MAG2 NEWS MENU

ホンマでっか池田教授が個人の教育データ「デジタル化」に呆れる理由

1月7日、デジタル庁は教育データの利活用に向けたロードマップを策定したと発表。2025年ごろまでに学習履歴などの個人の教育データを一元化するとのことです。その目的についてのさまざま説明を「嘘八百の美麗字句」と切り捨てるのは、CX系「ホンマでっか!?TV」でおなじみの池田清彦教授です。今回のメルマガ『池田清彦のやせ我慢日記』で教授は、デジタル庁やスポーツ庁の仕事は、国民にとってなくても困らない無駄仕事ばかりと主張。個人データの集積などは私企業の利益への奉仕か、国民管理への意向でしかないと厳しく指摘しています。

「ホンマでっか!? TV」でおなじみの池田教授が社会を斬るメルマガ詳細・登録はコチラ

 

ブルシット・ジョブ(無駄仕事)に精を出すデジタル庁

「政府は学習履歴などの個人の教育データについて、2025年頃までにデジタル化して一元化する仕組みを構築することになりました」というニュースを聞いて呆れてしまった。「こうした教育データを学校や教育機関が共有して、教育の向上につなげたい」「子供たちの個性を伸ばすことができるよう、教育の現場でデジタル化の環境を整備し、具体的な政策として進めていきたい」ということらしいが、よくもまあ、嘘八百の美麗字句を並べるよね。

そのうち、課外活動や塾や学校外の活動もデジタル化するつもりらしい。デジタル化すると言ってもオリジナルなデータを集めるのは現場の先生なので、今でさえ忙しい教育現場は、さらに忙しくなり、教育そのものにかける時間はさらに少なくなり、教育は悲惨なことになりそうだ。現在でも、学校の先生の仕事の大半は教育の向上には全く役に立たない無駄仕事で、デジタル化はこれに拍車をかけるだろう。はっきり言って、志のある若者は政府に管理された学校の先生にはならない方がいいと思うよ。

「2030年頃までには、本人が閲覧できるようにして、生涯学習などに役立てたい」と、とてもいいことのように言っているけれども、余計なお世話だ。大体自分の過去の学習履歴などを参照して、将来の学習に役立てようなどという国民はまずいないだろう。こういう無駄なことに、エネルギーと金を使うので、日本はどんどんドツボに嵌っていくのである。

私が現役の高校教諭だった頃も、指導要録というのがあって(今もあるけど)、成績や出席、その他の素行などの「指導に関する記録」を記載して、5年間(「学籍に関する記録」は20年間)保管しておく決まりがあって、私は担任をしていたので、指導要録を書かされたが、成績と出欠だけ記載して、素行や行動の記録はすべて、特記事項なしというハンコを押して済ませていた。

入学、卒業、退学、転入、転学等の学籍に関する記録は、本人が証書類を紛失した際に、卒業や在籍を証明する証拠となるため、20年間保管することに意味はあるが、指導に関する記録などは、書いて金庫に保管してから5年間、閲覧する人はほぼ皆無なので、事細かに記載しても時間の無駄なのだ。だからこういうことにエネルギーと時間をかけるのは無駄仕事の最たるもので、児童生徒と遊んでいる方が余程有意義なのである。

「ホンマでっか!? TV」でおなじみの池田教授が社会を斬るメルマガ詳細・登録はコチラ

 

個人の過去の学習履歴をデジタル化しても、本人はまず見ない。そもそも見るメリットがない。データが教育産業に流れて、金もうけの道具に使われるのが関の山だ。実はそのためにやっているのかもしれない。適当な名目を付けて、税金を使って、私企業の利益に奉仕するといういつものパターンになるのは火を見るより明らかだろう。そのうち個人情報が漏れて、○○さんの中学時代はお勉強もできなくて欠席が多く素行も悪かったなどという情報が、いつの間にか第三者に渡るといったことも起こりそうだ。

