、洗脳と統制を徹底しようという動きです。逆に言えば、それだけ「失敗」が起こりうる可能性が高いということです。
すでに世界は、中国発の厄災に備えなければならない時期に来ています。当の中国共産党がそれを見越した動きをしていることからも明らかなのです。
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2021年3月配信分
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2021年2月配信分
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2020年11月配信分
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2020年10月配信分
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- なぜ日本の学者は中国の軍事的脅威をわざと無視するのか/台湾の若き政治家たちへの期待と長年の愚民教育への懸念(10/07)
2020年9月配信分
- 対米戦略に国連中心主義を持ち出した中国の欺瞞/「中国の台湾化」が世界を救う(9/30)
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2020年8月配信分
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2020年6月配信分
- 朝日新聞が「中国の宣伝機関」としてアメリカに認定される可能性/ゲームの中で展開される反中闘争(6/24)
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