恐らく政府の狙いは、児童生徒の政治的傾向をデジタル化して、政府の政策に反抗的な国民のリストを作って、国民を政権の管理下に置きたいということなのだろう。とりあえずお友達企業を儲けさせて、あわよくば、独裁政権の礎を築きたいということ以外に、こんなアホなことをする理由が思いつかない。

進士正憲さんという方がtwitterで述べていたように、国会議員の活動実績、国会、委員会の出席状況、発言履歴、歳費、交通費の収支明細を一元管理して、公表して、国民が必要に応じて閲覧できるようなデジタル化なら大いに意義があると思うけどね。国民を統制することには熱心だが、自分たちはやりたい放題で、税金の使い道や、怠慢の記録は絶対に公表しないというのは、独裁への道だ。だんだん、現政権を支持する人々が嫌う、中国や北朝鮮の政権のやり方に近づいている。これらの人々が中国や北朝鮮が嫌いなのは、近親憎悪なのかもしれない。

少し前に、スポーツ庁が、中学生の16%がスポーツ嫌いという調査結果を受けて、これを半減させたいという計画を掲げているという話を聞いた時も、アホかいなと思ったけれども、スポーツ庁とかデジタル庁とかは、本当にブルシット・ジョブで成り立っているような官庁で、国民一般はこんな官庁がなくても一向に困らず、税金の無駄使いだ。速やかに解体すれば、日本の凋落の速度は、多少は緩和されるだろう。

ブルシット・ジョブとは2018年出版のデヴィッド・グレーバーの著書の題名で、仕事をしている本人でさえ、完璧に無意味で、不必要で、有害でさえあると認識しているが、組織の維持、あるいは自身の雇用を守るために、意味があるかのようにふるまわざるを得ない仕事を指す。

「ホンマでっか!? TV」でおなじみの池田教授が社会を斬るメルマガ詳細・登録はコチラ

 

例えば、スポーツが好きな人は勝手にやればよくて、それに政府が介入する必要はない。スポーツ嫌いな中学生が16%から8%に減ったからと言って経済が潤うわけでもない。スポーツで国威を発揚させて、国力の向上に役立てたいということかもしれないが、はっきり言ってこれは妄想だな。冷戦の頃、旧ソ連や東ヨーロッパでは、国を挙げてオリンピックに勝つべくステートアマを養成したが、これらの社会主義国はほとんど崩壊してしまった。国威発揚は、国力の向上という観点からは、何の役にも立たなかったブルシット・ジョブだったのだ。独裁者の自己満足みたいなものだな。

プロのスポーツは金もうけのための手段だから、それを規制する必要も補助する必要もない。アマチュアのスポーツは趣味なのだから、好きにやらせておけばいいので、税金を使って振興するのは、スポーツは素晴らしいというイデオロギーのなせる業だ。私は、自分ではスポーツはやらないし、ほとんど見ない。スポーツ振興に私の納めた税金を使わないでくれと言いたい。そういう人も多いだろう。

私は、時々釣りをするが、例えば調査の結果、釣り嫌いの中学生が50%いるとして、これを25%に下げるために、文科省と農水省が協力して釣り振興のために税金を使うと決めたら、おかしいと思う人が沢山いるだろう。スポーツも釣りも、個人の趣味なのだから、スポーツだけを優遇するのは間違っている。(『池田清彦のやせ我慢日記』2022年1月14日号より一部抜粋、続きはご登録の上お楽しみください)

「ホンマでっか!? TV」でおなじみの池田教授が社会を斬るメルマガ詳細・登録はコチラ

 

image by: Shutterstock.com

池田清彦この著者の記事一覧

このメルマガを読めば、マスメディアの報道のウラに潜む、世間のからくりがわかります。というわけでこのメルマガではさまざまな情報を発信して、楽しく生きるヒントを記していきたいと思っています。

有料メルマガ好評配信中

  初月無料で読んでみる  

この記事が気に入ったら登録!しよう 『 池田清彦のやせ我慢日記 』

【著者】 池田清彦 【月額】 初月無料!月額440円(税込) 【発行周期】 毎月 第2金曜日・第4金曜日(年末年始を除く) 発行予定

print

シェアランキング

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MAG2 NEWSの最新情報をお届け